ゲオルギー将軍の討死の報告を聞いたフランツは、静かに杖を下ろした。

 ゼランシア砦の最上層から自軍の兵の動きを見ていれば、ゲオルギー将軍の死は予測できた。

 本来なら、ゲオルギー将軍は上層から攻撃をするはずだった。しかし、彼自身が自らを最前線へ置くことを決めたのだ。

 バルドが単身攻め込んでくるとなれば止められるのはゲオルギー将軍の他になく、配置を変えたことは間違いではなかった。しかし、彼は進んで最前線に立ちたがっていた。

 好戦的な性格ではないというのは、ほんの短い間一緒にいただけでも分かる。かといって敵将の首を上げる名誉が欲しいというわけでもなさそうだった。

 何を考えても今更だと、フランツは傷だらけの腕に目を落とす。

 もはや、自分にも神器の一撃を防ぐだけの魔力は残されていない。指先の感覚もなかった。

「御当主様!! 奥方様が、御討死、なさいました……!」

 臣下からの訃報にフランツは目を伏せる。

 フリーダが死んだ。

 驚きや悲しみよりも、そうなってしまったかという思いの方が強かった。

「……そうか。最期の様子は」

 フランツは抑揚のない声で妻の選んだ道を問うた。

 そして奮闘した果ての結果と知って少し安堵した。最期の最期までフリーダのことは分からずじまいだったが、少なくとも終わりは生きたいように生きて死んでいったのには違いない。

