第53話 強者達の衝突

 ハッタン城 王宮

 カラカラカラ...


 エルフのメイドが紅茶の入った急須を乗せた台車を押してやってきた


 フロストたちは大きな丸いテーブルに囲むように座った


 フロスト「では、ティード海賊の話を...」


 ドーン!!!!


 クライス「は?」


 クライスが頭上を見上げると

 大窓が割れ、木槌を持った大男が飛んできた


 ドシン!と大きな衝撃音をたて、テーブルの上に着地した

 ???「げははは!海賊の話だってぇ?俺様も混ぜてくれよおお!」


 クライス「ティードのとこの団員じゃないな、貴様別の海賊だな」


 ゲイル「その通り!俺様の名はゲイル!」


 フロスト「お前の仲間が見えないが、少し無鉄砲すぎたのではないか?」


 ゲイル「そいつはどうかな?これが目に入らぬか?王様共」

 ゲイルはコートの内ポケットから生首を取り出した


 フロスト「これは少しまずいな」

 クライス「あれは...この国の...」


 ゲイル「砂の獣バースの首だ!」


 ぴちゃぴちゃとバースの首の断面から赤い血が落ちる


 ダイカン「あれが死んだらこの国の加護がなくなる...微弱な結界しかこの国を守る術がなくなったわけだな」


 フロスト「貴様どうやって、バースの眠る部屋へたどり着いた?大魔法使いサダベルでさえ突破できなかった魔法の警備を」


 ゲイル「そんなもの、俺様がちょちょいのちょいでぶっ壊してやったぜ!」


 砂の獣バースは大きな羊のような見た目で、突如として100年前、ハッタン王国に降り立った。当時のハッタン王国、国王は魔獣や神獣と対話ができる魔法を使い、バースとこの国の警備向上の契約を結んだ。今もハッタン城地下30階層最奥に眠っている


 クライス「お前、さては強いな?」

 クライスはにやりと笑った


 フロスト「油断するな!やつがどんな魔法を使うかわからん!」


 ゲイル「バースト!」

 ゲイルの身体の外側に透明な膜のようなものが出現し、ゲイルの全身を覆った


 フロスト「総員!戦闘配備!」


 兵士「ハッ!」

 フロストは兵士に叫んだ


 その瞬間、ゲイルがフロストの背後に瞬間移動し、木槌を振りかざす


 フロスト「うぉおお!」

 フロストの体はトカゲのような姿へと変貌した


 ゲイル「どらああ!」

 ゲイルが木槌を振りかざし、ドン!と衝撃音が王宮全体に鳴り響き

 フロストは両手で木槌を受けとめた


 フロスト「グッ!なんという力だ...」


 クライス「奴の魔法は物理攻撃の威力を限界まで上げる魔法か」

 ダイカン「それに奴自身の力も絶大だ」


 ゲイル「まだまだぁ!おらぁ!」

 ゲイルが再び木槌を振りかざす

 フロスト「調子に乗るなよ!俺の竜の力もなめるな!」

 フロストは木槌に向かい、殴りかかった


 バン!!


 木槌と拳がぶつかり合い、爆風が辺りを覆う


 ダイカン「このままやつの思い通りにさせるか!」

 ダイカンは薙刀を抜き、ゲイルに切りかかった


 ダイカン「おいおい、冗談だろう」


 ダイカンの薙刀はゲイルの腹に直撃したがまるで切れない


 クライス「なんという防御力だ、おそらく上がっているのは攻撃力だけじゃないな」

 そういうとクライスは剣を抜いた

 クライス「ダイス、ビームで奴を蹂躙しろ」


 クライスの頭上に大きなサイコロの神獣が現れ、マス目が眼球に変化した


 ドーン!


 ゲイル「ぐおおあ!」

 爆発音とともにゲイル、フロスト、ダイカンは後方に吹っ飛んだ


 フロスト「お前、撃つなら言え!」

 ダイカン「相変わらず、大胆な男だ」


 クライス「見ろ」

 クライスはゲイルを指を刺した


 フロスト「さすがに効いてるみたいだな」


 ダイカン「このチャンスを逃すわけにはいかん!」

 フロスト「あぁ!」

 フロストは再び殴り、ドゴーン!という衝撃音と共にゲイルを中庭へとぶっ飛ばした


 ゲイル「ぐはぁああ!」


 ダイカン「行くぞ、炎波!!」

 ダイカンの背後に巨大な溶岩の大波が出現し、ゲイルの覆いかぶさる


 ゲイル「な、に?」

 ゲイル「ぐああああ!あちいいいいい!!」

 ゲイルに巨大な溶岩が直撃し、溶岩が地面に着地した途端溶岩は消滅した


 ゲイル「うわあああああああ!!があああああ!!」

 全身が燃え上がりのたうち回るゲイル


 クライス「目的はなんだ、砂の獣を喰って魔法を受け継ごうとでもしてたのか?」


 この世界の“魔法”は二つの習得方法がある。世界全体に多く存在する様々な魔法のお習得法が描かれた書物の訓練を繰り返すことで習得する方法、そして、習得者や魔獣の肉体の一部を喰い、自身の肉体に魔法を無理やり刻み込む習得法


 ゲイル「その通りだ、奴の魔力と魔法は強力だ。こいつの首を喰えばティード海賊団に勝てる」


 クライス「ティードに勝ちたいのか?」


 ゲイル「この世界の支配者は二人も要らん!この俺様、ただ一人だぁ!」


 ゲイル「転移魔法!サウス!」


 シュン!とゲイルは消えてしまった


 ダイカン「逃げられてしまったか、首も持ってかれた」

 クライス「胸騒ぎがする、この先、大きな戦いが始まる。そんな予感がする」


 ダイカン「お前の予感は当てにならんが、今回はお前に同意見だ」

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