107話 迫る刃(ムドウside)
「くっ!?」
再び封印の破壊と術が戻る感覚が体に走る。こちらが最上階に着くまでに封印が三つ破壊されていた。
その度に黄泉の魔物達も数も力もより多く強いものを呼び出して向かわせてるというのに向こうは動きが遅くなる気配はない。
「なんだ……なんなのだ奴は!?」
過去の経験からこの為の対策をしてきた。術を封じて、神器も使えなくした。かつて戦ったタケトであれば倒せなくても追い詰められる筈だった。
(なんだあれは……何故あれだけの骸を前に臆する事なく戦える!?)
どんな者であろうと戦う術を失えば平静を保つ事など出来ない。その状態で黄泉の力で甦った骸の群れとまともに戦うなど出来る筈がないのだ。
なのにあの男は全ての骸を討ち滅ぼし、あまつさえ追ってくる。それどころかあてがった魔物の悉くを滅ぼしながら着実に向かってきている。
(何故だ!? 何故、何故!?)
……ムドウは術師としての手腕と優れた謀略を有している。だが剣士の様に一瞬の攻防に身を晒した事も戦う事はあっても前線に身を投じた事はない。
だからこそ理解出来なかった。例えどれだけ正確な情報を集めようと、どれだけ予測して対策しようと予測を超える存在を。
これまで裏で暗躍し、謀略を以て生きてきたムドウにはたった一瞬で全てを判断して動かなければならない状況に居続けたベルクを測り切れる訳がなかった。
「くっ!?」
再び封印が破壊された感覚が走る。式神と共有した視界には魔物を一刀の下に斬り伏せながら迫るベルクが映った。
白亜の刃が飛び掛かる黄泉忍達を光の尾を引いて斬り裂く。床から迫った大蛇の魔物を跳躍すると漆黒の刃で頭を斬り落とした。
封印の祭壇を守る為に配置した大型の黄泉兵が十字槍を振るう。ベルクは闇を纏うと振るわれる十字槍を白亜の剣で打ち上げて漆黒の刀で黄泉兵を一刀両断する。
一瞬で塵へとなった黄泉兵を振り返る事なく祭壇が破壊される。最後の封印が破壊されるとベルクが有する神器に力が戻った。
ベルクは祭壇を破壊するとムドウが放った式神に顔を向ける。そして右腕を振るうと漆黒の斬撃が放たれて式神が破壊された。
「ぐっ!? く、くそ!?」
視界の接続が強制的に切られ元に戻る。ベルクは既にすぐそこまで来ていた。
「やむを得ん……あれを使うしかあるまい」
封印は破壊されたがそれによってこちらも術を使える様になった。そしてこの時まで出来る限りの用意してきたのだ。
「邪魔をされてたまるか……ようやく、ようやくここまで来たのだ! 黄泉の門を完全に開き全ての命を終わらせるのだ!!」
そうしてムドウは天守閣の奥へと向かっていった……。
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