「全員、街の方へ場所に退避しろ。たとえあの雷獣でも、全てを壊し尽くすほどの力は残っていないだろう」

 モルドラ砦側はもう壊滅的だろうが、反対側の城下街側にまで寄れば多くの兵は命を落とさずにすむはずだ。

 フランツも身を翻し、生き残ることを選んだ。

 臣下や領民への責任も果たさず死ぬわけにはいかなかった。果たすべきことが自分にはまだ多くあって、生き汚いと言われても死ぬために戦うことはできない。

 背後で破砕音が響く。

 大きな獣が岩山に体当たりしているような、そんな揺れと轟音の中フランツは崩れいく砦ではなく生きようとする者達を見ながら振り返らずに進んでいく。

「御当主様、奥方様の御遺骸が……」

 途中、臣下に呼び止められてフランツは声もなく首を縦に振って妻に会いに行く。

 崩れた廊下と廊下の間になんとか簡易の橋を築き、完全に廊下が崩落する前にフリーダの骸を運び出したらしかった。

 何も言わずとも臣下達は部屋の前まで案内すると、そっと距離を置いて夫婦ふたりきりにとしていった。

 来客用の小さな寝室の寝台にフリーダは寝かされていた。

 真白いローブは血染めになり銀の髪は焼けた部分や血で固まった部分もあるものの、顔だけは綺麗に拭われ埃ひとつなかった。

 元から白かった肌はさらに色が抜け、まるで陶磁器のようだった。

「貴女にとって、これが一番よかったのか……」

 フランツは躊躇いがちにフリーダの手に触れる。もう冷たく固い指はやはり作り物めいていて、彼女の存在の現実感すらあやふやになる。

 妻とはいがみ合った思い出ばかりしかない。幸せな記憶など、何ひとつはありはしないというのにこの喪失感はなんだろうか。

「……私は、貴女と生きる先を望んでいた」

 自分が失ってしまったのは、彼女と家族になれたかもしれない未来だ。

 得られたかどうかもわからないものだというのに、とてもかけがえのない物をなくした気がしている。

 攻撃はやんだものの砦が連鎖的に崩れていく音は、まだ聞こえた。

 父を失い、妻を失い、先祖代々護り続けた砦も大きく損なわれた。

 この戦に敗北はまるで感じなかった。ただただ、喪失感ばかりだ。

 勝利したハイゼンベルクは果たして何か手に入れたものがあったのか。そう考えながらフランツはフリーダから手を離す。

 まだやるべきことがある以上、あまりここで立ち止まっているわけにもいかない。

 なのに足がまるで動かず、フランツは妻の傍らに立ち尽くす。

 安らかすぎる死に顔に、胸の奥から遅れて感情がどっと溢れ出してきてフランツは肩を震わせる。

 涙は出なかった。

 悲しみというより、怒りに近いものかもしれない。やみくもに叫びわめき散らしたくなる衝動に駆られる。

 それでも声はでなかった。

 フランツは浅い呼吸を幾度かして、フリーダに再び手を伸べる。

 傷ついた片腕の感覚がないまま、物言わぬ妻の体を抱き寄せる。冷たく重たい体に、やっと死の現実を受け止める。

 愛したかった。愛されたかった。

 叶わぬ願いを抱くフランツは、ようやく悲しみにたどりついて静かに涙した。


***


 大きな雷鳴が耳の奥でするのに、リリーは目を開ける。青い空とうっすらと見覚えのなある女性の顔がまず見えた。

「アクス補佐官、ご生還、なによりです」

 着ている黒いローブとふと見えた彼女の手に幾つか連なる指輪で、かろうじて味方の『玉』の魔道士と分かった。

「うん。ああ、痛いけど生きてるのね、あたし。痛いから生きてるのか。あー、ちょっと待って、痛い。かなり痛いわ、痛い」

 意識がはっきりしてくると足と腹部の痛みに、リリーは呻く。

「止血はしていますが、傷は塞がっていないので安静にしていて下さい」

「分かりました。でも、ちょっと前、見させて……」

 傷に響くほどの振動と砦が崩落する音に、リリーは様子を見たくて上半身を起こさせてもらう。

 涙が滲み悶絶する痛みに襲われながらも体を起こすと、立ち並ぶ魔道士の合間からゼランシア砦が砂の城のように崩れていくのが見えた。すでに城門部分は崩れ去り、瓦礫が積み重なって跡形もない。

 誰もが喝采のひとつもあげずに黙ってじっと崩壊を眺めていた。

「戦は、どうだったの?」

 訊ねると、バルドが敵雷将を討ち果たしゼランシア砦を半壊させることに成功したそうだ。

 最期の攻撃を加える前に自分はフリーダと戦闘中の所を見つかり、運良く砦の崩落に巻き込まれずにすんだらしかった。

 そして不意に目の前の魔道士達が左右に寄り道を開けたかと思うと、バルドが自分に向かって歩いてきていた。

「久しぶり……っていうほどでもないかしら」

 五日と離れていたわけでもないのに、本当に何年も離ればなれだった気がする。

 リリーは早くバルドのバルドの側に行きたくて落ち着かなくなるが、傷のせいでそういかない。その代わり、バルドの方が早足で来てくれた。

 お互い触れ合える距離になってやっと、心の底から安堵した顔で見つめ合う。

「リー、戻って来た」

 バルドが跪いてじいっと凝視してくるのがおかしくて、リリーは苦笑する。

「ちゃんと戻って来たわよ。雷将と戦ったの、楽しかった?」

 珍しく目に見える怪我が多い。よほどゲオルギー将軍は強かったのだろう。その分バルドは戦うことを楽しめたに違いない。

「リーは?」

「楽しかったわ。シュトルム統率官と戦うのはすごく楽しかった。でも、なんか今、変な感じがするの」

 戦闘の楽しさも勝利の高揚も思い返せる。だのに、反芻すればするほど胸の中に大きな隙間ができてきて、何ともいえない虚無感が襲ってくるのだ。

 後悔や見知った者を亡くした悲しさではない。

「楽しかったから、かな……また、戦いたいのに、無理なのよね」

 勝って生きるか負けて死ぬかの勝負だったからこその、心地よさだったのだ。もう一度など無理だというのに、あまりにも楽しすぎてまたフリーダと剣を交えたいという願望は膨らんでしまう。

