美少女 真奈―妖惑の瞳

漱石

第1話 プロローグ

 真奈は、美しい。恭平は心から思っている。

 時に、十三歳とは思えぬほどの静かな、そしてやや暗い表情を魅せる。その表情は、恭平の心を騒がせるのだ。

 かと思えば、体育の五十メ―トル走をやらせると、クラスの男子にさえひけをとらない。白く長い足に秘められた筋力は、恭平の想像以上なのだろう。

 都会の中の中学なので、校庭は狭く、職員室から真奈が、体育座りをしているのが見える。

 ショ―トバンツの中心が、職員室の窓際の恭平の座席から恭平の視界に入ってくる時がある。

 視線が合うと、真奈は頬を赤くしつつ、恭平を睨みながら足を閉じるのだった。

 恭平は、首を横に振りながら、真奈に、

(誤解だ。俺は教師だぞ)

 と、抗議の視線を送る。

 真奈は、恭平の視線の意味を悟りうなずく。

 真奈が独り言を呟いた。

 その呟きは、決して恭平には聞こえるはずはない。

 にも関わらず彼の耳に届いていた。

「もう、先生のエッチ」

 恭平は落ち込んだ。


 あの夜がなかったら、酒井真奈と高橋恭平は、ただの担任教師とその受け持ちの生徒として、多感な青年時代と少女時代の一瞬の交差として、別々の人生を歩んでいたことだろう。

 しかし、運命はそれを拒否したのだった。

 ☆

 その夜、恭平は最近の運動不足を反省して、ジョギングを始めたのである。

 時間は、夜の八時だった。

「キャ―、やめて、やめてください」

 恭平は、声のする方向へ走った。

 そこは公園だった。

 夜で、辺りは暗かったが、恭平には見えた。

 頭の禿げた男が、女の子を押し倒していた。

 その女の子は―真奈だった。半袖シャツがめくれ下着が見えていた。

 恭平は、怒りに燃えて男に体当たりした。

 学生時代、空手をしていた恭平は、手刀で、男の頬を叩いた。

 酔っていたのか、中年男は気絶していた。

 ☆

 恭平は、未だに信じられないでいた。

 あの夜、真奈を痴漢から救ってから以後の恭平の人生は、逆転した。

 警察からは感謝状が送られ、女性市長と面会し、

「私、とても感激しました」と、賞賛され、

 学園の理事長からは、入学志願者数が、劇的に伸びていると言われ、感謝された。

 しかし、恭平が一番喜んだのは、真奈の母親が、アル中で、生活能力なしと判断され、施設に真奈が送られることになったが、恭平が反対し、真奈を高校卒業まで引き取ることになったのだ。

 真奈に密かに恋していた恭平は、自分の幸運に酔っていた。

 しかし、真奈が恭平のマンションの部屋に来た最初の日、真奈に言われた言葉に恭平は、狂喜した。


「先生、先生が私とエッチしたいと思っていること、私、知っているんだから。私が先生のこと好きだからって、調子に乗ってあんまり私にイタズラしないでね。少しだけならいいけど…」

 真奈は、流し目で恭平に言った。

 恭平は、真奈を抱き寄せた。真奈は恭平を睨むが、抵抗しなかった。

(キ、キスしていいか?ま、真奈にキスしたいのだが)

 恭平は、まるで中学生のように緊張していた。

(先生のエッチ!いいよ。でも、今日は、キスまでよ)

 恭平は、真奈にキスした。真奈の手が、言葉とは裏腹に、恭平の股間を愛撫してくれていた。

 恭平は驚いたが、美少女の指の感触に身を任せた…。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る