109話 骸の魔神
骸の魔神の口から青い鬼火が炎となって放たれる。跳んで炎を避けるとムドウの錫杖から放たれた雷が迫ってきた。
背負った七枝刀から放たれた雷がムドウの雷を相殺する。直後に迫る腕の上を転がる様にして避けるとハイエンドに破壊の光を宿してながら更に迫る別の腕を斬り裂いた。
ハイエンドの光を受けた腕は再生する事なく崩れていく。だが崩れた腕は肩から外れると別の腕が動く。腕の先が蛇の頭になると牙を剥きながら迫ってきた。
カオスクルセイダーを
ハイエンドで防ぐが反動で飛ばされる。着地すると無数の腕が拳を固めて降り注いだ。
炎を払いながら拳の雨を避ける。そこへムドウが呪詛を唱えると骸の腕達が周囲に浮かび上がって俺を拘束しようと迫ってきた。
迫る骸の腕を叩き落とした瞬間に魔神の腕が正面に迫る。後ろに跳びながら受けるが衝撃を殺し切れずに壁にぶつかった。
(あの魔神像が攻撃と壁役になり、ムドウは徹底して補助に回る事で自分が前に出たりはしない)
こっちが攻撃や動こうとした瞬間にはムドウは魔神の向こう側へと移動している。自らの身を守る事に関しては舌打ちをしてしまうくらい巧い動き方をする。
(だが……)
“
兄貴ならば俺が崩れた瞬間に休む事なく攻撃を続けるだろう。シュリンやセレナであれば拘束や妨害を更に多くの手数と手段を以て動きを確実に止めていた筈だ。
だがムドウは俺が意識を向けるとすぐに攻めから守りに入る。そのせいで俺が立て直す隙が生まれて致命傷に至らせていない。
(それにこの魔物……)
この魔神はボスに匹敵する強さを持っているが時折動きが鈍る。見た瞬間に感じたあの気配と肋骨の檻に磔にされた男からしてテレジアと同じものかと思ったが違う。
この魔神は処刑台だ。磔にされた男からは生気を感じられず魔神が動く度に命の灯が消え去るかの様な気配を感じた。
「八雷神、あれは……」
「助からぬな。あれはもはや棺に入ったも同然よ」
八雷神の言葉に歯を噛み締める。だがすぐに顔を上げると迫る幾つもの腕を二振りで斬り裂いた。
「……反吐が出る」
八雷神の雷を自身に降ろす。ムドウは何かを感じ取ったのか様々な術を放ってくるが雷を宿した俺は一踏みで床を砕いて術を潜り抜けると鬼火を吐こうとした魔神の頭を真一文字に斬り裂いた。
風雷を纏った蹴りで魔神を蹴り飛ばす。巨体が音を立てて倒れた直後に“
「があっ……あ!?」
ムドウの体に振動と衝撃が伝わると風によってふき飛ばされる。倒れた魔神の上に落ちたムドウは呻き声を上げながら崩れ落ちた。
「お前の命、俺がその大願ごと斬り裂く」
俺がムドウにそう告げた瞬間、城全体が揺れ始めた。
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