 そして叶わないことに、膨らんだ期待の中身は空っぽだと虚しくなる。

「また、楽しめる」

「……うん。だけど、そうじゃなくて……なんだろう、あたしにもよく分からないわ」

 戦が続く限り、心躍る戦闘にはきっと巡り会える。

 だけれど、フリーダともう戦うことの代価にはなりえないのだ。これまで何度も死地に立った中で、たったひとりとここまでの試合はしたことがなかったからかもしれない。

 あるいは見知った相手だったからかもしれない。

 自分の今までにない気持ちの理由を探しても、答は合っているようで違っていてはっきりとしなかった。

「リー……?」

 バルドが困惑した顔をするのに、リリーも困り顔で返してからまた体を横たえる。痛みはやはり強く、歯を食いしばって声を上げてしまうのを抑える。

「リー、痛む?」

「痛いわね。でも、気を失いそうってわけでもないわ。まだ、用があるんでしょ。大丈夫だから行って」

 いっそ意識を飛ばしてしまいたいぐらいには痛い。撤退は他の怪我人の応急手当などをすませてからしいので、それまでには痛さに疲れて眠れたらいい。

 リリーは痛みに顔を顰めながら、経験上バルドが将としてやるべきことがまだ知っているので彼を炎将の元へ送り出す。

 本当は今は離れたくないものの、痛みに耐える姿を見せても心配させるばかりなので仕方ない。

「リリーさーんー! ご無事で何よりです」

 そして不満そうにバルドが離れた後、緊張感の欠けた間抜けた声でシェルがよたよたとやってきた。

「生きてるけど、無事ってわけでもないわよ。まあ、助かったわ。ありがとう」

 リリーは自分の側に置いておかれている双剣に目を向けて、シェルに礼を言う。

「いえいえ。そのことは後ほどゆっくりお話しを聞かせていただければと」

 周囲の魔道士達の視線を感じながら、リリーとシェルはこそこそと話す。

「しかし、見事に崩れていますね。モルドラ砦も瓦礫の山ですよ。瓦礫も歴史の一端でしょうが……みなさん、あまり喜ばれていないですね」

 シェルが言う通り、周囲に戦勝を喜ぶ顔はまったくなく、皆黙々と事後処理を進めている。

「そうね……」

 リリーは疲労と生き残れたという安堵感を浮かべる人々の表情を見渡して、息をゆっくり吐いて痛みをやり過ごす。

 この戦に勝ちなど最初からなかったのだ。

 築いたのは瓦礫と骸の山だけで、それらも元々は自軍の砦と兵だった。ハイゼンベルク側の損失はあまりにも大きすぎる。

 勝つためではなく敗北を遅らせるための足掻きにすぎない。

 『今は』負けなかった、それだけのことである。

 そうして勝ちのない戦は、多くを犠牲にして幕を閉じたのだった。



***


 戦が終わって一晩が過ぎ、ゼランシア砦の城下町にはディックハウトの炎将が入っていた。

 砦の半壊によりハイゼンベルク側への侵攻は不可能となったが、雷将が戦死したために代わりに敗戦処理のため一番近くに待機していた炎将がやってきたのだ。

「……もう少し、近くにいたらな」

 無事だったゼランシア砦の一室の窓から、屈強そうな炎将の入城を見た後にそうつぶやくのはクラウスだった。

 ディックハウトの炎将が控えていたのはここから馬で半日と少しの場所だった。救援要請をすぐに出したとしても僅差で間に合わなかっただろう。

「来たとしても、リリー・アクスが砦内で戦闘をしたことに代わりはないでしょう。むしろ、こなかったからこそ彼女は生還できたのではありませんか?」

 部屋を訪ねてきているエレンが、椅子に座ったまま静かな口調で指摘する。

「……それもそうだな。魔術が使えるってことは無事でいいんだよな」

 クラウスは躊躇いなく瓦礫の山へと飛び降りたリリーの姿を思い出して、歯噛みする。

 リリーの負傷は見るからに酷かった。報告では意識のない彼女をハイゼンベルク軍が運んだと聞かされているだけで、生死不明のままだ。

 だが、グリザドの心臓を持つリリーが死ねば、島から魔術が消え去るという話が本当なら生きているはずだ。

「フリーダさんも、なんであんなにリリーに執着してたんだか」

 自分にかかっていたリリー脱走の手引きをしたという嫌疑は、フリーダの予想だにしなかった行動によりうやむやになった。

 フリーダがリリーと戦いたいがために、どこかに隠しもっていた双剣とローブを与えたのでは噂が立っている。

 かといってクラウスの嫌疑が完全に晴れたわけではなく、監視の目は置かれていて軟禁状態だ。

 これではハイゼンベルクのモルドラ砦のいた時と変わらないと、クラウスは自嘲する。

「あなたはこれからどうするつもりですか? まだ、ディックハウト側にはあなたの利用価値はあるでしょうが……」

「ディックハウト側が俺をどう扱うか決めてからだな。バルドが勝ったことにディックハウトも慎重になってるだろうから、ここで焦って無駄な損失を出すよりは確実に勝つ手段を取るはずだ。ハイゼンベルクの重要な情報を握ってる俺のことは雑には扱わない」

 実質的にハイゼンベルクの実権を握っていたフォーベック家の跡取りとなった自分が、何も知らないわけがないと向こうも踏んでいるはずだ。

 だが、いつまでも悠長なことは言っていられない。

 相変わらず自分の立場は半端で、信頼もない。忠義心はどこにもないというのを公言し貫いている以上は、確たる信用を得られないのは当然だと覚悟している。

(ディックハウトの内情ももっと知っとかないとな……)

 宰相が全てを取り仕切っているというのに、皇主を神格化しているディックハウトにもハイゼンベルクと同じく歪みは必ずある。

 ディックハウトを内偵していたときいくらかの情報は得ているものの、まだまだ足りない。

「まだ、リリー・アクスのことは諦めてはいないのですか」

「諦めない。この程度で引き下がったりはしない」

 そう言いながらも、迷いなく砦から身を投げたリリーを思い返すと気が滅入る。

 あそこでリリーが逃げ出さなければ、彼女は今頃ゼランシア砦陥落の報復として、見せしめに処刑されていたかもしれない。

 そもそもが自分でリリーの移送を行わなかったせいなのだ。

(俺ならリリーが隠れてたなら、もっと警戒していた)

