「俺の屍を越えていけ」と言っていた師匠がダンジョン最下層で一目散に逃げたんですが? 俺が先に屍になってどうするんだ‼︎
中村 青
ダンジョン「グラストンベリー・最下層」
01/最下層で置いていかれるとか、マジないっすよ、師匠!
俺、アザークの師匠であるグライムは、常々こう口にしていた。
「いいか、アザーク。冒険者たる者、いつまでも教えを乞うのではなく師匠を超えていかなければならない。それまでは俺がお前の命を守ってやる! だがいつの日か強くなって、俺の屍を越えていけ!」
そんな師匠を尊敬しており、いつか師匠を超える剣士になると強く誓っていた。
「きっとアザークなら大丈夫だよ。私も応援してるね」
そう優しく声援を送ってくれたのはパーティの紅一点で、俺の彼女であるセツナだった。
修道院で育った彼女は、二十歳になるまで清い身体で神に祈りを捧げなければならない為、キスもハグも出来ずにいたが「大人になったら結婚しようね」という約束を糧に、これまで共に支え合ってきた。
「俺もアザークと一緒に強くなって、世界一のモンクになる!」
そう夢を語っていたのは幼馴染であるサムサ。コイツは強くなる為に朝から晩まで修行ばかりしている筋金入りの脳筋だ。俺は世界一の戦士に、サムサは格闘家を目指して切磋琢磨した日々が懐かしい。
俺は彼らと一緒にパーティを組んで冒険してきたことを誇りに思っていた。彼らとならばどんな困難も乗り越えられると思っていたのに———……!
「くそぉぉぉぉぉーッ、邪龍がこんなに強いなんて聞いてねぇぞ! あのギルドの受付嬢、あとからクレーム出してやる!」
クレームどころじゃねーよ、グライム師匠!
Sランクまで登り詰めたアザーク達は、最上級クエスト『伝説の聖剣エクスカリバー入手』のミッションを請け負ったのだが、その剣を守っている邪龍が強いの何の。三日三晩戦い続けても終わりが見えない。むしろ俺達が虫の息で全滅寸前だった。
これは、いよいよ三途の川が見え出したか。そう観念した時、師匠であるグライムが一つの強化素材をアザークに向かって投げつけた。
これは
しかし、振り向いた時に師匠の姿は見当たらなかった。むしろ出口付近で一目散に走る姿をとらえてしまった。
早い、早い! 早過ぎるだろ、師匠‼︎
「アザーク、スマン! 俺達にはまだ早かった!」
えぇ⁉︎
「セツナとサムサにも逃げるように指示を出した! あとはアザーク、お前の働き次第だ!」
俺の、働き次第?
「お前が囮になってくれたら俺達は逃げられる! 俺達の為に、頑張ってくれ!」
えぇぇぇぇ—————ッッッ‼︎⁉︎
あまりの驚きに素で叫んだ! 皆で力を合わせても倒せなかった邪龍を、どうやって?
大体こんな
いや、フリだよな? フリだって言ってくれ!
だってアンタは……俺が強くなるまで、命をかけて守ってくれるって言ったじゃねーか!
「この、クソ師匠ォォォォ———ッ! ふざけるんじゃねーぞ‼︎」
アイツら、絶対に許さねぇ!
案の定、全く太刀打ちができなかったアザークは、木っ端微塵に打ち砕かれた。勿論意識なんて当に切れていた。
カビ臭い湿気を含んだ土と一体化し始める。雄叫びを上げながら、屍肉を貪る邪竜の唸る声が無情に響き渡っていた。
そんな最下層に、不釣り合いな女性が足を踏み入れていた。深々と被ったフードからは、瑞々しい褐色の肌と灰色の長髪が覗かせた。
彼女は持っていた杖で魔法陣を描くと、復活の詠唱を口にし始めた。
眩い光が発せられる。温かい、まるで太陽の木漏れ日に包まれているような安心感だ。
「———きろ、起きろ」
女性にしてはハスキーな色っぽい声。アザークは重たい瞼をそっと開き、辺りを見渡した。
俺、生きてる?
「うわぁぁぁぁぁ……っ! な、何で?」
確か俺は生きたまま邪龍に喰われて、自分の骨が砕ける音を聞きながら死んだはずなのに? 生きてる? 生きてるのか?
「ふぅ……、成功して良かった。まさかこんな場所で人間を助ける羽目になるとは」
アザークに膝枕をして看病していたのは、褐色の肌のダークエルフ。灰色のロングの髪に赤い目が印象的だった。
「私の名前はキウイ。ぐちゃぐちゃに果てていた君を生き返らせたのが私だ。お前、冒険者ならもっと命を大事に扱わないとダメだろ?」
こうしてアザークとキウイは、運命の出会いを果たしたのであった。
———……★
数々の小説の中から、この小説を選んでいたありがとうございます! この小説はざまぁ系になるのか、復讐系になるかは分かりませんが、たくさんの人に応援してもらえるように頑張りたいと思いますので、よろしくお願い致します!
そして「まぁ、少しくらいは期待してやるか」「頑張って」と思った頂けたなら★やレビューをよろしくお願いします✨
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