【アニメ・特撮感想】2023年秋期

 ギャグとコメディ、笑いの秋。


 実にギャグコメディ作品に特化した秋である。ほぼ全ての作品が笑いの要素を強く持ちつつも、さらに個々の特色を併せ持って展開されている。何を選んでも何かしら笑えるような作品が多く、鬱とは無縁の三ヶ月となりそうです。




【ギャグ・コメディ枠】

 異世界ファンタジー系を中心に、転生モノ、ラブコメ、旅モノ、現代モノ、完全にギャグのみに特化した作品と多種多様。というか今期のカテゴリーはほぼこれだけ。毎日何かしらのギャグ作品が放送されているお陰で笑いの絶えない三ヶ月となりそうです。




・ティアムーン帝国物語~断頭台から始まる、姫の転生逆転ストーリー~

 ファンタジー系転生コメディ。革命により国を滅ぼされた主人公の王女ミーアが、未来の記憶と記録をもって過去から歴史のやり直しを目指す物語。


 原作小説、コミカライズ共に愛読しているのでアニメ化はどうか……? との懸念もなんのその、これ以上ない最高の形で映像化された本作でありました。何と言っても特筆すべきは主人公ミーアの容赦のない顔芸でしょう。「そうだよコレが見たかったんだよ!」と思わず製作スタッフに感謝してしまうほどにミーアのポンコツっぷりを余すことなく描いてらっしゃる。それでいて原作とマンガの見所はしっかり押さえ、一話内に二話分くらいぎゅっと詰め込まれた構成は見事と言う他ないでしょう。


 またOPED共に曲が良い……。OPは渾身の電波系にて、EDは打って変わってエモめに若干の切なさを加えて仕上げられており、作画の素晴らしさも相まって毎週飛ばせない出来栄えとなっておりました。曲は速攻で買いに行きました。


 こんな形で映像化されたら作者も読者も飛び上がって喜ぶだろう、そんなお手本のような素晴らしきアニメです。今後の展開にも期待。




・君のことが大大大大大好きな100人の彼女

 ギャグ系ハーレムラブコメ。非モテの人生を歩んできた主人公、恋太郎が、高校進学をきっかけに100人の運命の人(一目惚れ即オチ効果付き)と出会い恋に落ちていく物語。


 とにかく突き抜けたギャグ作品である。上記の頭おかしいとしか思えない(褒め言葉)運命の人設定も導入に過ぎず、実にイカレたストーリーの展開から、主人公ヒロイン共に濃すぎるキャラ性によって作品全体を笑いで蹂躙し尽くしている。それでいてラブコメ作品としての見所はきっちり抑えつつ、テンポ良く緩急のはっきりした一話完結型にて物語が進んでいく構成は見事という他ない。


 この上に全ヒロインがもれなく可愛いというのだから、もはや非の打ち所など無いでしょう。試しに原作を覗いてみれば、作画の特徴はきっちり再現しつつ、演出テンポなどなどあらゆる点で描写が強化されており、これもまた理想的な映像化を成し遂げた作品であるかと。強いて言えば、アホすぎるノリと凄まじい勢いについていけない懸念があるくらいか。私個人としては今期トップクラスに期待できる作品の一つとなりました。




・ひきこまり吸血姫の悶々

 ギャグ系ファンタジー。引きこもりクソザコ吸血鬼の主人公コマリが、周囲の推薦により無理矢理将軍の座につかされ、チンピラみたいな同胞共を率いて世界戦争を勝ち抜いていく話。


 んもう出だしからとにかくバカ。世紀末の輩みたいなチンピラ吸血鬼共、戦争のことしか頭にない三馬鹿幹部、隙あらば主人へセクハラ仕掛けるメイド、その全てを率いて戦争を勝ち抜きつつ自分がクソザコであることを隠し通さねばならない主人公コマリと、畳みかけられ積み重ねられたギャグ性が混沌の様相を呈する。


 そして作画がアホみたいに良い。ティアムーン100人の彼女その他作品も押しのけ今期一強に位置するのではと思うくらいよく動く。日常もコメディもバトルもシリアスもジャンル問わずやったらよく動く。それでいて全く崩れない。もうこれだけで見る価値あるのでは? と思わせるほど。作画だけがアニメの評価にはなり得ないが、コレは現代においても一見の価値ありかと。あとこれまたOPが良い……。作画含め何だこのハイクオリティは。fripsideをこんな使い方してるの始めて見たぞ……。




