第44話 ブロック分けが決まりました

 俺が闘技場に向かうとすでにルルネたちは受付を終わらせていたみたいだった。


「あ、アリゼさん。遅い」


 ニーナにそう言われ俺は疲れ切ったように答える。


「はあ……しょうがないだろ。野次馬たちに囲まれてたんだから」


 そんな俺の肩を叩きながらアカネが言った。


「気にしちゃダメですよ、アリゼさん! それよりも早く受付済ませましょう!」

「……そうだな。とりあえず行ってくるわ」


 俺はそう言って受付の列に並ぶ。

 流石は大陸最大級の闘技大会なだけあって凄い人の列だ。

 しかもみんな強そうだし。


 三十分くらい経ち、ようやく俺の番が回ってきた。


「次の方ー、こちらへどうぞー」


 そう呼ばれたので、俺はカウンターの前に立つ。


「それじゃあまずは軽く説明からしていきますね」

「ああ、頼む」


 それから受付嬢による闘技大会の説明が始まった。


 この闘技大会はAブロックからFブロックまで分かれていて、それぞれでトーナメントを行うらしい。

 そこで勝ち上がっていけば、決勝ブロックで戦うことが出来る。


 武器差が出ないように統一して木剣。

 使用可能の魔法も初級魔法まで。

 防具などもすべて配布された物を使用するらしい。


 なるほど、実力一筋での勝負ってわけか。

 身体強化系も魔力測定値で常に測られているため、強すぎるものは使えないとのこと。


 しかし魔力量は測れるが、魔力効率は測れないので、魔力操作が上手いやつが強いという構図だ。

 魔力操作は技術なので、これも実力主義の闘技大会では確かに有効だな。


「――そんな感じですが、他に何か疑問点はございますか?」

「いや、無いな」

「それではブロック分けのくじ引きをしてもらいます」


 そしてシークレットボックスを渡され、俺はその中から一枚の紙を取り出す。

 そこにはBブロックと書かれていた。


「Bブロックですね。スケジュールはAブロックが二日後、Bブロックが四日後と二日ごとに行われますので、よろしくお願いします」


 それでもう案内は終了らしい。

 俺は受付を離れると、少女たちのほうに寄っていって聞いた。


「俺はBブロックだったけどみんなは何ブロックだったんだ?」


 そしてそれぞれが持っていた紙を俺に見せてくる。


 ルルネがAブロック。

 ミアがCブロック。

 アーシャがDブロック。

 そしてアカネとニーナがEブロックだった。


「アカネとニーナが初戦で戦うことになるのか。面白くなりそうだな」


 俺の言葉にアーシャは同意するように頷いて言った。


「そうですね。他はバラバラなので決勝までお預けですね」

「しかしここには猛者しかいないからな。勝ち上れるとも限らんぞ?」


 そう言うとミアがグッとこぶしを自分の前で握った。


「そうですよね……。私も頑張らないと」

「私もミアとあまり強さは変わらないから、本気で戦わないとマズそうね」


 ミアの言葉にルルネもそうやる気を出した。

 かくいう俺も頑張らないとマズいかもな。

 実力がもろに出るルールだし、うかうかしてられないかも。


「それじゃあいったん宿を探しに行きますか」


 アーシャはそう提案するが、俺は手を合わせて謝るポーズを取った。


「すまん、宿を探す前に俺は行かなきゃならないところがあるんだ」

「それは構いませんけど、どこに行くんですか?」


 アーシャに尋ねられ、俺は先ほど起こったことを全部話した。

 すると考えるようにニーナが顎に指をあてた。


「なら、私の出番かも。私は魔法に詳しい」

「確かにニーナは役に立つかもしれないな。じゃあ一緒に来てくれるか?」

「もちろん。それじゃあ他のみんなは宿探しを頼んだ」


 ニーナの言葉に渋々と言った感じで頷く他四人。

 そして俺たちは四人と別れると、ナナちゃんと約束した場所に行くのだった。



   ***



 そこはあまり立派とは言えない一軒家だった。

 俺は扉の前についてる鈴をチリンチリンと鳴らす。


「はぁい!」


 扉の向こうからナナちゃんの声が聞こえてきて、扉が開いた。


「あ、おじさん! 来てくれたんだね!」


 やっぱり呼び名はおじさんだった。

 そのことに必死に笑いを堪えるニーナ。

 ……くそう、笑うなよ。


「やあ、ナナちゃん。この女性はニーナって名前なんだけど、凄い魔法使いだからきっとナナちゃんの役に立つよ」

「ニーナさん? それって英雄様の一人、深淵の魔女ニーナ様と同じ名前?」


 俺はそう聞かれぎこちなく頷く。

 しかし彼女が本物のニーナであるとは思いもよらないのか、にへらと笑ってナナちゃんは言った。


「へえ、それは凄いね! いいなぁ、私もニーナって名前が良かった!」

「……ともかく中に入っていいか?」

「あ、いいよ! 入って、入って!」


 ナナちゃんに促され、俺たちは家に上がる。

 靴を脱ぎながらニーナは俺にこう言ってきた。


「やっぱり凄い魔力を感じる。全部彼女の?」

「多分そうだと思う」

「……これじゃあ確かに暴発しても仕方がないかも」


 そんな会話をしていると、奥から母親も出てきてこう頭を下げて言った。


「うちのナナをどうかよろしくお願いします」


 それに対してニーナはサムズアップすると自信満々な声でこう言う。


「任せて、アリゼさんなら絶対に何とか出来る」


 ……結局人任せかよ、と俺は思わず思ってしまうのだった。

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