第74話 第一次異世界大戦

 1月18日 AM9時 カリ島


 ザック「じゃあそろそろ働いてもらおうか」


 おら!立て!

 バシっと引っ叩かれ、強引に立たされた


 悠「いてぇんだよ馬鹿野郎!」

 ザック「いいか、お前が言う通りにすれば娘は解放する、だがな、」

 ザックは胸倉を掴みかかった


 ザック「もし攻撃すれば、わかってるな?」

 俺ははぁ、とため息をつき


 悠「わかったって、離せよおっさん」


 ザック「聞き分けが良いな、さぁ連れてけ」

 俺たちは西日が眩しい大きな事務所の外へ出た


 カリ島はロシアの沖にある無人島を占拠し、スカーが乗っ取った大きな孤島である


 ザック「ここにゲートを立てろ」

 ザックが指さしたのは事務所入り口から10m離れた地点の平地だった


 言われた通り俺は異世界、魔国ジーンをイメージしてゲートを生成した

 悠「リンク」


 思った通り、魔国ジーンの市街にゲートが顕現した


 ザック「ここに繋げた状態で固定しろ」


 悠「は?そんなことやったことないぞ」


 ザック「言ったはずだ、できなければ娘もろとも殺す」


 まずい、考えろ、どうやってこいつを固定するのか...


 俺は深呼吸して目をつむった

 イメージするんだ...ここに固定するイメージ...


 悠「やってやる...」


 ビビッ!ゲートから音がした


 本来次第に収縮していくはずのゲートが収縮しない


 成功...したのか?


 ザック「皆、装備しろ。重装備だ。奴らを皆殺しにしろ」


 1時間後、パク率いる500人の中国マフィアの武装メンバーがカリ島へ上陸した


 イザ「ここかぁ、スカーのアジトは」


 イザ「おい、斧貸せ」

 イザは笑顔でそういった


 二ム「はい、兄貴」


 部下「ぎゃあああ!」

 イザは斧を受け取るとブゥン!と部下の脚めがけて振りかざした


 部下の膝に直撃し、部下は悶え苦しんだ


 パク「こらこら、敵地で暴れないの、狙うなら首にしてね」

 パクはジュ!と煙草に火をつけた


 イザ「この斧切れ味悪くないかー?」


 グサ!グサ!と加えて二発切り刻んだ


 部下「ああああああ!!!!」

 部下の悲痛な叫び声は瞬く間に島全体に響き渡る


 イザ「切断するのに三発も切り込まないといけないのか?これから相手にするのは魔法を使う異種族だぜ?そんな武装で大丈夫か?」


 二ム「大丈夫だよ、問題ない。奴らのもともとの耐久力はおれら人間と同じだから、このくらいの強度で十分だと思う」


 イザ「それもそっか」

 イザ達は砂浜を歩き、事務所の前に到着した


 パク「これがゲート、ここから先は魔国ジーンってわけね」


 パクは吸っていた煙草をぽいっと捨てて、トンプソン短機関銃をリロードした


 パク「じゃあみんな、いきましょうか」


 イザ「おい野郎ども、銃を構えろ。虐殺開始だ。女、子供、捕虜、スカー、みんなまとめてぶっ殺せ。皆殺しだぁ!」


 同刻 アルタイル王国 アルタイル城


 クライス「カノン、今までご苦労であったな、これから君に与える最後の仕事だ」


 カノン「はい、クライス王」

 カノンはクリスを失い、絶望しきっていた。とても、王家の仕事など務められない


 復讐に燃えるクライスは兵士を総動員し、カノンと共に記者会見へと向かった


 アルタイル城 中庭


 数十名のエルフの記者たちが中庭の噴水前で待っていた


 クライス「魔国の連中は私の信頼していた友の命を奪いました」


 クライス「海賊やサダベルの抗争で沢山の偉大なる同士を失い、我々は今ここに宣言する」

 クライス「魔国ジーンに宣戦布告であると!」


 クライスの宣戦布告は瞬く間に世界中に広まり、魔国ジーン国王のジーンの耳にも届いた


 国中が見渡せる大きなタワー、そこにジーンがいる

 奴隷となってエルフたちに惨殺される人間の子供や女

 エルフ同士の殺し合い


 魔国ジーンはもはや無法地帯、この世の地獄である


 タワー50階国王室


 人間の皮膚で作られた玉座に居座るのは、黒い眼帯を付けた太った男だった

 ジーン「へぇ、たてつく気か?ゴミの分際で」

 爪をコリコリと鳴らしながらそう言った


 メント?「どうされますか?国王様」


 ジーン「迎え撃つにきまっとるだろうが、当たり前のことを聞くな、ゴミ」


 同刻 魔国ジーン タワー地下

 がぁああ...と嘆き、自身の傷を治癒していたのは、かつて勇者が仕留めそこねて、別時間へと逃走した怪物、魔王グランドの姿だった

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る