33話 突撃
戦の前日……。
「平原とは言っても周囲は山で囲まれた場所だ」
地図を示しながら俺は周囲にいる者達にそう伝えた。
「いくら精鋭だろうと地形を無視して進める訳じゃない、平地に沿って進軍する以上は相手は縦長の陣形にならざるを得ない」
「数の利を活かしきれない、と?」
「ええ、ですが相手もそれを分かっている筈……総大将のシオンがいる本陣の周囲は側面も隙なく固めてくると考えて良い」
だから、と俺と二千の兵を表す駒を動かしながら続けた。
「まずはそれを剥がす」
―――――
ガルマを全速力で走らせながら敵陣に真っ直ぐに突っ込む、オヅマの兵達は長槍を一列に構え、後方の兵士達が矢を放った。
「“
刀に纏わせた闇を前方に向けて放つ、前方に拡散する様に放たれた闇の嵐は矢を吹き飛ばし、長槍を構えた兵達の隊列の一部を崩した。
ガルマが地面を蹴って跳ぶ、兵達の最前列まで跳んだガルマの蹄に闇が宿り着地と同時に衝撃波が巻き起こった。
「うわぁ!?」
「ひいっ!?」
「ぎゃあ!?」
刀から
「「「おおおおお―――――っ!!!」」」
オヅマ軍は迎撃に入ろうとするが本隊の気迫と勢いは生半可な迎撃を許さずに蹴散らす。
俺は闇の風を纏いながら先陣を切り続けて進むとこちらに……いや、
ガルマを還すと同時に跳躍しながら
闇を纏って風を起こす矢がゴモン軍の上を通るとライゴウの指示の下にゴモン軍は左右に分かれる。掻き乱された形となったオヅマ軍の最前列はもはや総崩れとなっていた。
(後はライゴウが頃合いを見て引いてくれるだろう)
俺は風を纏って敵陣のど真ん中に降り立つ、そこには最前列にいた兵とは装備も力量も格が違う武者達が立っていた。
ヒヅチ特有の大鎧を身に纏い、手に槍を持った威風堂々とした立ち姿は並の兵を怯ませるであろう気迫に満ちている。
カオスクルセイダーを纏った俺の殺気を受けても怯えの色を見せない眼が俺を捉えていた。
(これが最強と謳われるシオン直属の部隊、介者部隊か)
遠目に見えるオヅマの本陣から号令が下る、鎧武者達が槍を構えて向かってきた。
繰り出される槍を避けて一人に斬り掛かる、首に向けて黒刃を振るうが鎧武者は首を傾けて兜で防ぐ。
黒刃が兜に喰い込む、刃を防げたとしてもかなりの衝撃があった筈だが鎧武者は槍を捨てて刀を抜こうとした。
刀を手放して“
鎧武者は血を吹きながら倒れるが間髪入れずに別の槍が迫った。
(介者一人が十の兵に勝ると聞いたが……嘘ではなさそうだ)
迫る鎧武者達の攻撃を捌きながら思わず唾を呑んだ。
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