104話 掃討


 群がる骸達と戦い始めてからどれくらい経っているかは良く分からない。だがその数は目に見えて減っていた。


 目の前から振るわれる刀を半身をずらして避けながら背後に回ってハイエンドで貫く。胸から飛び出した刃には呪符が貫かれており骸と共に朽ちていった。


 横から迫る槍をしゃがんで避けながら回転して傍まで来ていた骸達の脚を斬り落とす。そして斧を投げようとしていた骸にハイエンドを投擲した。


 脚を斬られて倒れた骸達の頭を狙ってカオスクルセイダーを引き抜く。円を描いて振るわれる黒刀は這い寄ってきた骸達の頭を落とした。


(やはり胸の呪符か頭を落とせば倒せるな)


 真一文字に振るわれる刀を鞘で受けながらカオスクルセイダーを逆手に持って体当たりと同時に胸を突く。体当たりの勢いで後ろにいた骸ごと貫くとカオスクルセイダーを手放して背後から襲い掛かってきた骸を蹴り飛ばす。


 腰のバックに手を入れる。どうやら結界が封じるのは魔術の発動だけで常時発動してる様な魔道具の類は使える様だ。


 バックから小剣を取り出す。曲刀を素早く振るってくる骸の連撃をいなして手首を斬り落とすと蹴り飛ばしながら宙を舞う曲刀を掴んで左から迫っていた骸の頭をかち割る。


 曲刀を手放して鎧を纏った骸の胸に小剣を突き立てる。半ばほどで止まった小剣の柄頭に掌底を叩きつけて押し込む事で中の呪符を貫く。


 小剣を手放して起き上がってきた曲刀を使っていた骸の眼に親指を突き込んで頭を掴む。頭を抱える様にして位置を入れ替えると骸に幾つもの武器が突き立った。


 骸が崩れ落ちる前に蹴って押し込むとバックからロープを取り出す。手甲を装着した骸の拳を避けると腹に膝を打ち込み、屈んだ瞬間に首にロープを掛けて背負う様な形にする。


 前から迫ってきた骸に向けて背負った骸を力任せに投げる。すると槍を手にした骸達が囲んで一斉に振り下ろしてきた。


「くっ……」


 背中の七枝刀を抜いて受ける。衝撃が身体中に走るが受け終えた瞬間に脚を屈めて力を溜めると一気に立ち上がって槍を打ち上げた。


 すぐに踏み込んで七枝刀で薙ぎ払う。前方にいた数体を斬り裂くと一際大きな骸が棍棒を振り上げていた。


 斜めに振るわれる棍棒の下を潜る様に凌ぎながら七枝刀で骸の膝を斬り落とす。体勢を崩して倒れると七枝刀で胸を貫いた。


 すると背中に小柄な骸が飛び乗ってくる。短刀を持った手を掴んで押さえながら空いた手でバックからナイフを取り出す。


 武器を振り上げる骸達に背を向けて小柄な骸を盾にする。幾つかの刃先が当たるがしがみついていた骸が大半を受けて崩れ落ちた。


 背中に迫っていた槍のひとつを掴んで引っ張る。引っ張られた骸の前に回り込んで盾にしながらナイフを胸に突き立てた。


(残りは……)


 ナイフを手放して左右から振るわれた刀を避ける。そのまま後ろに下がり続けて床に落ちていたカオスクルセイダーを手にして左右から迫っていた骸を斬り裂く。


 槍を突き出してくる骸達を潜り抜けながら投擲して落ちていたハイエンドも手にすると骸達に向かって迫る。突き出される槍をハイエンドで打ち上げてカオスクルセイダーで一体を袈裟斬りにすると更に踏み込んでその場で回転する様に二振りを振るう。


「これで……」


 崩れ落ちる骸達を見ながらハイエンドを鞘に納める。背後から鎧を纏った骸が振るう刀を避けながらバックから筒を取り出す。


 背中に筒を当てると筒の底をカオスクルセイダーで引く様に斬りつける。火花が散ると中の火薬に引火して炸裂音と共に弾が鎧を貫いて内部の呪符を抉った。


「最後だな」


 筒を捨てながら床に突き立った七枝刀を引き抜く。そして驚愕の表情に顔を歪めるムドウを見上げた。


「万策尽きたなら……次はお前だ」

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