 移送に携わった魔道士はたったひとりで、リリーのことを知らなすぎた。だからああもあっさり逃げられたのだ。

「……そうですか」

 何か物言いたげに間を置いて、エレンは目を伏せた。彼女も当分、自分と一緒に行動するつもりらしかった。

「これから葬儀みたいだな」

 城の門前には幾つもの布にくるまれた遺体が担ぎ込まれいる様子が見えた。モルドラ砦側で死んだゲオルギー将軍をはじめ、死者達の骸はもう帰ってくることはない。

 今から焼かれるのは砦の中で死んだ者のみだ。

 ほとんどの遺骸が地面にそのままに寝かされる中、幾つか棺もあった。おそらくは高位の貴族かマールベックの古参の臣下といったところだろう。

 簡易のものと思しき白木の棺が並ぶ中、ひとつだけ色合いの違う棺があって花が添えられていた。

「フリーダさん、だな……」

 穏やかな死に顔が脳裏にちらつく。

 誰も手出しできないように、わざわざ足場を脆くしてひとりリリーに挑んだフリーダはよい死に場所を得たらしい。

 フリーダの死を思い出すと胸の奥が重たくなるのは、昔なじみが死んだことへの哀悼でなくリリーが選んだ先を見た気がするからだ。

 彼女にあんな風に傷だらけで満足げに死んでいって欲しくはない。

(お前はさ、本当にいいのか?)

 今、リリーの側にいるはずのバルドへ、クラウスは問いかける。

 綺麗なドレスを着て、ごくごくありきたりな少女のように笑うことができるリリーが、破れたローブを纏い自分のとも他人ともつかない血で汚れ、傷まみれで死んでいくのが本当に正しいことなのか、バルドは考えもしないのだろうか。

(思ってたって、あいつは結局見ないふりするか)

 リリーの意志だと甘えて、自分の都合のいい所しか見ない。

「……葬儀が始まるようです」

 全ての骸が並べ終えられると、ディックハウトの炎将が姿を見せて剣を振るう。

 遺体をくるむ油の染みた布が一瞬で蒼白い炎に包まれ、次々と炎の花が咲いていく。骸が焼ける匂いは一瞬だ。

 次々に灰になって散る。

 風の魔術を使う物も周囲に置かれて、灰は一箇所に集まる。

 最後に燃やされたのはフリーダの棺で、燃え終わるのも当然最後だった。

 彼女の灰も風に浚われて全ての骸が、ひとつの灰の山になる。

 そうしてクラウスからは見えない位置にいたフランツが前に出て、小箱に灰の一部を収めた。

 そして次々と死者の身内や友人らが集まって灰を小箱や壷に収めていく。

「立派な棺に入っても、最後は皆平等だな」

 戦中に死んで個別に埋葬してもらえることは多くはない。酷いときは敵味方一緒に燃やされるくらいだ。

 死ねば魂というのはあまねく全てひとつとなるという。

 だから幾人の灰が混じろうと、自分の知人や身内であるのは変わりないと誰もが自分自身に言い聞かせて大切に連れて帰る。

「フォーベック殿、炎将がお呼びですのでいらっしゃって下さい」

 そして、葬儀が終わって少し後、ぼんやりと灰の山がなくなるのを見ていたクラウスはディックハウト炎将に呼び出された。


***


 戦が終わって三日。リリーはモルドラ砦陥落後にハイゼンベルクが退避していたルベランス城で療養にあたっていた。まだ戦の処理も終わらないので、数日はバルドもここで過ごすということだ。

 幸い傷が悪化することもなく、松葉杖を使えば自力で歩けるのでバルドの補佐は続けている。そして、バルドの補佐代理についていた水将補佐官のカイが皇都に報告に帰った。

「いたた……」

 リリーは執務室の長椅子に腰をおろして、腹の痛みに顔を歪める。

 足の裏は自分で思っていた以上に深く大きかったものの、堪えられないほどでもない。だが、脇腹の傷はふとした瞬間に激しく痛む。

「リー、横になる?」

「ん、そうさせてもらうわ。次の戦までには治ってほしいわ……」

 リリーはバルドの言葉に甘えてゆっくりと長椅子に体を横たえる。我慢できるが、大丈夫とは言えない体はいつもより疲れやすい。

 バルドも辛いならしばらく軍務もしなくていいと言われたが、何もしないで横になっているよりは退屈な軍務の方が気晴らしになる。

(早く、次の戦に行きたい……でも、シュトルム統率官とのより楽しいのかしら)

 戦に行きたいと思っていても、フリーダとの戦闘を思い出して途端にやる気が萎えるの繰り返しだ。

 ずっともぞもぞとした妙な心地悪さがくっついて離れてくれない。

 戦いたい。心の底から楽しめる勝負がしたい。

 そうしたらこの心地悪い感覚はどこかへ行ってくれるのか、それともまた同じように次の戦が本当に楽しいものなのか考えながら過ごすのか。

(どっちにしろ、そんなに戦の機会もないだろうけど)

