第三十九話 そしてピストルの音は運動場に鳴り響く。

「いよいよ体育祭も中盤です。次はプログラム5番、2年種目の2年全体リレーです。選手の皆様は速やかに移動して下さい」


 そう、視聴覚委員の放送が入る。

 クラスの皆が運動場の中央へ向かっていく。


「ほら、こころん! リレーだよ! 一緒に行こ!」


 と、同じクラスのフミに手を引っ張られ、グラウンドの中央の方へと私も向かった。


          *


「パァン!」


 リレー開始のピストルが鳴り、それと同時に第1走者が走り出す。

 第1走者がグラウンドを1周走った後、バトンの受け渡しがスムーズに行われて第2走者にバトンが渡される。

 ……次は私の番だ。

 今の所、私のクラスは2位だ。上手く抜かされないようにしないと。

 私の前の走者は累であり、私は次に累からバトンが渡される。

 現在順位に沿って内側から並ばされていく。

 内側から、男子、私、女子、男子と言った形であり、私と女子の方は開会式で問題を起こした雨宮と走ることになる。

 最悪、男子に抜かされても仕方ないと感じるが、雨宮にだけは抜かされたくない。

 私だって累の事狙ってるから……

 そんなことを考えていると、累がバトンを持って走ってきた。

 そんな累を見て私は少し前屈みになり、左手を後ろに出して受け取りの姿勢になる。

 同時に、隣のクラスの男子が走り出した。

 それを追う形で、私も累から貰ったバトンを左手に持ち走り出す。

 リレーのコースは至ってシンプル、グラウンドのトラックを半周するだけだ。

 男子に、雨宮に抜かされないように走っていると、コーナーに差し掛かった。

 ここで少し曲が……


『ブチッ』


 左足に激痛が走った。

 痛みの余り、スピードダウンをしてしまったが今はリレーの最中。クラスの為に全力を尽くす。


「んー!」


 歯を食いしばりながら、男子と雨宮に抜かされながらも、次の走者にバトンを繋いだ所で私は地面に転げり、意識が遠野っていった。


          *


「春下? 春下!」


 首と足の関節に違和感を覚えながらも、私は目が覚めた。

 私は上方向を向いており、私の目には累の顔が1番に入った。

 前を向いて、一生懸命走る累。

 ってかこれ、浮いてる?

 その後、自分の身の回りを少々ばかり見ると、累にお姫様抱っこされている事に気づいた。


「!? ちょ、ちょっと累? 何やって……っ!」


 パニックになっている所、ついつい力が入ってしまい、左足に激痛が走る。


「春下、大丈夫だから落ち着け。今保健室向かってるから」


 そう言いら類は走りの速度を少し上げた。

 そうした状況に、私はつい——


「ドキドキさせんなよ、バカ」


 と、呟呟くのであった。

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