第三十三話 今回の騒動は全て青森累花の不注意で始まった。

「お、先輩今日は早いじゃないですか。熱とかありません?」


 生物部にて。

 今日は体実が無いので早く部室へ来ると、後から来た累花にそう言われる。


「今日体実無かったからだよ。いつも遅刻してる訳じゃねーから、しっかり来る=体調不良みたいなテンプレ作んないでくれ」


「そうですか! ……あれ? こんな所にビニール袋が……先輩、しっかり捨てて下さいよ?」


 そう言って累花が床に落ちてるビニール袋を指差す。


「まって俺それ落とした記憶……」


「痛っ!!」


 そう言って累花はビニールを触るとそう悲鳴を上げ、手を抑える。

 あれはクラゲだよな……んー。

 えぇーっと、クラゲ毒には何が効くっけ……


「累花! 取り敢えず水道へ!!」


 そう言いながら俺は紙コップ片手にトイレへ駆けつけるのであった。


           *


 トイレから戻り、紙コップ片手にさっきの水道場へ行った。

 まだ痛みが引いていない様子だったので、最終兵器を利用する。

 この髪コップの中の液体——これが最終兵器だ。


「まって先輩、これって……」


 紙コップに入った液体を見て、累花がそう震えながら言う。


「これか? これはな、『アンモニア』だ。大丈夫、クラゲ毒にアンモニアは良いらしいからな。安心しろ。痛みはすぐ引く筈だ」


 今思い返してみれば俺の言動と実際に行っていた行為は、場合によってはセクハラだったと思う。

 だけど俺は止まらない。


「ちょっと生ぬるいけど、そこは我慢してくれ」


 そう言って俺は親指を立てる。


「まって先輩、まって、まって…………!」


 そう言うのを無視し、俺は累花に解毒剤アンモニアを掛ける。


「いやぁぁぁぁぁぁ!!」


 その後、累花はきっちり病院へ行ったのだと……

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