 ハイゼンベルクは多くの兵をディックハウトに奪われ、砦もなくした。敗戦の時は近い。

 もしかしたら残る戦は物足りなさを溜め込むだけになるかもしれないと考えてしまう自分がいる。

 最良の瞬間を味わってしまったからこそ、大好きな戦をこの後心の底から楽しめなくなるというのは想定外だ。

「リー、部屋で休む?」

 思わずため息をつくと、バルドが側に寄ってきて心配そうにする。

「どこで寝たって一緒よ。だったら、バルドがいる方がいいわ。……バルドは、ゲオルギー将軍とまた戦いたくない?」

 おそらくこれまでで最も強敵だったはずの相手と戦ったバルドはどうなのだろう。

「……ない。一度勝った。十分。リーは、満足していない」

「満足しちゃったから、もう一回戦いたいんだと思うんだけど……」

「他とは戦いたくない? 戦、飽きた?」

「飽きたんじゃないわ。早く怪我を治して、剣も握りたいわよ。終わった後が、嫌なのかもしれないわね」

 戦い終わった後の空虚感を思い返しながら、リリーは首を傾げる。

 自分でもよくわからない感情を、言葉にするのはとても難しかった。自分と同じ戦狂いのバルドにさえ、上手く伝わらない。

(同じ、じゃないから伝わないのかしら……)

 バルドも同じことを考えているのか、瞳が不安に揺れている。

「あたしにも、やっぱりよくわからないの。案外、また戦に出たらこんな変な気持ち、なくなるかもしれないわ」

 バルドを安心させるように、リリーは微笑む。あいかわらず彼は理解し合えないことに怯えている。

(あたしは、ちゃんと剣を受け取って、帰って来たのに)

 何がってもバルドの元へ帰ってきたのだ。それなのに一体何を不安に思うことがあるのだろうか。

 傷が痛んで抱きしめることができない代わりに、リリーはバルドの頭を撫でる。

「すみません、シェルです。中に入っても、よろしいでしょうか?」

 その時、扉を叩く音とそんな声がして、バルドが面倒くさげな顔をして入口へ向かった。

「あ、具合がよくないようでしたら、後にしますけど……」

 そして長椅子に横たわっているリリーを見ると、シェルは怖々と眉間の皺が深いバルドに訊ねる。

「別にいいわよ。あたしは横になってればいいだけなんだから」

 リリーが承諾すると、遠慮がちにシェルが彼女の手首を取った。

 シェルには引き続きグリザドの魔術の解明にあたってもらっている。何やら仕掛けられている魔術の術式が膨大かつ複雑だそうで、まずはそれを書き写す作業から入っているらしい。

「後どれぐらいで終わるの、それ」

「昨日までで五分の一、といったところだと思います……はあ、本物の天才の術式というのはこういうことを言うんですね」

 時々紙に術式を写しながら、シェルが感嘆する。

「バルド、見てないでいいから、今のうちに仕事終わらせて」

 何をしているか分かっていてもリリーに触られるのが面白くないバルドが、促されてすごすごと執務机に戻る。

(戦が終わるのと、全部わかるのどっちが先かしら)

 何を書いているかさっぱり分からないシェルの覚え書きを眺めながら、リリーは目を閉じる。

 自分で思っている以上に疲れていたらしく、そのままぐっすりと日暮れまで眠ってしまったのだった。


***


 もうしばらく帰還を待って欲しいという報告が皇都からバルドの元に届いたのは、戦が終わって四日目の夕刻のことだった。

 南部の防衛の要であるベーケ伯爵家の動向への警戒と、今回の戦での戦果があまりに乏しく大量の離叛者が出たため、北が塞がれた現在最も安全と思われるルベランス城に数日留まっていてくれということだ。

 バルドは寝室でつい先程、寝台の上で眠り始めたリリーを目をやる。

 まだ松葉杖なしでは歩くこともできなければ腹の傷の痛みに苛まれている彼女が、ゆっくりと療養できるのはいいことだ。

 戦のたびにリリーは火傷や刺し傷切り傷をつくってきたとはいえ、自力で歩けないほどの重傷は初めてだった。

 夜も痛みに寝苦しそうにしているので、きちんと体が休めていないのだろう。

 ほんの少し動き回っただけで疲れるらしく、横になったらすぐにリリーは眠る。彼女が帰って来て嬉しいのに、痛みに苦しむ姿に気分が落ち込んでしまう。

 バルドはリリーを起こさないようにゆっくりと寝台に腰掛けて、寝顔が苦しくなさそうかまた確認する。

 眉間に皺は寄っておらず、歯噛みもせずに穏やかな寝息を立ててリリーが眠っているのを見るとほっとする。

(今は大丈夫……)

