第十二話 何故か寺田秋先輩はキモかった。
先輩から貰った言葉はただ一つ、「駅で待ってる」
駅で待ってるって言われたってなぁ。
一応バイトは終わった。
一方の先輩はというと、終わる時間は同じだったが、早く準備を終わらせて「駅で待ってる」と言う言葉だけを残して去って行った。
今は先輩が去ってから3分。
俺もそろそろ出るか。
「お疲れ様です」
そう掛けると俺は店を出て行き、駅へと向かったのであった。
*
「っあ、少年。こっちこっち」
駅に着くと、改札の隣にあるコインロッカーで、背丈の高いモデル体型のイケメンが俺に向けての声が聞こえたので、其方に向かう。
茶色いジャケット、黒縁の眼鏡。青いブカブカズボン……おしゃれって奴だ。……やはり敵だな。
そして俺が先輩の所に着くと、先輩はポッケから手を出す。
「じゃあ行こっか」
優しい声が聞こえると、先輩はコインロッカーから離れ、スマホを取り出した。
『ピピッ』
先輩はスマホを駅の改札に
ああ、コレだけで金が吸われていく。
そして俺も先輩をついていくように、ICカードを翳(かざ)した。
『ピピっ』
残高は1340円。後でチャージしよっ。
はぁ。こんなので俺のバイト代が吸われていく。
そして駅のホームに着き、電車を待って居ると、先輩が話し出す。
「そう言えば少年、名前まだだったね。なんて言うの?」
イケメンには名乗らないし、まずお前から名乗れよ。
って言いたい所だが、んな勇気は無いので素直になのる。
「っあ俺は青森累と申します」
「あれ? もしかしてやっぱり?」
急に先輩が声のトーンを上げるので、俺は驚少し引いた。いや、かなり引いた。
イメージと全く違った……それもまたなんかあの人と重なる。
「やっぱり? と言いますと?」
「冬ってわかる?」
冬って冬先輩? 何で先輩が冬先輩を?
「何故冬先輩を……」
「妹だよ、冬は」
「えっ?」
思わず驚く。
その声が大きかったせいか、周りの視線を集めた。
恥ずかしい、恥ずかしい!
「妹ってどう言う事ですか」
さっきの反省を生かし、小さな声で先輩に問いかける。
「僕の、妹」
「あ〜! え?」
やっと理解出来たので、気の抜けた返事をする。
「やっと分かった? そう、寺田冬は僕の妹」
「あ〜! え?」
*
電車の車内にて。
「冬先輩が妹で、秋先輩が兄……と」
「そ。累君の事は良く冬から聞いてるよ、今日も釣れなかったーって」
「釣れなかったーと言いますと?」
「ごめんごめん、何でも無い、忘れて?」
そんなすぐ忘れて? って言われたってねぇ?
「そういや、秋先輩はなんでSowで働いてるんですか? 家から遠いですよね?」
「あー、それの事ね。冬が心配だから付いてきた」
っえ? シスコン?
「やっぱり冬って可愛いじゃん? 変な男が寄って来ない様に付いてきただけだし、なんなら今日シフト合わせたのも、累君を見切る為だよ?」
良いことか悪い事かキッショいシスコンの話か知らんが、俺には秋先輩の話は頭に入って来なかった。
秋先輩がシスコンって言うのが頭を離れない。
「累君? 累君?」
いつの間に秋先輩に話しかけられていた。
「ん、なんですか?」
「正直、冬の事どう思ってる?」
「良い人、リア充、先輩……位です」
「予想通りの子でよかった! まぁ良い! 冬を頼んだよ!」
いや、頼んだよって言われたってあいつ彼氏持ちのビッti……
「んじゃ、僕此処で降りるから! また今度、いつか会う日まで!」
秋先輩は、やけに上機嫌で帰って行った。
マジであの人、敵だけど憎めないな……シスコンだし。仲良く出来そう。
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