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感情に揺さぶられながらもドルヲタパーティなるものは盛況のうちにお開きとなった。
まさか課長の家でこんなに楽しい時間を過ごせるなんて思いもよらなかった。
帰りはイチローさんとオルトと今日のことについて話しながら駅に向かった。
ふたりとも上気していて楽しい時間を過ごせたんだなと思った。
それぞれが新しい推し仲間を得たのだ。
イチローさんはむあちゃん推しの子の話をいっぱいしゃべる。
オルトは、くうちゃん推しの母子の話だ。
僕は舞山さんの話を伝えた。
「姪御さんは知り合いだったんだ」とイチローさんが言った。
「そうです取引先の子です。」
「ヲタじゃないんだね」
「はい」
「サブローさんとまぶだちって感じでしたね」とオルト。
「うん、すごい仲良しだったね。しおみさんが見たら嫉妬するよ」とイチローさんがギクリとするようなことをおどけて言う。
「なんか話しやすいんですよ」と返事してその話は終わった。
でも僕の心のなかでは、それとは別の感情が出てきてなかなか引っ込まなかった。
理性だ。必要なのは理性だ。
そう言い聞かせた。
それでもふとん入ってまでその感情は収まらなかった。
やっぱり僕は普通じゃないんだろうか。
朝起きてしおみさんと日課の通話をした。
向こうは、夕方だ。
なんとか理性が勝った。
何事もなかったかのように昨日の話を伝えた。
しおみさんが楽しそう、私も参加したいなあと言った。
日本に戻ってきたときにもまだやっていたら参加してねと返事した。
実際そうなったら理性がちゃんと働くだろうかと余計なことを考えた。
しおみさんはその日のことを伝えてくれた。
昼に食べた初めて行った店のバーガーがおいしくて僕に食べさせたいと言った。
通話では伝わらないもの、味とか匂いとか食感とかをどうにか伝えようとしていろいろ説明してくれた。
ほんとに食べたくなった。でも今は絶対に食べられないと思うと切なくなった。
なぜ僕たちは離れ離れに居るんだろう。当たり前のことを悔しく思った。
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