 リリーの戦が終わってからの様子も今までとは違った。

 勝利して楽しかったと笑う表情はいつも通りだったが、その後には塞ぎ込んだ表情をしていた。

 後悔ではないと、リリー自身も言っていて、自分にも彼女が悔いているとは思えなかった。

 もう一度フリーダと戦いたいという気持ちは、よくは分からない。リリーがどんな思いでいるのか見えない時は、不安になる。

 ここにリリーがいることは、本当にいいことなのか。彼女に再び剣を握らせたことは、正しかったのか。

(知っている)

 拳を強く握りこんで、バルドは自分自身の心を恐る恐る覗き込む。

 答はもう、知っている。

 見ないふりをしているだけで、リリーが傷だらけで帰って来て、戦の終わった後に自分と同じではない感情を抱いているのを知った時にもう答はでていた。

 バルドは固く握りしめた指を今度はそろりと、開いていく。握るよりもずっと力がいった。

 そして開いた掌に目を落としてじっと考え込み、リリーを見ずに寝台から離れた。


***


 ハイゼンベルクの軍司令部は予想以上の損失に悶々としていた。

 勝利を大々的に喧伝しても、敗戦の足音をかき消すのには足らない。

 砦ふたつの損害と皇主自ら率いた軍勢から数多の離叛者が出たという事実が落とす影は、あまりに濃すぎる。勝利よりも敗戦が間際に迫っているということのほうが、民衆に強く印象を残すだろう。

「クラウス離叛で宰相家として栄えてきたフォーベック家もこれで形無しですねー」

 長い軍議の合間に設けられた束の間の休息の中、カイの隣に座る水将のラルスが茶を啜りながら声を弾ませて言った。

「てめえが、宰相嫌いなのは知ってるが、喜んでる場合じゃねえだろ」

 カイは年下の上官の物言いに呆れながら、両腕を組む。

「皇家を蔑ろにする人間はそれ相応の位置にいるべきなんですよー」

「そうかよ。それで、戦勝祝いは結局やるのかよ」

 軍議でも焼け石に水の戦勝祝いを整えてバルドに帰還してもらう方向で進んでいる。

 戦に出陣したカイとしては、あの戦の内容で祝う気には到底なれなかった。自分が見た光景は、負け戦のものだ。

「こういうのは様式美ですからねー。次は総力戦かな」

「そろそろしまいか。……嬢ちゃんが死んだら魔術は消えるっていうのは、結局どういうことなんだろうな」

 神器について曖昧なことしか教えて貰っていないカイはため息をつく。バルドの説明にもならない説明ではまるきり理解出来なかった。

「皇祖様の心臓が潰えれば、魔術も消える。道理は通ってますよ。詳しい事は、皇主様がお戻りになってからですね。さあ、そろそろ無駄な軍議の再開ですよ。寝ちゃおうかなー」

「寝てたら俺が後ろからぶん殴るからな」

 すでに話題が行き詰まり堂々巡りになっている軍議に飽き飽きしているのは、カイも同じだった。

 勝つことは誰も彼もが諦めきっている。口にこそはしないが、どうやって死ぬしか考えていない。

 あるいは逃げ出す算段を始めているところか。

(ラルスは死ぬことしか考えてないな……マリウスの奴といい、死に急ぐことはねえのにな)

 ラルスは軍議よりも皇主の指揮下で戦をしたがっている。バルドに忠誠を誓う者達は皆、皇主のため戦い抜いて死ぬことを何よりの誉れと思っているのだ。

 自分より年下の若者達が名誉の死を遂げたがることに、忠義心の薄いカイはどうしてもやりきれないものを感じてしまう。

 兄が遺した甥もまたそれを望んでいる。戦死した妻はどうだったのだろう。

 ため息をついて、カイは机にへばりついているラルスを軍議へと引っ張って行く。

「あれー、どうかしました?」

 何かあったらしく、議場はざわついていた。

「ベーケ伯爵がご次男と共にいらっしゃっているそうだ。ご息女に会いに来たらしい」

 軍司令部のひとりが、南の護りの要であるベーケ伯爵の来訪を困惑気味に告げる。

「こんな時に城をあけたっていうのかよ」

 聞けば、嫡男に留守を任せていると聞いてますますカイの表情は険しくなる。

「御嫡男は、ハイゼンベルクに忠義立てしているわけでもなさそうでしたよね……」

 ラルスの表情も真剣になっている。

「クラウスの差し金じゃねえか」

「そうですねー。エレン嬢が向かっていた先も南でしたよね。……宰相殿が屋敷に戻られたのですか……。宰相殿の御嫡男をアンネリーゼ嬢が殺害のした件を伯爵に秘密にしてたのばれちゃったかな-」

