ゴミスキル持ちの陰キャは、S級シーカーになる姿を空想する。〜ダンジョン最下層で手に入れた『空想家』スキルで空想を現実にし、オレは最強の仲間を集め、世界を席巻をする。〜
久遠ノト
第1章:島国の空想家は夢を描く
プロローグ
「ぼくの将来の夢は、最強の
その黒髪でぐるぐる瞳の少年は『将来の夢』を問われ、そう言った。
クラスの真ん中の席で挙げられたその手は、夢を掴むために伸ばされた手のように真っ直ぐ、キレイに伸ばされている。
それは、この世界に突如として現れたダンジョンに潜る人達のことを指す。
ダンジョンがあるのが当たり前の『V世代』である
危険を顧みず、浪漫を追い求める。
武器の扱いを許可され、一般人とは違う存在になれる。
最高にカッコいい仕事だと。
そんな
黒髪の少年の将来の夢を聞くと、回りの子どもたちも口々に将来の夢を語った。
大企業の社長。プロスポーツ選手。世界で一番の金持ち。
言ってしまえば、どれもが現実味のない夢ばかり。
然れども、子どもが夢を語る。それに対して誰が否定をするだろうか。
ただこの教室で唯一の大人である『教師』だけが、そんな言葉を聞きながら疲れ顔で笑みを浮かべていた。
その顔の理由に気付くわけもなく、気付いたとしても理由が分かるわけもなく当然のように授業は進んでいく。
子どもは夢を見るのが仕事だ。
若者が夢を見ることの出来ない社会なぞ、没落をしていくだけなのだから──…………。
そして、数年後に彼らは思い知る。
その夢が『期限付き』である、と。
「できるわけがないだろ。いつまでも夢を見てんじゃねぇぞ」
「いい加減、大人なんだから真面目に将来を考えなさい」
「もっと普通に会社員とか、大学に出るとか。そういう目標にしなきゃね」
進路選択に差し掛かると、彼らに降り掛かってきた言葉。
それは、どれも同じ言葉を枕詞にしていた。
──いつまでも子どもじゃないんだから。
将来の夢を子どもに語らせ、成長をすると「無理だ」「できない」と踏みにじる。
そして、回りの人達と同じ鋳型にはめ込んで、社会に送り出す。
「努力をして報われる人なんてのは一握りなのよ」
「夢を語って良い時期は終わったの」
「空想と現実の区別をつけなきゃね」
大人の残酷さを感じるのと同時に、彼らも同じような仕打ちを受けてきた元若者だということに気付く。
夢を語らされ、できると無責任な言葉に乗せられ、いざ将来選択の時頃になると叩き潰される。
そうして、また諦め癖のついた大人が世の中に送り出されるのだ。
だが、彼は違った。
「はいっ! でも、ボクはできるって思ってます!」
真っ直ぐな瞳で、灰色の世界に住んでいる住人に言ってのけた。
「だから、やります。なります。最強の
彼の回りにはいつも色が着いていた。それが大人には眩しく、淡い色で上塗りをしたい気持ちにさせられる。
だが、強情で強欲な少年はそれでもずっと夢を語っていた。
この注意も何度したか分からないというのに……それでも彼はそういうのだ。
少年の名前は、水無瀬
この物語はこの少年が最強の
「はぁ。戻ってこーい」
目の前のくたびれた教師のため息によって、水無瀬は現実に引き戻された。
今は進路選択の話し合い中。急にほわほわと意識がどこかに飛んでいきそうだった水無瀬の魂を引き戻した。
「なぁ。水無瀬。じゃあ、どうやって最強の
「ど、どうって……えーと……」
「15歳になってスキルをもらったよな。なんのスキルをもらったんだ? 言ってみろ。ほら」
教師の呆れたような声色に、水無瀬は居心地悪そうに目を動かす。
「陰キャ……ぼっち……脳内お花畑」
「で、なにになるって?」
「……最強の
「そんなゴミスキルでなれるほど、
「ゴ、ゴミスキルでも頑張ればなれることを証明してみます!」
水無瀬も自分のスキルが俗に言う『ゴミスキル』だということを知っている。
というか、スキルが発現した15歳時の周りの反応を見れば必然とそうならざるを得ない。
「水無瀬ぇ……オレはお前のためを思って普通の進路に進めてるんだぞ。悪いことは言わないから」
「大丈夫です!」
「いや、大丈夫とかではなく。良いスキルを持っていない
「活躍します! だから! 絶対に! 先生も期待してください!!」
「夢を見すぎだ! いいから落ち着け!」
急ぎ早に進路指導室を出ていこうとする水無瀬を教師は引き留める。本来ならここまで注意をする大人の言葉なら、子どもは素直に聞くだろう。
「夢っていうのはね、先生」
だが、こと、この少年──水無瀬
「叶えたいから夢なんですよ。叶えれなかったら諦めますので!」
彼の中には『夢を諦める』という選択肢など準備されていない。
あるのは、ただただ真っ直ぐ夢を叶えるという道だけ。
だから、彼はダンジョンに潜った。
最強の仲間と共に、最強の
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