異郷

@yakumoiori

異郷

墓石の下より抜ける夢見れば朝霧濡らす我が血肉在り


首筋に髪か草かは分からねど土と絡んで嘲るごとし


身を起こし息吸えば我が手のひらに芋虫だった塊を見る


薄明の空から降るは始まりを告げる何かで見えず聞こえず


土と岩草木のみある眼前は歩めるならば道かと思う


隧道と隘路の違いいくつかを考えてみるこの歩みにて


森の果て広い空見る頃合いは歩いた道の答え合わせか


灰色のぺったりとしたおうとつが果てを伴い広がっている


魂の無い土地があるというなら今の私の居る場所だろう


彩の無いこの地の中でそれだけが目指せる場所の黒曜の廟


遠目には神聖だったその壁は髑髏のように捩じくれてあり


扉とは人の願いの像(かたち)かと人の背丈の虚ろの前で


沈みゆく感覚がある階段を自分の足で降りているはず


熱は無い亡霊色のろうそくに照らされている歪んだ扉


貝殻を重ねたような扉開け色が腐った空間に行く


押し開けた扉の開くその速さたぶん時間の死にゆく速さ


蛞蝓のような空気の部屋にいる理解(わか)ってみれば「私」の部屋だ


凡庸な住処一角切り抜いた郷愁に目の奥がひりつく


机には残骸じみた写真在りひとしく顔が剥がれ落ちてる


気が付けば自分の手すら見えなくてそっと膝から地に伏していく

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