53話 死闘


「はあ!」


「ぬん!」


渦巻く闇を纏った剣と雷炎を帯びた刀がぶつかり合う、その度に熱波が拡散し、稲妻が飛び散り、黒い風が巻き起こる。


双刀の刃が宿った炎熱によって白く輝く、鎧越しでも伝わる込められた威力は生半可な防御は出来ないと判断して避けるのに専念する。


振るわれる双刀は音が追いついていないのではと思えるほどの速さで振るわれる、だからこそ踏み込んで零距離で戦い最高速度に達する前に打ち合って止める。


双刀を受け止めると同時に体重を下に落として動きを止める、足下の影から数多の剣や槍が飛び出てシオンを貫いた。


だがシオンは頭を振りかぶって俺に頭突きを繰り出す、兜越しでも伝わる衝撃に拘束が緩んだ瞬間シオンの双刀が交差する様に振るわれて胸甲を裂いた。


「くっ!?」


更に放たれた前蹴りが俺を突き飛ばす、幸い体には届いておらず胸甲は直っていくがシオンも全身を貫かれたにも関わらず傷が治っていった。


「致命傷の筈なんだがな」


「焔嘴は使い手の生命力を極限まで高める、転身てんしんした俺は擬似的な不死という事だ」


……不死もそうだがあの双刀も厄介だ、これまでカオスクルセイダーの鎧を傷つけられたのはロウドしかいなかった。


威力を高めやすい火とはいえシオンの双刀はロウドに勝るとも劣らないかも知れない。


(普通の武器では倒せない、だが足止めや牽制にはなる)


頭の中で瞬時に計算して立ち上がる、確かにシオンは強い……だが手はあった。


(アレを使うか)


両手に小剣を握って闇を纏わせる、風と闇を纏い身体強化を極限まで発動して地面を蹴ると衝撃で砕けた。


左右から迫る小剣をシオンは受け止める、小剣を手放してその場で回転する様に足払いを仕掛けるがシオンは跳躍して避ける。


マントから数十もの鎖分銅が放たれてシオンに迫る、双刀から放たれる炎雷が鎖をふき飛ばすが下から伸ばしていた鎖がシオンの足首に巻きついた瞬間に闇を纏った槍を投擲する。


シオンは双刀で槍を受けるが衝撃でふき飛ばされる、その間に巨大剣グレートソードを軸に闇を集めて更に巨大な刃……神殺しミストルティンを形成する。


「“黒刃嵐舞ストームブリンガー”!」


神殺しから放たれた闇の嵐が渦となってシオンを捉える、闇の渦へと飛び込んで一直線にシオンに迫った。


「ぬ……おおおっ!」


全身を刻まれながらもシオンは双刀の力を高めて振るう、神殺しと双刀がぶつかった直後にシオンは衝撃でふき飛んだが俺は内心で舌打ちした。


(浅い!)


シオンの体に生じた傷から血が流れる、だが致命傷には程遠いその傷に触れながらシオンは驚愕しながらも冷静に判断した。


「成る程……如何なる力かは知らぬがその剣は不死なるものを殺せるのか、神を殺したというのも偽りではなさそうだ」


シオンはそう言うと双刀を構える、双刀には尋常ではないほどの力が込められていき余りの力に周囲の大気が爆ぜる音を立て陽炎の様に揺らめいている。


決着を着ける、言外の宣告に俺は神殺しに闇を纏わせて構える。


この一撃で勝負が決まる……示し合わせた訳ではないが互いにそう感じ取っていた。

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