74話 急報
「まあ……なんだかんだ目的は果たせたか」
ロープで即席の剣帯を作って七支刀を背負う。壁画の写しと魔道具の回収は終わっているので後は戻って解読とカムツヒを使いこなせる様にヒノワに頑張ってもらおう。
「ん?」
セレナ達に声を掛けようとした瞬間にふと脚から力が抜けてバランスを崩した。
「セルク!?」
ラクルが倒れかけた俺を支える。セレナが直ぐに俺の状態を診ると癒しの水が全身を包んだ。
「あれだけの雷を受けたのと最後の動きが身体にかなりのダメージが入ってます。ベルクじゃなければ感電死していてもおかしくないくらいです」
「う……」
セレナがジトッとした眼で見てくるのを甘んじて受け入れる。あの時はあれが最善だと動いたが確かに無茶をしたとは思っている。
「あまり死ぬような無茶はしないでください。治療する時に毎回ハラハラしているんですよ?」
「いや、しかし……」
「私だけじゃなくアリアやシュリンだって毎回心臓に悪い思いをしてるんですよ?」
「……すまない」
ニコリと笑って言ってくるセレナに平謝りとなる。アリアの親友であの教国にいただけあってこの状態のセレナには逆らい辛くなる。
本心から案じてくれてると分かるからこそその言葉を聞き流したりせず大人しく治療される。治療が終わり身体の具合を確認してから再び外に出た。
「ん?」
里を出て山を下りようとしたところで通信水晶が反応する。手に取るとアリアからであった。
「ベルク、そっちは今大丈夫?」
「ああ、今から戻るところだが何かあったか?」
「そうね、端的に言うとオヅマが進軍を開始したわ」
「……予想より早く来たな。こちらに来る日と敵軍の数は?」
「物見の報告だと進軍速度から二日後にはこちらに辿り着くわ。黄泉兵がおよそ三万、率いているのは……」
アリアが言葉を一瞬だけ詰まらせる。だがため息と共に続きを告げた。
「骸将ドウゲン……ゴモンの大将の一人で大業物“
告げられた言葉にアメリの気が荒立つ気配を感じる。だが今はすぐに戻らなければならないと判断した。
「アリア、すぐに戻るからそっちは引き続き頼んだ」
通信を終えるとガルマとソウガを召喚して大型の
「通信を聞いてたと思うがオヅマが進軍してきた。強行軍になるがすぐに戻るぞ!」
俺の言葉にラクル達は頷き、戦車に乗り込むと備え付けていた鎖を掴んだ。
「かなり揺れるぞ、しっかり掴まっていろ!」
セレナが山を浄化したお蔭で全速力を出せる。手綱を引いて指示を出すと二頭は嘶きと共に影を置き去りにするのではないかと思える速さで走り出した。
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