side ー 獣人は奴隷? 1
《sideー大馬鹿》
我がダイ伯爵は、王国でも高い地位を持っている。
俺様以上となれば、侯爵家か公爵家、それに王家と言うことになるが。
王家には男子はおらず。第一王女様と第二王女様の二人だけだ。
そして、三大公爵家も全員女性ばかりで、五大侯爵家はブラックウッド家に一人だけ。
上位貴族で男としての生まれたのは僕は二番目に高い地位を持つことになる。
一つ上のブラックウッド家のマクシムも、所詮はおっさんで若い俺様の方が価値がある。
俺様は小さい頃からママに可愛がられてきた。
それは一重に俺様の美貌と、男としての価値が高いからだ。
そして、そんな俺様を崇めるために大勢の奴隷が家にいた。
ほとんどが獣人だ
獣人とは卑しくも、男を求める奴らばかりだ。
そんな存在をどんな風に扱うのか、結局俺様の自由ということになる。
だから、俺様にとって女は獣人は奴隷であって人ではない。
「おい、見ろよ」
俺様には、子爵家と男爵家の男子が取り巻きとしてママが用意してくれた。
奴らの家も獣人を奴隷として飼っている。
「くくく。おいおい、どうして奴隷である獣人が、人様と同じ教室で授業を受けているだ?」
俺様は教室の最後尾に座り、最前列に座る獣人の三人娘を馬鹿にする。
奴らがブラックウッド家の騎士見習いであることはわかっているが、結局はブラックウッド家も獣人を奴隷として飼っているのだろう。
「……」
「おいおい、無視してんじゃねぇよ」
俺様は近くにあったペンを投げつけてやる。
授業中ではない時間になるたびに逃げられるので、今日は自習ということもあって、教室を出て行かないのをいいことにいつも以上に必要以上に絡んでやった。
だが、俺様が投げた物を避けた。
「おい! 何避けてんだよ! 俺様が避けていいって言ってねぇだろうが!」
「そうだ!」「そうだ!」
「拾えよ!」
「そうだ! 拾え」
俺様が一番気になっているのは、猫の獣人だ。
こいつらは犬と兎をやってもいい。
だが、猫だけは渡さない。
所詮、ブラックウッドのお下がりだが、見た目がいいから可愛がってやるのはやぶさかではない。
「どうぞ、ダイ様」
「おい! 誰が俺様の名前を呼んでいいって言ったよ! ご主人様だろ!」
「あり得ません」
「はっ?」
「私にとってのご主人様は、マクシム・ブラックウッド様です。絶対にあなたをそう呼ぶことはありません」
「くっ!」
いいだろう。なら、マクシム・ブラックウッドが認めればいいんだろ? くくく、獣人に執着する男なんているはずがないだろ。
ふん、それに俺様にはお前以上に気になっている獣人がいるんだ。
「まっ、マクシム様! 今日は何を食べるのかにゃ?」
「ガリアさん。そんなに緊張しなくても大丈夫だよ。今日は一緒にランチを食べてくれてありがとう」
「そっ、それは私の方がそうにゃ!」
くくく、バカな話だ。
獣人王国の女王? つまりは奴隷の国ってことじゃねぇか。
「ちょっといいっすか? ブラックウッド先輩」
俺様は、挨拶を兼ねて取り巻きたちとマクシム・ブラックウッド先輩に声をかける。
「誰だ?」
「これはこれは、学園の一年として入学した。ダイ伯爵家のダビデと申します。こいつらはシカ子爵家、ウマ男爵家の男子ですよ」
「ダビデ? すまないが、知らないな。それに今はお客様とランチをとっているんだ。挨拶ならもういいだろ?」
「ちょっと待ってくださいよ。お客様? 獣人王国の女王だとか?」
「ああ、そうだ。ガリアさんとランチを取る約束をしていてな。すまないが先約がいるんだ。遠慮してくれないか?」
獣人の中でもとびきりの上玉だ。
こいつを奴隷にしてしまえば、獣人王国の全てを手に入れらるってことだ。
どれだけ獣人女をめちゃくちゃにしても問題ないってことだ。
「すいませんが、その役目代ってもらえませんかね?」
「はっ?」
「にゃ?」
「いやね。男であれば誰でもいいんなら? 俺様たちでも問題ないでしょ? むしろ、侯爵家のマクシム様では、獣人王国に嫁ぐことできない。なら、俺様たちなら獣人王国に嫁ぐことができます。お互いの利益について考えるなら、俺様たちの方がいいでしょ?」
どうだ? 俺様はマクシム・ブラックウッドについて調べてきた。
クソがつくほど真面目で、女に優しいだけのバカなやつだってことだ。
子供の頃から、騎士の家系で騎士として訓練をして、花婿修行をして無駄な時間を使うようなやつだ。
獣人王国が男を求めてこちらにきていることはわかっている。
正当な理由をつけて、こちらに非がなければ引くはずだ。
「いや、意味がわからん」
「はっ? あんたはバカですか?」
あっ、ヤバい! あまりにも予想外な回答だったから、つい思ったことを口にしてしまった。
「バカではないが、そうだな。お前の言いたい獣人王国にお婿に行きたいから、代わってくれという意味は理解できる。だが、今日は私がガリアさんと約束してランチに来ているのだ。貴様が、ガリアさんと正式に約束してランチを取ればいい。わざわざ私が代わってやる意味がわからん。帰れ。私に失礼なことを言ったことは忘れてやる」
なっ! なんだこいつ?!
俺は調べてきたシカとウマを睨む。
「しっ、失礼」
「ああ、今度は失礼な態度がないようにしろ」
「くっ!」
俺様は奥歯を噛み締めて、その場を後にした。
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