43話 鬼の正体


力が霧散した錆不離を落とした鬼が倒れる、すると額に生えてた角が短くなっていき髪に隠れる、息はしているので生きてはいるようだ。


「殊の外、上手くいったな」


錆不離に宿っていた暴走した魂、それをカオスクルセイダーで吸収する事で鬼を止められるのではないかと考えたが当たっていた様だ。


鎧を解除して意識を失い倒れる鬼を見る。改めて見ると服も体もボロボロで汚れており服に至っては原型を留めているのが奇跡的な状態だった。


カオスクルセイダーで暴走していた一部の魂を吸収して止める事は出来たがこのままという訳にはいかないだろう。


(近くに小川があったな)


鬼を抱え錆不離を掴むとガルマを喚んで移動する、鬼を恐れたのもあってか周囲に物見や使い魔などの気配はなく鬼との戦いを見ていたものはいない。


小川に到着するとバッグから鍋を出して水を汲み、“沸騰”の術式を刻んだ魔石を入れる。


(見たところ傷とかはないようだが……流石に今の姿はな)


ため息をつきながら沸かした熱湯に浸し絞った布で目を覚まさない鬼の手や顔を拭っていく、汚れてこそいるが鬼の顔は中性的な整った顔をしていた。


(後は体か……気は進まないが)


ボロ布としか言えない服を脱がして体を拭こうとするがある事に気付いて動きを止めた。


(……ない?)


鬼の胸には確かな膨らみがあった、体は細いが丸みがあり腰の辺りは曲線を描いている。

極めつけは男が誰しも持って生まれるものがなかった。


「……女?」


未だに目を覚まさない鬼から返事は帰ってこない、あの戦いぶりに僕という呼び方、高い声も子供特有のもので男だと思っていたのだが……。


気を取り直して体を拭い、怪我などがないかを確認してひとまず代えの服を着させて毛布を被せる。


通信水晶を取り出してアリアに繋げる、すぐに繋がってアリアの顔が映し出された


「無事みたいね、上手くいったの?」


「ああ、ひとまず落ち着かせる事は出来たんだがもうすぐ日も沈む。城に戻るのは明日になりそうだ」


「分かったわ、こっちも指示通り進めているけど追加でやっておく事はある?」


「特にはない、負担になるかも知れんが頼んだ」


「ええ、そっちも気をつけて」


通信を終えると日が沈む前に野営の準備に取り掛かる、小川から少し離れた位置に移動して準備し終えた頃にはすっかり暗くなっていた。


(どうしたものか……)


食事の準備をしながら考える、錆不離から吸収した魂はかなりの荒くれ者でカオスクルセイダーと俺だからこそ取り込めたものだ。


だがこの魂達が錆不離の力の源だとしたら当てにしていた強さはもうなくなっているのだろうか?


それに彼女は錆不離に取り憑かれている状態だったと言えるしあの約束を彼女が守る必要も義務もない。


とすると作戦を練り直すしか……。


「う……」


そんな事を考えていると鬼の少女が目を覚ました。

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