106話 地下(アリアside)


 ベルクが骸達と戦っている頃……。


「はあっ!!」


 黄泉忍を焔を宿した剣で斬り裂く。一瞬で燃え上がって灰になるもその後ろには人並の大きさの黄泉の魔物達が所狭しと待ち構えていた。


 シュリンが流れる様な動作で弓を引く。放たれた三矢が魔物達に刺さると鏃に込められた魔力が膨れ上がって爆発を起こした。


 黄泉兵が放った矢をセレナの結界が防ぐ。防いだ直後にヒノワが増幅した光弾を放って黄泉兵を穿った。


 後方から追いかけてきた黄泉兵達はラクルとアメリが請け負っていた。ラクルはザンマを背に剣で戦うが遅れを取る事はなくアメリも抜刀術を駆使して黄泉兵を駆逐していく。


「数は多いし広いし……本当に地下なの?」


「……黄泉の門の影響で変異を起こしてる様です。ここはもうダンジョンと化していると言えます」


 アリアの呟きにアマネが答える。勾玉に手を当てながら進む先の階段を示すと再び魔物達が現れた。


「進む度に数が増えていくな。それだけこの先にあるのが大事らしい」


 全員が下りてから階段を下りるラクルが黄泉兵の首を刎ねながら周囲を警戒する。だが黄泉兵達は奥から再び現れて追ってきた。


 アリア達が階段を降りると広い空間に出る。向かいにある通路に向かおうと部屋の真ん中まできたところで周囲に黒煙が浮かび上がり、それは部屋の半分を埋める数の魔物が現れた。


「一体一体はそこまで強くないが….この数は流石に面倒だな」


「……仕方ないわね」


 ラクルがザンマを抜きながら構える。するとアリアが一歩前に出て剣を構えた。


「セレナ、あれをやるわ」


「……分かった。ヒノワさん、今から結界を貼るので力を合わせてもらえますか?」


「え? は、はい。分かりました」


「私も手伝いましょう」


 セレナとヒノワ、アマネが力を合わせて結界を貼ると唯一外にいるアリアが剣を構える。そして力ある言葉を口にした。


「焔装展開“情欲の麗焔ルスクディーテ”」


 一瞬でアリアの全身を紅蓮の焔が覆い尽くす。羽ばたく火の鳥を想起させる姿となったアリアが燃え盛る剣を振り下ろした。


「“紅焔放射プロミネンスバースト”」


 振るわれた剣から紅の焔が放出されて一瞬で部屋全体を覆い尽くす。五十以上はいた魔物達は焔に晒されて声を上げる間もなく焼かれ、灰となっていった。


 展開を解除すると同時に焔が消える。結界が解かれると部屋の中は燃えかすが舞っていた。


「これが……アリアさんの神器」


 その威力と目の前の光景にヒノワが息を呑む。ベルクの強さに目が行きがちだがアリアやその傍にいる人達もやはりただ者ではなかった。


「時間が惜しいわ。急ぎましょう」


 大した事をした訳ではないとでも言う様なアリアの言葉に全員が頷いた。

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