・豚のレバーは過熱しろ

 ファンタジー系ラブコメ。豚に転生した主人公が、心の読めるヒロイン、ジェスと出会い異世界を生きていく物語。


 これもまたある意味吹っ切れたギャグ作品となっており、特筆すべきは主人公とヒロインの掛け合いであろう。豚の思考駄々洩れから展開される流れるようなオタ発言にセクハラの嵐、対するジェスの萌えボイスからさらりとこぼれ落ちる悪意なき罵倒の刃。声優さんの熱演も相まって、セリフに耳を傾けているだけでも爆笑できる内容はボイスドラマとしてさえ機能しているように思う。


 それなりに厳しいジェスの境遇と世界観もあり、ほどほどにシリアスな要素も持ちながらも、主人公ヒロインのラブコメが基本となる模様です。異世界あるあるなチート無双の雰囲気は見えず、これからどう物語が展開されて行くのか非常に楽しみな作品となっております。


 あとこれもまたOPとEDが良いのだよなあ……。こちらは作品の雰囲気とは打って変わって、非常にエモく仕上げられた曲が始まりと終わりを飾っております。どうした今期のギャグ作品。出費がめちゃ嵩むのだが。




・葬送のフリーレン

 ファンタジー系の旅モノコメディ。勇者により平和がもたらされた世界、勇者の死後、彼の仲間であったエルフの魔法使いフリーレンが、世界を旅する物語。


 長寿族を主人公とするがゆえの知人との死別や、旅モノとしての泣き系感動系の要素を持ちながらも、一番の見所はコメディにあるかと。現在を生きるフリーレンやその仲間たち、度々回想されるかつての仲間たちとの旅は、多くが笑い話として語られる。実はものすごい実力者である人物たちも、バカだったりアホだったりする言動が前面に押し出され、追い詰められた世界観や背景を感じさせない明るさでコミカルに描かれる。


 それでいて人情に満ちた心温まる場面や、強敵との遭遇などシリアスに描かれる場面はきっちり締められており、ストーリーや演出上の緩急も大きな魅力となっているかと。これもまた今後の展開を含めて期待の持てる作品となっております。




・婚約破棄された令嬢を拾った俺がイケナイことを教え込む

 ファンタジー系ラブコメ。無実の罪で国を追われた令嬢シャーロットが、魔法使いの主人公アレンに拾われ……という導入から始める物語。


 タイトルがアレなので勘違いされやすいかもだが……、イケナイことと言いつつアレンがシャーロットに教えるのは『人生の楽しみ方』的なサムシングで、内容としては基本的に周囲から何かと虐げられてきたシャーロットの心を救っていく温かなラブコメであります。アレンのCVが杉田さんでシャーロットのCVが早見さんなお陰で余計に勘違いされるかと思いますが本当です。信じてくださいお願いします。


 コメディ寄りの恋愛要素を主軸としながら、作画演出共にとても良質かつテンポもよく、コロコロと変わるキャラの可愛らしい表情に画面から目が離せない。声優陣の熱演も相まって、見ていて全く飽きない、非常に丁寧に作られている作品だと思う。これぞ良作の代名詞か。是非とも最後まで見届けたい作品の一つであります。




・アンダーニンジャ

 現代ニンジャモノ。現代日本においても密かに活動を続けるニンジャたちと、国家を巻き込む壮大な陰謀の物語。


 とは言いつつも、序盤において主に描かれているのは現代を生きるニンジャのなんだかうだつの上がらない妙な私生活と、それを取り巻くコメディである。本筋そっちのけで展開される生々しい日常描写は常にシュールな笑いを誘い、話は何も進んでいないのに何故か面白い。「最初に死体を転がせ」なる創作の王道手法なぞ知ったことかとばかりに繰り広げられるコメディに夢中になる頃には、そもそもどんな話だったのかすっかり忘れていた。


 ある意味では非常に高度な技術にて組み上げられた構成で送られるシュールギャグと、その内に潜む壮大な現代ミステリー。今後の展開に期待である。




【プリキュア】

 カテゴリの存在意義がねえ(一作のみ)。他の作品をギャグと再放送に振り分けたらプリキュアだけ残ってしまった……。そもそもプリキュアって何にカテゴライズしたらいいんでしょうね? 現代ファンタジー? ニチアサ? 女児アニメ? 魔法少女モノ? 教えて偉い人(知るか)。


