第56話 魔法科期末試験 急

 カイラ「最後は俺か、よろしくな、ハイジェ」

 ハイジェ「えぇ、よろしくね、カイラ君」

 ハイジェは冷たい喋り方のためか、友達がいない。だが魔法の腕はぴか一だ

 幼少期に王国の魔法使いに魔法を習っていたためか、学生の中でも魔法の使い方に隙が無いのである


 ラー「この試合を持って、全ての試験は終了する。心してかかるように!」


 ラー「では、はじめ!」


 ハイジェ「呪法、ドール」

 カイラ「呪法...」

 呪法は魔法の中でも鍛錬が厳しく、最も取得するのが難しいジャンルの魔法である

 大量の魔力消費でどんな状況下でも必ず相手にダメージを入れることができる

 防御魔法も透過魔法も、反射魔法でさえ通用しない

 ティード海賊団配下、ヴェンデッタの使用する魔法だ


 カタカタカタ...

 地面から3体の骸骨が這い上がってきた

 ハイジェ「やれ」


 骸骨は一斉にカイラへ襲い掛かる


 カイラ「...」

 ドゴン!

 カイラは無言で骸骨3体まとめて殴り飛ばした


 ハイジェ「集まれ」

 バラバラに吹っ飛んだ骸骨はハイジェの指示で一つに組み合わさり始めた


 カイラ「ほう、なるほど、そういう感じか」

 3体の骸骨は一つに組み合わさり、サソリのような見た目の骨の魔獣に変形した


 骸骨「ぐえああ!」

 骸骨は大きな声で叫び、カイラへ再び襲い掛かる

 カイラ「何度来ても同じだよ」


 ハイジェ「それはどうかな」

 シュン!

 ハイジェはカイラの背後に立った

 ハイジェ「呪法 サイカ」

 ザクン!


 ハイジェの前方から大きな針のような物体がカイラを襲う


 カイラ「ほいっと」

 カイラは素早くその場を走り抜け、脱出した


 ザクン!

 骸骨「ぐぎゃああ!!」

 針が骸骨の魔獣へ刺さり、断末魔と共に消滅した


 カイラ「お前、どうして全力を出さないんだ?」


 ハイジェ「全力を出したら、あなたを殺すことになる」


 カイラ「別に構わないよ、絶対勝つからな」

 ハイジェ「さすがは王国最強ね、でもね、私の魔法を甘く見られては困るよ」

 ハイジェは跪き両手をその場にかざした

 ハイジェ「タイム...トラベル...」


 カイラ「まさか、禁忌魔法か...?」


 カイラ「お前、その魔法どこで取得した。海賊や悪党に頼んで譲渡してもらうくらいしか巻物を手に入れる手段はないはずだ」

 禁忌魔法とは、危険な効果の為、使用が封印されている

 中でも、タイムトラベルは過去や未来の物体を呼び出すことができる。歴史改変の危険があるため王国の地下に封印されている


 この立ち振る舞いと言い、この攻撃パターン


 どこかで見覚えがある...


 カイラ「お前、魔女ヴェンデッタの弟子か何かか?」


 ハイジェ「正解、幼少期にヴェンデッタの見習いとして魔法を教えてもらってたの」

 観戦席ががやがやとどよめく


 悠「まじかよ...」


 カイラ「それが本当なら、君は即刻退学だぞ。ヴェンデッタは現在海賊団員だ。君はそんなやつと手を組んでいたことになる...なぜ今この場で打ち明けた?」


 ハイジェ「この学園のぬるい魔法に飽き飽きしていたの、あの人の元でもう一度共にするわ」


 カイラ「それで?ここからどうする気だ?」


 ハイジェ「タイムトラベル!発動!」

 ビュン!

 カイラの目の前に大きな円形のワームホールが出現した


 そのワームホールの先には、大きな竜が何匹も飛び回る広大な草原が広がっていた


 カイラ「まさか...」

 ハイジェ「強化魔法!ヒート!そして!風魔法 サイクロン!」


 ビューン!とカイラの背後から強風が吹いてきた


 カイラ「俺を過去へ追放する気か!」

 アレン「カイラ!危ない!」

 アレンたちはすぐに加勢しようと武具を構える


 カイラ「来るな!巻き込まれるぞ!」


 ラー「サダベル校長...!」

 サダベル「これはまずいな、私が出る、観客席の生徒たちを逃がすんだ」


 ハイジェ「邪魔させないよ、呪法 ツンドラ!」


 ビュン!ビュン!ビュン!


 ハイジェは手の平から紫に光る光線を連発でサダベルに撃った


 悠「クソッ!」

 俺はとっさに拳銃を構えた


 カイラ「よそ見しない方がいい、もう既に決着がついてる」


 ハイジェ「グはぁ!」

 その瞬間にカイラは神獣リヴァイアサンを呼び出し、ハイジェを大きな口でくわえた


 カイラ「君を逮捕する、禁忌魔法の無断使用だ」


 ハイジェ「...」

 ハイジェはうつむき、喋らなくなった


 カイラ「ラー先生!試合終了でいいですか?」


 ラー「え?あ、あぁもちろんだ」


 数時間後、アルタイル城の兵士20人を引き連れて、ダグが大魔術学校ルーンへやってきた


 ダグ「よぉ、隊長!なんだよ生きてたか」


 カイラ「悪かったな生きてて」


 悠「おい、大丈夫かよ」

 おれはカイラの元へ走った


 カイラ「全く問題ない、それより悠とダグはあの女の護送を監視してくれないか?」


 悠「あいつの護送は兵士たちがやってくれるはずだろ?」


 カイラ「あぁ、でも心配なんだ。ヴェンデッタの弟子となると一筋縄ではいかない気がする。万が一逃げられたら困るしな」


 ダグ「了解だぜ!隊長!俺らに任せな!」


 そうして、波乱の期末試験が終了した

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