06 あら、おかえりなさい!
「くそったれの犬め……」
目を覚ますと、なんか血の海にぷかぷか浮いてた。
お陰様で服は真っ赤。幸い黒い服だから目立ちにくい……か?
「……ランクがついちゃったし」
これのせいで、一般人から
本当に自動でなっちゃうんだなぁ。選択くらいさせてくれよ。
「2年間潜って収益は0かあ〜……世知辛い」
なんとか生還できたのに、考えるのはあの本のことばかり。まるで恋だ。胸が引き裂けそうって気持ちはこういうことを言ってんのか。
「ふんぐぅぅぅぅ……悔しいよぉシャルロット……!」
………………。
「……あれ? いないの?」
いつものように
(犬っころと戦う時、シャルロットが出てきてくれたように見えたんだけど、気の所為だったのかな)
最後らへんの記憶がごちゃごちゃになってる。目が覚めたら誰もいなかったしな。
頭をぶんぶんっと振って、寂しい気持ちを晴らした。
なんだかかんだあったが、すんなりとオブダンから脱出することに成功。途中途中ですれ違う、
交代の時間ってのは把握してるからな。
「あれ、お兄ちゃん生きてたんだ……って」
「あぁ、2年ぶりくらいだな。ちょっと疲れたから寝る……」
「臭いから風呂に入ってよ! なにそのニオイ!」
「……感動の再会とかはないのね」
ざぁざぁとシャワータイム突入。
ひっさしぶりだ。ダンジョン内には水源はあったけどシャワーはなかったからなぁ。
◇◇◇
この世界がこんな感じになったのは、死んだ爺ちゃんが生まれる前くらいかららしい。
国家間の戦争が始まって世界に暗雲が立ち込めた時に、世界が眩い光に包まれた。
そこから現れた神──高次元知的生命体という説もあるが、今回は神という体でいこう──が出てきてこういった。
【みんなの中で一番多い望みをかなえましょう】
戦争中の人々にはそれが救いに見え、皆が思い思いの願いをしたらしい。
7日後、再び現れた神様は空にグラフとかを出しながら統計結果を出してくれた。プレゼンかな?
【まず、動物界、せきつい動物門、ほ乳綱、霊長目、ヒト科、ヒト属、ヒトの皆様の願いからです。それがこちらになりまして】
【一番多いのは、平和でしたね。あとそれに続いて多かったのがなんと転生したいという願いでした。第三位以下関してはこの通りで】
【他の生命体の9割ほどは人間死ねでした】
【なので、人間の転生したいという願いと人間死ねが上手くマッチをしていると思いましたので、皆さんには死んでもらって──】
「ちょっとお待ち下さい」
説明を進めていた神に1人の男が手を上げた。
それは日本のゲーム会社に勤める男性だったという。その男はメガネをクイッと動かしながらこう話した。
「転生は死んで生まれ変わりたいという意味ではありません!」
【え、でも……ほら。転生ってそういう】
「ゲームみたいな世界に趣き、チートやら何やらをしてチヤホヤされたいっていうのが転生なんです!」
【えぇ〜……そうなの……?】
神は心底驚いたような表情をしてたそうな。
そこから神は人間の願いを叶えるためにゲームのことを勉強するのに3日、世界を作り変えるのに4日かけた。
そうして、神がいなくなって7日後、当時の人々の前にとあるモノが出てきた。
【お試しメッセージ:これで表示できてますか?】
当時の人達おったまげ。それが今の【ウィンドウ】の原型になるものだ。
その下にある【YES/NO】のYESを過半数が押したのを確認すると、一瞬だけ世界が止まった──ような感覚になり、最後にもう1度だけウィンドウが表示された。
【『人間死ね』という他の生命体の意見と『転生したい』という意見を合わせて、この世界を人間にとって過酷で簡単に死ぬ世界だけど、やりようによってはちやほやされる世界にしました!】
この後、すぐに世界にダンジョンが出現し、人間たちの【個性】が【スキル】になった。
これが、今でいう『
その後がとかく大変だったらしいが……詳しくは知らない。100歳超の人を探して
ちなみに、今を生きる人達がスキルをもらうのは、15歳になったタイミングで。
もうお気づきだと思うが、15歳時点のボクの個性が『陰キャ』で『ぼっち』で『脳内お花畑』で、それらがスキルに変わった訳だ。
人によってはタイミングがちょっとズレたりするらしいから、15歳の時は個性を大事にしないとなぁ〜となってる。
みんなも個性大事に。そうしなきゃ、ボクみたいなバッドスキル持ちになっちゃうぞっ。
「な! シャルロット!」
ざぁざぁとシャワーの音だけが浴槽に響く。
「反応なしと。どこ行ってんだか」
友達から返答がないの辛いな。一緒に戦う夢まで見たのにさ。
(まぁ、こんな世界でスキルが追加で手に入るとは思わなかった。切り替えるか……)
キュッ、と蛇口を閉めて浴槽を出た。
髪の毛をタオルでゴシゴシと乾かしながら二階の自分の部屋に向かう。
「ふあああ……とりあえず、寝るか……それにしても、シャルロットはどこに行ったんだか……」
『──あら! おかえりなさい! 水無瀬!』
開けた扉をピシャリと閉めた。
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