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僕の推しはなかなか選抜に選ばれないけど、僕の彼女は優秀なアルトサックスプレーヤーだ。
音楽大学を出て国内でライブを中心に活動していた。
もっと上を目指して留学したのだ。
アメリカのボストンにいる。
向こうはもうマスクをしている人はいないという。
ビデオ通話で毎日話をする以外にもいろんな写真を送ってくれた。
確かに誰もマスクをしてない。
替わりにこっちのマスクしかしてない街の様子を送る。
そんなやり取りをしていた。
今日は大学の先輩でこの間優秀なピアノプレーヤーと結婚した館山さんの家を尋ねた。
ふたりの新居は、新婦のみおさんのセンスでモノトーンでシックな装いだった。
黒い革のソファーに座りガラスのテーブルにウィスキーのロックグラスを置いた。
高級ウィスキーで歓迎してもらった。
「寂しいだろ」
開口一番、館山さんがそう言った。
「そうりゃそうです。でも毎日通話してます。」
「そうかあ。寂しいかあ。そんなこと言うなんてお前も成長したな。」
館山さんは僕がなかなか彼女を作れないからいろいろいじられたし、励まされてもしてきた。
「新婚生活はどうです?」
「まあ楽しんでるよ。」
今日はみおさんは演奏で地方に出ていた。
「館山さんこそさみしいんじゃないですか?」
「まあな。慣れたけどな。」
ミュージシャンが妻だとこういうことも我慢しないといけないか。
僕にはまだ結婚とかリアルじゃないけど。
「お前も結婚とか考えてるのか。」
「今は全然です。」
「そうか。まだ若いしな。」
館山さんとそんな年違わないけど。館山さんにかかると僕は相当若いことになる。
「子供とか作るんですか?」
「さあな。音楽活動に制限出るからな。」
確かにそうなのかもしれない。
「あさきちゃんて彼氏居るんですか?」
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