古代の世界にタイムスリップした二人の高校生の物語です。この作品の魅力はまず、緻密な描写によって伝わる古代世界の空気感。読んでいると馴染みの薄いはずの古代世界の景色や匂いがリアルに浮かびます。そして、次の魅力に「転移した主人公に特筆すべき能力がない」がある。これと共にありそうでなかった形のすれ違い要素が相まって、リアリティと緊張感に満ちた展開が生まれています。この作者様、もう一作のコメディもそうですが、本当に小説作りがお上手です!
チートなし特殊技能なし。しかも幼馴染の高校生ふたりは別々に古代に飛ばされ、時間も立場も気持ちもすれ違いまくり。いや、どれだけ過酷ですか?限られた力で、それでも残酷な戦いに臨む、ふたりの関係はどうなるのか。最後はハピエンを信じて、彼らの歩みを追うのみです。
まずなにより、戦記物としては文章が読みやすいです。最初はやや難解に思わせる硬派な戦争シーンから始まりますが。それ以降は文体もマイルドになり普通のファンタジー小説のようにサクサク読めます。魅力的な女性キャラも登場しますのでライト向けにも推奨の作品です。