付き合いたての俺っ子彼女にメイク(だけじゃない)される

穂村大樹(ほむら だいじゅ)

第1話 彼氏にお願い

「な、なぁ、ちょっとお願いがあるんだけど……」


「かなり突拍子のないお願いだけど驚かないで聞いてくれ」


「付き合って初めてのおウチデートでこんなお願いするなんて失礼ってのは理解してる」


「もしかしたら変人扱いされるかもっていうのも理解してる」


「それでも、どうしてもやらせてほしいお願いがあるんだ」


「すぅ……はぁ……」

//深呼吸


「……」

//逡巡する感じで


「お、俺におまえのメイクをさせてくれねぇか……?」


「……」

//不安


「え? 自分の顔じゃなくて僕の顔にメイクしたいのかって?」


「そうだよ。俺が俺の顔にメイクするんじゃなくて、俺がおまえの顔にメイクしたいんだ」


「おまえ程メイクがしやすそうな顔してる奴なんて今後100年は現れねぇだろうし、今日お願いしとかねぇといつまでもお願いできないような気がしてさ」


「俺なら絶対お前を可愛くできると思うんだよ」


「そ、そんな呆れた顔してこっち見るなぁ! 俺だって自分が変なこと言ってるのは承知の上なんだぞ⁉︎」

//SE 恥ずかしそうに顔を隠す音


「一人称は俺だし、髪も短くてボーイッシュだし、身長は低いし、童顔だし……」


「……」

//落ち込む感じで


「そんな俺がメイクが好きだなんて変だってのは理解してる」


「で、でもだって、付き合う前からずーっと思ってたんだよ……。おまえの顔、良い意味で特徴のない塩顔だし、メイクしたらめちゃくちゃ楽しいだろうなーって」

//SE 聞き手の頬に触れる音

//演技依頼 両頬に軽く触れる


「え⁉︎ ディスってるだろって⁉︎ ディ、ディスってなんかないぞ⁉︎ 褒めてる褒めてる!」


「どうして男なんかにメイクしたいのかって? 俺は悪くねぇぞ⁉︎ おまえがそんなにメイクしやすそうな顔してるのが悪いんだからな!」


「……」

//逡巡するように


「……もしメイクさせてくれたらなんでも言うこと聞くから」


「そこまですることか? っておまえ当たり前だろ! それくらいの対価を支払ったとしても俺はお前の顔にメイクしたいんだよ」


「なぁ……だめか?」

//演技依頼 少しずつ距離を詰める


「……な? ……いいだろ?」


「頼むよ……。どうしてもおまえの顔にメイクしたいんだ……」


「……」

//懇願する感じで


「一生のお願いっ」

//耳元で囁くように


「……」

//不安


「--えっ、ほんとに⁉︎ 良いのか⁉︎」


「やったぁ! まさか本当におまえの顔にメイクさせてもらえる日が来るなんて……」


「ありがとなっ!」

//SE 勢いよく抱きつく音


「じゃあちょっと準備してくるから! 時間かかるかもだけどごめんな! 大人しく逃げずに待っててくれよ!」

//SE 部屋を出て階段を降りる音


「ふんふふんふふーっ♪」

//SE 階段を降りる音

//演技以来 距離を離してご機嫌に鼻歌を歌う

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