魔導の照らす大地

うさとひっきーくん

序章 決意

いつかのエピローグ 世界の王

「我々は滅ぶことを決めた。しかし、文明は残す。抗いようもない超自然に、抗う手段が一つだけある」


 そういって、この魔導王国の王"テルセム"は横に佇む、自立稼働型魔導具"ネクテム"の方に手をやり、民衆の注目をそちらへ移す。


「これは、この世界に迫る最大の危機、魔導臨界爆発ノッキングダウンに唯一対抗しうる存在だ」


 そう前置きをした後、その魔導具の性能や何故魔導臨界爆発ノッキングダウンに耐えうるのかなどの説明がなされた。


 一通り説明が終わると、嬉しそうに解説していたテルセムの表情が陰る。

 その様子に民衆がざわつき始めたころに、魔導の王はこう告げる。


「正直な話をしよう。私の技術力もってすれば……数人程度ならば、救う事ができる」


 そういうと、民衆は大声でこう叫ぶ。


「ならば、魔導王よ! あなたが生き残るべきだ!!」


 迷いなく、皆が同じような旨の主張を叫ぶ。これまで聞いたことのないほどの音量が、この世界に響き渡る。

 この世界に生きる誰しもが、この魔導王に尊敬の念や恩を感じている。それは、この王がこれまでに成してきたことを踏まえると、誰も否定することはできない。


「はっはっは!」


 王は、自らが開発した拡声具に無邪気な笑い声を乗せる。


「その選択は、たった今消えた。何故ならば……」


 全民衆が、王の声を待つ。

 ある人は家で家族と共に、ある人はその場で、そしてある人は――すぐ後ろで。

 1秒ほどの静寂の後、王の口が開く。


「俺は、お前達の……の王だからだ――」


 数日後、世界は青白い閃光に包まれ、テルセリア歴1356年の長い年月へ、強引に幕を下ろした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る