05 【シーカーの資格が与えられました】





 どろ、と流れる血液の海に溺れる水無瀬の体。

 その血液は水無瀬のモノではない。

 最終階層の扉が閉まりかけている中に鼻先を突っ込んで、強引に閉じられたことで鼻先がねじ切れた【個体名:王狼】の血液だった。


 財宝を奪われた王狼は略奪者を殺すために、凶暴状態へと変わっていた。

 そんな略奪者が出口に向かって飛んでいった。まだ、階層主が生きているという状態で。

 

 このような事態は今までになかった。

 ボスを倒さずして財宝を奪い、その挙げ句、生きて帰ろうとするなんて。

 それも、探索者シーカーではなくただの一般人ときた。

 結果、王狼は我を失い、扉に挟まれて大怪我を負った。

 

 自分がやったことの大きさなんて露も知らない水無瀬は、全身打撲のような状態で気絶している。


 そんな彼の目の前にウィンドウが表示された。


 ──ピコンっ。


 【空想家のスキルレベルが上昇しました】


 ──ピコンっ。


 【空想武器イマジナリーウェポン:『でっかい盾』が壊れました。再使用までにかかる時間──20分】

 【空想友達イマジナリーフレンド:『シャルロット』が瀕死状態になりました。再召喚までかかる時間──20分】


 ──ピコンっ。


 【水無瀬みなせ せかい探索者シーカーの資格が与えられました】

 【現在ランク:E】

 

 最初の王狼の攻撃を防いだのは、水無瀬が強く願った空想友達イマジナリーフレンドの『シャルロット』。

 最後の王狼の攻撃を防いだのは、水無瀬が強く願った空想武器イマジナリーウェポンの『でっかい盾』。


 ダンジョンボスの攻撃を防いだことにより、水無瀬へようやく探索者シーカーの資格が与えられたのだが、そのことを彼が知るのは少し後のことだった。

 

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