113話 真なる神
(アリアside)
「一体どうなってるのよ!?」
封印した筈の黄泉の門が突然天井を突き破って上昇していくのを見上げながら叫ぶ。他の皆も突然の事態に状況を呑み込めずにいた。
「この気配……まさか」
アマネが見上げながら呟く。全員がアマネを見るとツクヨを輝かせながら何かを感じ取っていた。
「ずっと……ずっと前から既に降りていた? 私達が感知すらできないほど力を抑えてこの時を待っていたというの?」
「ちょっ、何が起きて……」
「アリア!」
詳しく聞こうとしたところでシュリンに呼ばれる。琥珀の眼を上に向けながら指を指した。
「黄泉の門が完全に開いた! 今ベルクが戦おうとしてる!」
「!」
詳細を聞いてる暇はない様だ。すぐに展開するとすぐに指示を出した。
「ベルクに加勢しに行くわ! シュリン! ラクル! 手伝って!」
頷いたシュリンは地面に種を撒くと急速に成長して全員が入れる大きさの樹の籠を生み出す。全員を乗り込ませるとラクルが手を着けて籠を最大まで軽くした。
「しっかり掴まって。飛ばすから」
蔦を掴むと焔の翼を羽ばたかせて飛翔する。蔦や皆はセレナが水の結界で守ってくれているお陰で燃え移る心配はない。
舞い落ちる羽根の様に火の粉を散らしながら穴を昇っていった。
―――――
(ベルクside)
「死の神か……観光しにこっちに来たとかじゃなさそうだな」
「神を前にして不遜な態度を崩さぬか。余程の愚か者か胆が据わっているのかどちらであろうな」
「愚か者の方かもな。神を倒そうと思うくらいには」
七枝刀を引き抜き、ハイエンドを手にしながら黄泉にそう返す。こうして対峙するだけでイル・イーターに匹敵……それ以上の力を感じ取れた。
黄泉は薄く笑うと指を振るう。黄泉の門から溢れ出す様に亡者の大群が現れて津波の如く迫った。
七枝刀に雷を宿しながら薙ぎ払う。刀身から放たれた雷が亡者の津波を伝って焼け焦げる独特の臭いを撒き散らした。
だが黄泉の門からは再現なく亡者達が現れる。更に黄泉の魔物達も門から現れてあっという間に周囲を檻の様に囲まれた。
「八雷神!」
殺到する魔物に合わせて呼ぶと七枝刀から八の雷が飛び出す。八の雷が蒼白い尾を引きながら殺到する魔物達を焼き削り、更にハイエンドから光の刃を伸ばして取り零した魔物を斬り割いた。
(キリがない!)
あの黄泉の門が開いてる限り魔物が止まる気配はない。だが門は魔物が出てくる度にその姿が禍々しく巨大になっていき黄泉の冷気が増していく。
黄泉の門を破壊はできないかと考え包囲を破壊して突破すると黄泉の門に七枝刀を構える。雷火が爆ぜて放たれようとした瞬間に黄泉がこちらに手を向けた。
「“焼死せよ”」
全身を炎が包む。炎の熱と勢いに攻撃を止めると更に言葉が響いた。
「“溺死せよ”」
横から突然濁流が襲ってきて呑み込まれる。その威力と熱されたところに水を掛けられた影響で鎧が悲鳴を上げた。
「“
真正面から再び不可視の力が襲い掛かる。まともに受けてしまい、ふき飛ばされて黄泉の門から離されてしまった。
(また、これか!?)
鎧を修復しながら黄泉を見据える。奴を倒さないと門の対処はできないと判断して雷を纏って高速で飛翔する。
「“
不可視の力が風を裂いて迫るのが伝わってくる。風の裂ける音を頼りに避けながら距離を詰めると七枝刀を黄泉に向けて振り下ろした。
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