・キボウノチカラ~オトナプリキュア’23~

 Yes!プリキュア5のその後を描く物語。大人になり、それぞれの日常を営むかつてのプリキュアたちに、再び迫る世界の危機……という本作。原作を履修していない私が語るもおこがましいが、今期良作の一つとして紹介したい。


 いやもう本家プリキュア製作のネジの外れ方はもはや触れるまい。仮にも魔法少女系作品のその後、しかも大人になった後の話というタブー中のタブーを平然と踏み抜いてきた。当時の作品ファンからすればその衝撃は如何ほどのものか……。もしこれが私の好きなシリーズでやっていたらと思うと、色々な意味で震えが止まらない。


 そして面白いのだコレが……。元より大人向けのメッセージ性が多く込められたプリキュアを、後日談として完全な大人向けに仕上げている。子供の頃は夢とか希望とかキラキラしてたけど、大人になったらなったで色々大変だよね、というテーマは実に分かりみが深く、それでいてなお「仕方がない」と諦めてしまうのではなく、決意を新たに前に進んでいく。かつて世界を賭けて戦った少女たちが、成長してもなお失わずにいる輝きを見せてくれるのはまさしく『プリキュア』であろう。


 酒飲んで泥酔するマスコットの醜態とか、××だったり××だったりする元プリキュアとか、凄まじい攻めの姿勢はファンからの反響が恐ろしいものだが、それも含めて楽しく見れている本作。20周年記念として送られる物語がどのように展開していくのか、最後まで見届けたい。




【再放送、続きモノ】

 主に再放送モノ。前回に紹介しているのは、名前だけ書いて感想は省略します。


・ゼーガペイン

 SF系ロボ。偽りや陰謀が見え隠れする世界で、人類の存亡をかけた戦いが繰り広げられる。


 番組表見ながら「いつのアニメだよ!?」と思わず叫んだが何と2006年作品。しかも続編の制作が発表されたことを受けての再放送とのこと。併せて当時の映画も再上映されるということで、これは遅ればせながら履修するしかあるまい。


 2000年代の作品らしく、内容は非常に硬派かつシリアス。何が真実で何が偽りなのか、物語と登場人物を通して問いかけられているようなメッセージ性を序盤からひしひしお感じられる。緻密に練られたのだろう世界観設定の中でどのような物語が繰り広げられるのか、しっかり見届けたいと思う。


 周年記念がきっかけだったりすることは多いが、昔の作品が再放送再評価される流れは今後も是非続いていってほしい。長らくオタクを続けてきて、良い時代になったなあとしみじみ感じる。




・仮面ライダー剣(ブレイド)

 平成一期五作目の仮面ライダー、youtubeにて配信中。現代に復活した不死の怪物、アンデッドの脅威から、人々を守る仮面ライダーたちの戦いを描く。


 ……ある意味ギャグ作品とも言えるほど(オイ)、その手の界隈にて広く認知された本作。ネットミームとして楽しむようになった今とは言え、さすがに当時の内容は仔細に覚えていないので大変ありがたいと思いつつ視聴中。


 いや、コレ結構初っ端からギャグ要素強いな? というかこのネタ一話からだったっけ? 序盤から既にこんな調子だったっけ!? 見れば見るほど驚愕が止まらない。子供の記憶って本当にアテにならねえなあと改めて思いながらも、しかし単なる子供向けやネットミームに収まらない重厚な物語はさすがの仮面ライダーである。毎週二話、シリアスな中に何故か笑えてしまう妙なネタを仕込んでくる本作もまた今期のギャグコメディ枠の一角として推していきたい(やめろ)。


 あの衝撃的な結末は子供心にも突き刺さり、今に続く創作物への趣味性癖としてガッチリ残り続けているものである。ヒーローとしての在り方、その突き詰めた一つをまざまざとして見せつけてくれた本作の物語をもう一度追いかけていきたい。




※以下は過去紹介済みなので割愛。

・ひろがるスカイ! プリキュア

・ゾイド -ZOIDS-

・ウマ娘3期

・魔法使いの嫁

・Dr. STONE





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