96話 近づく時
(これで全ての神器が揃った……)
カムツヒを手にするヒノワを見ながら考える。これで黄泉兵の軍に対する備えも黄泉の門を封印する手段も得た。
(これでこちらから攻める事が出来る)
そして具体的にどうするかを考えようとするが足音が聞こえてきて思考を中断する。かなり慌てているのか俺の名前を呼びながら走っていた。
「ベルク殿! ベルク殿は居られますか!?」
「どうした? オヅマが攻めてきたか?」
「い、いえ! ですがすぐに来てくださいませ! ゼン殿が重傷でお戻りになられたのです!」
―――――
医務室に駆けつけると治療を浮けているゼンがいた。セレナのお陰で峠は越えたらしく意識もある様だ。
「傷から毒が回っていました。あと一日遅かったら間に合わなかったかも知れません」
「えぇ……命と引き換えにしてでも伝えようとここまで来ましたが命拾いしました」
「お前にはシオンの遺体埋葬を任せたな、何があった?」
俺がそう聞くとゼンは苦渋に満ちた顔をして項垂れる。だがすぐに起きた事を語り始めた。
「シオン様の遺体を奪われました」
「何?」
「……私と部下はシオン様の遺体を秘密裏に弔う為にシオン様の生家に向かいました。ですがシオン様の生家を始めオヅマの主要な地には見た事もない黄泉兵が張っており、危険だと判断して戻っていたのです」
ゼンの判断は間違っていないだろう。ドウゲンが言っていたという言葉の中には死体を利用するというものがあったと聞いている。墓を暴いて利用しようとしても不思議ではない。
「ですがその途中で黄泉兵を従えたムドウに襲撃され……この事を知らせなければと皆散り散りになって逃げたのですが」
「……戻ってきたのはお前だけだ」
俺がそう告げるとゼンは再び顔を俯かせる。その後は見聞きした情報を一通り伝え終えると気を失う様に眠りについた。
「相当な無理をしたのでしょう、精神にかなりの負荷が掛かったみたいです」
「ゆっくり休ませてやってくれ」
ゼンを医者達に任せるとアリア達を召集する。幸い重要な人達は城に居てくれていたのですぐに集まった。
「ラクル、フドウ、軍の状態はどうだ?」
「足並みは揃ってきた。まず指揮系統の混乱は起きないだろう」
「飛空兵への対応も順調です」
「分かった……イルマ、ヒルコ、物資と各国との連携に問題はあるか?」
「今の所は各国に目立った軋轢は見受けられませんな。共通の敵がいる事でまとまっている様です」
「物資もひとまず問題ありませんね。少なくとも十日は軍を維持できるかと……」
「そうか。なら……」
その場に集まる全員を見渡しながら俺は宣言した。
「出陣するぞ。オヅマを、ムドウを止めて黄泉の門を封印する……この厄災に終止符を打つ」
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