ラスボスは 腰にも届かぬ 下り坂

ラスボスは 腰にも届かぬ 下り坂


 それからまたしばらくして、春休みに家族旅行に出かけました。その旅行先に大きな室内パークがあったので、そこを訪ずれました。

 そのパークはほとんどのセクションが木製で、ある部分はバンクの下のフラットな部分も木製となっていました。つまりその部分では、坂道で転倒しても下は木。防具を着けていればまず怪我はしないでしょう。

 その坂の大きさは、ちょうど普段行っているパークのバンクと同じくらい。これは克服のチャンスです。これでもかというくらいストレッチをして、身体の柔軟性を高めます。


「コケてもいい、コケてもいい」

 木面の柔らかさをイメージし、恐怖を和らげながらいざ助走。軽くプッシュし、いよいよ前輪が坂道に差し掛かります。

 コクッという感覚とともに、徐々に加速していくボード。そして無事に下りることができました。

「パパ、坂道下りれたじゃん!」

 息子も嬉々としています。それから何度も滑って、とにかく坂道というものに慣れておこうと心がけます。


 旅行から帰って数日後、またいつものパークへ。

 そして例の坂道の前に立ちます。腰の高さほどもない坂道。しかしこれが僕を怯えさせて来た。まるで魔物に立ち向かうように、ゆっくりとプッシュし、坂道へ。つい、ツルツルの路面が見えてしまう。

 いや、木製の坂と大きさは同じ。何も変わらない。あそこで出来たらここでも出来る!

 そう自分に言い聞かせながら、いよいよ前輪が坂道に差しかかり……。

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