50話 最強の騎士vs最強の武人
剣戟の音が響き渡る。
シオンの炎を纏った刀が真一文字に振るわれる、俺は後ろに下がって避けるが雷を帯びたもう一振が後を追う様に迫った。
上半身を更に倒して避ける、地面に手を着いた瞬間に風を起こして反動で跳び上がり小剣を突き出した。
シオンは上半身を逸らして肩当てで小剣を受け流す、そのまま体当たりを仕掛けてきたが自分から跳んで下がると同時に
雷刀で受けられるがすぐさま斧槍を翻して石突でこめかみを狙う、炎刀で受けられた直後に小剣と手斧に変えて間髪入れずに攻めるが数合打ち合って互いの武器で押さえ合う体勢となった。
「形を自在に変化させる神器か、しかも雷を通さぬときた」
同じタイミングで蹴りを出す、交差した脚がぶつかり弾かれる様に距離を取ると野太刀を手にして上段から振り下ろした。
シオンは双刀を交差させて受け止める、押し込んだ刃と受け止めた刃が擦れる度に火花が散った。
「この手のものは使い手の力量に左右されるものだが……お前が使うとこうも恐ろしいものになるか」
シオンは僅かに口角を上げながら野太刀を押し返す、距離を詰めて振るわれる炎刀を鎖分銅で受けた瞬間に腕に絡めて背中に抱える様に投げた。
だがシオンは自ら跳ぶ事で空中で体勢を整えて着地と同時に雷刀を振るってくる。
鎖を手放してしゃがんで避けると手甲と風を纏って脇腹を殴りつけると雷刀から雷が放出されて距離を取らざるを得なかった。
(振動を伝えきる前に離された……)
雷の威力はそこまでのものではなかった、おそらく俺の拳をまともに受ける危険性と避けれない事を瞬時に判断して雷を放出した。
「ヒヅチ最強の武人っていうのは嘘じゃないらしいな」
「お前もな、最強の騎士と謳われるだけの事はある」
シオンは双刀を構えながら話す、言葉を交わしながらもその強さに驚嘆せずにはいられなかった。
片手で振るっているにも関わらず一撃が鋭く重い、下手に受ければ腕が痺れるその威力は常人なら受けた瞬間に腕の骨が砕けるだろう。
見た目以上の剛力に加えて研ぎ澄まされた剣術、更にはまだ底を見せてないであろうシオンを相手に俺は武器を握り直して高鳴る鼓動と裏腹に意識を研ぎ澄ましていった。
―――――
(シオンside)
背筋に寒気を感じるのはいつぶりだろうか。
刀を振るう者とは何度も戦った、槍を使う者とは幾度も斬り合った、鎖や変わった武器を使う者と戦うのも初めてではない。
だが目の前の男の男はこれまで出会った者の中で誰よりもそれぞれの武器を使いこなしている。
(武芸百般……武人が極めるべき全ての武芸を修めるという理想論だったが、実現した者が外つ国にいたとはな)
しかもこの男はあの鎧を使わずに戦っている。つまりは自らが培った技術と体だけで既に俺と渡り合うほどの実力を有しているのだ。
千変万化の戦い方は一対一の筈なのに幾人もの敵を同時に相手している様な錯覚さえ覚える。
(強いな……)
人生で一番強いと断言できるであろう相手に思わず口角が上がる、背筋には寒気だけでなく自身の全霊を以て戦える相手に出会えた事への武者震いも混じっていた。
(だが、負けてはやらん!)
久しぶりに出す全力に応える様に雷顎焔嘴から雷炎が吹き出した。
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