最強ダンジョン配信者はニセ暴露配信によって追放(BAN)されたので、地方のダンジョンをのんびり巡ろうと思います

小狐ミナト@ダンキャン〜10月発売!

プロローグ


「大人気配信者 ナツキの暴露! 未成年配信者やリスナーとダンジョン内でXX!」


 ネットニュースを見ながら、ベッドの上でため息をついた。

 俺、ナツキダンジョンチャンネルこと大野夏樹おおのなつきは、つい先ほど人生が終了した。

 

<ナツキ最低かよ! 女の子がかわいそう!>

<うわ〜、女の子警察行かないから捕まらないって>

<しかも、ダンジョン内で無害モンスター虐待してたんだろ?>

<通報しよ>

<学校にも凸だ!>

<あいつ、元陰キャだから調子乗ったんじゃね?>

<卒アルやっばw>


 3日前の夜、暴露系配信者「正義のアマミヤ」の配信が行われた。彼は他配信者や有名人の暴露配信を行なって生計を立てていて暴露系界隈ではトップの人気を誇り、今では週刊誌やテレビ局も彼の配信を血眼になって追っているという。


「私、ナツキダンジョンチャンネルのナツキに酷いことをされて……まだ未成年で」

「それはひどい! これが証拠のスクショ!」


 完全に捏造だった。

 だが、人気者のスキャンダルに真実も嘘も関係ない。それっぽい証拠があってみんなが驚く様なギャップがあればどんどんと話に尾鰭がついて、嘘が真実の様に広がって行く。

 


 そして俺は各配信サイトやSNSを永久BANになった。理由は<無害生物に対する虐待、および不快な内容の配信>だった。

 その上、通っていた高校を退学になり、住所もバレて今家族は引っ越しの準備を進めている。

 俺に残ったのは配信で稼いだ金と各ダンジョンを攻略して得た知識と俺だけのスキル<検知>だ。


 俺が生まれるずっと前に世界中に現れたダンジョンという不思議な地下空間。人間を襲うモンスターが生息し、ダンジョンの一番奥にはボスモンスターと呼ばれるより強いモンスターが巣食っている。ただ、ダンジョンの中には人間にとって利益になる新しい植物や動物、そして宝が多く存在し、人間を誘い込む様に口を開いている。

 とある学者の見解では増えすぎた人口を抑制するために世界が進化した結果、弱くよく深い人間を間引くためにダンジョンが現れたとされている。

 人間が初めてダンジョンで手に入れたのは「スキルの実」という不可思議な実。それを食べると一つだけ特殊な能力<スキル>が身に付くのだ。

 瞬く間に栽培に成功した人類は15歳をすぎたらスキルの実を政府から支給され、食べる。

 俺が得たスキルは<検知>という特殊なものでダンジョンの中のトラップやモンスターの気配、次の攻撃などさまざまなものを検知して予測できるものだ。


 検知の能力はダンジョン内においては最強だった。どこでどのモンスターが何をしてくるか、どんなトラップがあるか……。

 俺はダンジョン内のトラップを使ってモンスターを狩り、その力を得ることで最強にのしあがった。その際にやっていたダンジョン攻略配信が大バズり。スキルの実を食ってから1年足らずで最強の冒険者兼配信者になっていた。


 ま、今の俺にあるのは「女の子を無理やりXXした最低のゴミ男」という称号だ。それにしてもあの女、一体誰なんだろう?

 俺は全く女に興味はなかったし、もちろんそういうことだってしてない。

 おそらく、どっかの中堅配信者が女でも雇ってやらせたんだろう。俺はコラボ配信なんかは降らなくてやってなかったし、なんというかイケすかない目の上のたんこぶの様な感じだったんだろう。


 俺のことなんか誰も知らない様な田舎でゆっくりしようか。田舎にもダンジョンはあるからそこをゆっくり攻略して小銭を稼ぎながら旅でもしようかな。

 俺が母さんたちと一緒に行けば、迷惑をかけてしまうしな。しばらくは宿にでも泊まって温泉に入りながら、気が向いたらダンジョンに行ってストレス発散して、いわゆるスローライフでも送るか。


 毎日配信に追われることもなく、SNSでアンチに悩まされることもない。


 逆に、めっちゃいいんじゃね??


 俺はバッグにひとしきりの荷物を詰め込んで装備品をチェックする。一旦は身バレをしなくないので髪色でも変えておこう。銀色にしていた髪を黒く染め直し、それから目深のバケットハットを被った。


 ネットの世界から解放されて、ゆっくり休むぞ〜!


 こうして、俺ののんびり田舎でダンジョン攻略生活が始まるのだ!




 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る