 忠義心の厚いベーケ伯爵なら娘を自ら糾弾するなり、責任を直に取りに宰相家を訪れたのかもしれない。

「なんにしろ、いい状況じゃなさそうだな……」

 嫌な予感は議場にいる誰もがしていた。しかし、伯爵は軍を率いてきたわけでもなく次男と最低限の共を連れて娘に会いに来ただけなのだ。

 具体的に何が起こるかは予見できず、対処にも困りかねていた。

 そうしている内に、次に飛び込んで来たのはベーケ伯爵の訃報だった。

 フォーベック家の屋敷内で殺されたのだ。

 そして、伯爵を殺害せしめたのは娘であるアンネリーゼだった――。


***


 クラウスは馬車の窓にかけられた帳の隙間から、そっと外の様子を窺い見る。

 ディックハウト領とは言いえ、ハイゼンベルクの光景と代わり映えはしない。戦で廃れた場所もあれば、人が集まり賑わっている場所もある。

「社に近づいてる割には静かだな」

 真向かいに座るエレンに声をかけると、彼女は視線を下に向けたままうなずく。

「負けたことはこちらにも伝わっているのでしょう」

「だけど、ハイゼンベルクの方が痛手が大きいだろ。あれが、ディックハウトの城か。俺らに直接話したいって、十歳の皇主様ってどんな子供だろうな」

 『杖』の社を囲んで築かれたディックハウトの王宮が窓の向こうに見える。

 クラウスとエレンは皇主が会いたがっていると言われ、ここまでやってくることになたのだ。

 実際用があるのは宰相の方だろうとクラウスは踏んでいた。わずか十歳のディックハウトの皇主が自分で政治的判断を下せるわけはない。

 幼くして有能という可能性はあるかもしれないが、ディックハウトの皇主は伯父に当たる宰相の傀儡でしかないだろう。

 王宮についてすぐに、クラウスとエレンは謁見の間に通された。

 そこには雰囲気からして重臣と思われる者達が多く集まっていた。誰もが胡乱な眼差しをクラウス達に向けていた。明らかな警戒心を見せている者もいる。

(見た顔もいるな……)

 数年前に離叛したハイゼンベルクの重臣だった者の姿も見えた。視線が合いそうになると顔を逸らされて、クラウスは思わず苦笑しそうになるのを堪える。

 よほど負い目があるのか、後ろめたいと思うなら裏切らなければよかったものを。

 クラウスがエレンと共に玉座から一番離れた末席へと立たさて間もなく、皇主は現れた。

 背後に母親らしき女性と宰相と思われる男を従えた少年は、ベールで顔を覆い隠していた。

「皇主様の喉はまだ完治していらっしゃらないので、私が代弁をさせていただく」

 そう告げた宰相に、皆が少々不安げな顔をする。どうやら以前から体調を崩していたようだが、顔を隠しているのも病のためだろうかとクラウスは訝しむ。

(あれが、皇太后だろうけど、いやに顔色が悪いな)

 そして玉座の傍らに座る女性の様子が気になった。立ち位置からして皇主の生母であるロスヴィータで間違いないだろう。彼女の顔からは血の気が失せ、今にも倒れそうだった。

 虚ろな様子でうつむいていたロスヴィータが不意に顔をあげて、クラウスはぞくりとする。

 謁見の間にいる者達を見渡す彼女の瞳には、深い闇があった。視線に捕らえられた瞬間、深淵に引きずり込まれてしまいそうだった。

「……皇主様はここにおられません」

「ロスヴィータ!!」

 そしてすっと立ち上がり、ロスヴィータが口元だけで笑いながら、宰相の制止も聞かずに皇主のベールを剥ぎ取る。

 場内が驚きにどよめく中、皇主の顔を知らないクラウスとエレンは顔を見合わせる。

「こ、皇主様はどうされたのですか!?」

 問いただす声が次々と上がって、偽の皇主らしき少年が今にも泣き出しそうな顔で宰相とロスヴィータを交互に見る。

「わたくしのアウレールは死にましたわ。わたくしのアウレールは死んでしまったのです! 最初から皇主様などいなかった! あの子は、あの子はわたくしだけの子だった!!」

 嗚咽と哄笑を入り交ぜながら、ロスヴィータが叫ぶのを誰もが唖然としてみていた。

 はっきりと分かるのは、皇主の崩御。

 跡目がいない以上、これでディックハウト家は断絶されたことになる。

 すなわち、勝利を目前として戦う意義を失ったのだ。

「宰相殿! これは一体どういうことなのだ!」

 糾弾は宰相へと向かう。玉座に座らされていた偽の皇主は玉座から降りて大人達の様子に怯え泣き始めている。

 謁見の間は混乱のるつぼに叩き落とされていた。

 その中で宰相は沈黙を貫き通している。

(どうするんだ、これ)

