第三十四話 そして体育祭は始まりを告げる。

「これから、令和五年度、体育祭を始めます」


 熱血先輩がマイクを持ってそう言う。

 ぶっちゃけ、もっとはっちゃけたのを期待してました。

 はっちゃけて欲しかった。

 熱血先輩がそう話した後、視聴覚委員がプログラムを進める。


「続いてプログラム1番、開催の言葉。雨宮さん、青森さん。お願いします」


 呼ばれた……! や、やるの、かぁ。失敗しないように、しないよう……に……。

 そうして俺は立ち上がり、平均台の方へ向かったのだった。


        体育祭前日


「モテたい!!」


 累君がそう、ジャージを荒く脱ぎながらそう言う。

 累君のジャージの下には、文字の書かれた白い服があり、そこには『モテたい』の1文字が刻印されていた。

 

「だったらだったら? アピールする所とかあるってか!」


 作り笑顔をし、累君にそう話しかける。


「無い!」


 ここまでは元々あった台本通り。

 ここからは私の付け加えたアドリブも込している所。

 ここでは私が、生徒に話しかける場面。


「誰か〜、この人モテたいらしいですー。『彼女になってくれるよ〜』ってお友達は居ますか〜?」


 ここでは誰も反応せずに笑いを撮るシーン&累君のメンタルが根こそぎ取られるシーン。


「ドンマイ」


 数秒後、「トン、トン」と累君の肩を叩く。

 少し崩れながら、累君はこう言った。


「ま、まぁ! 彼女欲しいし、モテたいけど? ———……」


 累君がそう、焦りながら言う。

 この後は、台本だと終わりへと向かうシーン。

 だけど、このチャンスは私が貰う。

 ここで言うんだ。『私の彼氏になってくれますか?』って。

 愛の告白って奴だ。

 そしてここで、この気持ちが本当なのだと、証明する。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る