第二十二話 ルイルイ、人生初の「アーン」 。

 風呂上がり、待っていましたと言わんばかりに冷凍庫を開ける。

 

「上から2番目、少し奥に……」


 そう、ここに俺のおやつ——チョコミントがある。

 このチョコミント、ただ忘れた訳で有り、めちゃくちゃ賞味期限ギリギリ。

 知ってた? アイスって−16度の中だと消費期限無いらしいよ? ギリギリなんだから要らないか、その情報。

 例のチョコミントを手に取り、食品棚からスプーンを一つ。

 机の上にカップを置き、取り敢えず鑑賞する。

 似た目だけ見ると、毒々しくて食欲湧かねぇな、青色だし。

 そんなことより、冬が何か狙ってるね……


「ん、どうした? その顔」


 俺がそう訪ねると、冬は少し笑う。


「ううん? ……いや、1口頂戴」


 まさかの「あーん」してくれ発言!?

 まてまて、俺はそんなのには動じないぞ……


「あーん、パクっ」

 

 あげちゃった……

 アイスを食べると途端に冬は目を見開く。


「んー! 美味しい! このチョコとミントの絶妙なハーモニーが最高! ……もう1口!」


 冬はそう言って笑うが、俺はもう、あげる気なんて無い。


「いや、あげねぇよ?」

「え〜? いーやーだ! もう1口欲しい!」


 これ以上あげると歯止めが効かなくなるから……もう、あげねぇよ!

 そのまま1口、冬に押されてあげてしまった。


「ん〜! 美味しい! もう1口!」


 パクッ


「ん〜! 美味しい! もう1口!」

「もう1口!」

「もう1口!」


 ……

 …………


          *


「俺の……俺のチョコミント……」


 冬は俺の大切なチョコミントを嬉しそうに食べ、幸福そうな微笑みを浮かべていく内に俺のチョコミントが無くなっていた。


「美味しかったよ!」

「いや、「美味しかったよ!」じゃねーよ……」

「いいでしょ! 別に〜!」

「食べ物の恨み……許さねぇ」


            *


 現在時刻は11時を過ぎていた。今日は疲れたのでもう寝ようかと思う。

 洗面所にて。

 歯ブラシに歯磨き粉を付ける。

 そして洗面所の棚から客人用歯ブラシを取り出す。


「冬〜」

「どうした? ルイルイ」

「ん、ホイ」


 冬がこちらを向いたので、先程手に取った歯ブラシを投げる。


「おっと……ありがと!」

「ナイスキャッチ」


 俺がそう親指を立てると、冬も親指を立てた。


「ナイスピッチング」


            *


 シャカシャカシャカシャカ……

 冬と俺は、何故か向かい合って歯を磨いていた。


「ほーひへは、ひょーひっほひへほ?」

「ふははひ、はひひっへふははははひ」

「ふひふひはひひっへふほ〜?」

「はひへはひひっへふははははへぇ」

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