 部外者同然のクラウスは成り行きを見ているしかなかった。

「兄様、今更足掻いたところで無駄ですわ。アウレールが皇主様の御子と偽って、皆を騙し続けてきたことを自分の口で弁明したらいかがかしら」

 さらなる真実をロスヴィータが口にして、口々に疑問をぶつけていた者達は呆気にとられ、水を打ったようにあたりは静まりかえった。

「……戦は五年前に終結していたはずだったようですね」

 驚きをわずかに表情に現わしながら、エレンがつぶやく。

「無駄な戦だったな」

 クラウスも呆れかえってため息をつく。

 グリザドの真実があろうがなかろうが、この戦がもはや茶番でしかなくなっていたのだ。この五年でも多くの死と裏切りが蔓延していた。

 その全てが無駄だったのだ。

「あの獣に従わねばならんのか……」

 絶望しきった声が上がって、混乱は深まっていくばかりだった。

「いまさら、そんなことができると思うのか! ハイゼンベルクの裏切り者は全て処刑に違いない。我らとて同じだ!」

「ハイゼンベルクの獣に狩られるよりも、先代の皇主様に殉ずるのが道理!」

 ハイゼンベルクの離叛者達は顔を青ざめさせ、ディックハウトの重臣達も意見をまくし立てる。

 誰も彼もが愚かだとクラウスは冷めた思いで、ひとつ息を吸う。

「皇家なんてものはとっくに必要なかったんだよ」

 そしてざわめきに水を差す。

「この中で本気で皇家に忠誠を誓ってる奴は何人いる? ハイゼンベルクを裏切った奴らは我が身可愛さでこっちに来ただけだろう。俺だってそうだ。そもそもグリザドの血統ってだけで、どっちの皇主もまともに政はしてなかった」

 クラウスはディックハウトの宰相に視線を向ける。

「いらないだろう、皇家なんて。まあ、皇家が絶えたら魔術は誰も使えなくなるけどな……」

 皇家が絶えれば魔術が失われるかもしれないという憶測は昔からされていた。だが、それをただの離叛者でなく、長らくハイゼンベルクの実権を握っていた宰相家の跡継ぎが断言したことに一同が驚き、ディックハウトの宰相に真実かと確認する。

「……その可能性がおおいにあると長らく言われていたが、断言できる理由は何もない」

 やっと、沈黙を保ってきたディックハウトの宰相がやっと口を開く。

「最近死んだ、皇太子……ラインハルトが皇祖の神聖文字を解読していたんだ。その中で、皇家の血が絶えたら長くとも百年以内には全ての魔道士が魔力を失うとあったんだ。そうだろう、エレン」

 クラウスは嘘八百を並べ立てて、エレンに同意を求める。

「……ええ。皇太子殿下はそう仰っていました」

 幸い彼女はこの話に乗ってくれたらしい。

「そもそも、魔術が必要か? 戦をするためだけの力に振り回されて、何度も何度も戦を繰り返すだけ。この力は恵みでもなんでもなくて、ただの災いだ。いっそ、もう皇家を滅ぼした方がいいんじゃないのか?」

 クラウスの言葉に揺り動かされているのを表情に出す者は、すでに幾人もいた。

「よろしいですわね。それがいいわ。わたくしはこの先を見るつもりはありませんけれど……。さあ、もう行きますわ。アウレールをいつもでもひとりにしておくにはいけない」

 最初に同意したのは、ロスヴィータだった。彼女はそのまま背を翻すが、誰も止めはしなかった。

 誰の目にもロスヴィータは自分達を謀った悪女でなく、子を失って狂った母親に映っていた。

「……滅ぼして、どうする? まさか自分が新たな王にでもなるつもりか」

 ディックハウトの重臣のひとりがクラウスを睨みつける。

「そんな面倒な立場なんていらない。そもそも血で引き継ぐのが間違いなんだよ。どうせ今までどっちも大臣連中と宰相で政をやってきたんだ。任期を決めて交代でやっていけばいい。なんなら民衆に決めてもらうのも悪くないかもしれないな。どうするにしろ、皇家を絶やさないことには何も始まらない」

 できるだけ最小限の労力で戦をを終わらせる方法は、これしか思いつかなかった。

 戦のない国を永続できるとは思わない。ただ、戦で疲弊しきった数十年は持つだろう。

 この先、リリーが生きていく場所に戦がなければいいのだ。

「戦しか脳のないハイゼンベルクの雷獣に殺されるか、服従するかの道を選ぶのか。それとも新しい自分達の国を作るのか。どうするんだ」

 クラウスが決断を迫って、突然道を失った者達は新たに示された道を選び取るしかなかった。

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