第五十四話 アロマの相談
私は女王様から離れて、多くの女性と話をすることで、世界の広さを知ろうとしている。それはたくさんの世界があり、たくさんの考え方に繋がっているからだ。
最終目標としては領地の安定であり、家族たちを大切にすることだが、私は世界を知りたい。
処刑された理由として、私は人の気持ちがわからなかったからだ。
そして、今も、私は困ってしまっていた。
「おっ、お前のことなんて好きじゃないんだからにゃ! だけど、あっ頭を撫でたいなら、撫でもいいにゃ!」
小柄で可愛らしいライオットの獣人だというガリアさん。
可愛い見た目ではあるのだが、私の後をついてきて話しかけるとこのようにどうしたらいいのかわからない言葉を言ってくるのだ。
こういう時にミーニャや、サラ先輩がいてくれると気持ちを解説してくるのだが、私としてはガリアさんの気持ちがわからない。
やっぱり人の気持ちというものは難しい。
「えっと、撫でてもいいなら、撫でるぞ」
ちょっとビクビクしながら、ガリアさんのフサフサの頭を撫でてあげた。
毛並みがフワフワで柔らかくて気持ちがいい。
「はふ〜」
小柄ながらも可愛いガリアさん。
だけど、何を考えているのかわからない。
「ふっ、ふん。撫でてからと言って我の心を掴んだなんて思うのではないぞ」
「いや、思ってないよ」
「そっ、そうか」
なぜそこで落ち込むのだろうか?
「あなた」
私が戸惑っていると、アロマが助け舟を出してくれるようだ。
一年前よりも忙しくなったことで、アロマはなかなか私の側にいられなくなった。アルファやリシの交代で、ミーニャたちと護衛をしてくれている。
本日は、久しぶりにアロマに時間ができたと言うことで、私と過ごしていた。
そこへやってきたガリアさんに戸惑っていた。
「なんだお前にゃ!」
「マクシムの正妻」
「おい! まだ決まってないだろ」
「私は嫌?」
「嫌じゃないが、公爵家のアロマは簡単に結婚はできないだろ」
「できる。むしろ、反対する人は蹴散らす」
「そんなことできないだろ」
アロマは相変わらず、私を一番に考えてくれて一途なところは変わっていない。
「できる!」
「ちょっと待つにゃ! お前はなんなのにゃ!」
「だから、マクシムの正式な婚約者」
チラリと私を見るので、頷いておく。
すると、大きな胸を持ち上げるように腕を組んで、胸を張るアロマ。
「む〜、なっならば話があるのだ」
「何?」
「ここではちょっと。こっちにくるのだ」
「わかった」
ガリアさんは私から距離をとってアロマを連れて行ってしまう。
教室なので、別に誰かに襲われることはないが、護衛がいないと言うのはサラ先輩に会いにいく時以外では珍しいことなのでソワソワしてしまう。
「そう」
「なのにゃ」
「……」
二人から疎外感を感じて、チラリと視線を向ければ女王様の付き人であるサラサさんと目が合う。
本日は女王様がいないようだ。
「マクシム殿。どうされましたか?」
「あっいや、ちょっとどうしたら良いのかわからなくて、視線を彷徨わせていただけです」
「そうですか、もうアロマは自由なんだから、マクシム様の護衛も疎かにして」
サラサさんがプンプンと怒ってくれて、ありがたくも、アロマに申し訳なさを感じる。
「コラ、アロマ。マクシム様を一人にしてはいけないだろ」
「あっ、サラサ。ごめんね。マクシム」
「いや、私は別に良いんだが」
サラサさんがアロマに小言を言っている。
真面目できっちりとしているサラサさんは爵位は低いが、王女様の周囲で一番の常識人だと思う。
「あっ、アロマは悪くないにゃ! 私が」
「あなたがガリア様ですね。獣人王国の女王様だそうですね。王国のルールは守っていただかなればいけません」
「「すいません」にゃ」
二人がサラサさんに叱られていると、私まで申し訳なさを感じてしまう。
「今後は気をつけてくださいね。マクシム様をお一人にしてはいけませんよ。じゃっ、じゃないとわっ私が、護衛を代わってしまいますよ」
サラサさんがモジモジしながら、アロマに申し出ると、先ほどまでしおらしくしていたアロマが立ち上がる。
「それは無理。マクシムは私が一番愛しているから」
「む〜!!!」
「二番は私にゃ! 私もマクシム様を愛しているにゃ!」
「なっ!」
「えっ?」
「あっ!!!!」
アロマの流れで、ガリアさんにいきなり告白をされたのだろうか?
気づいたガリアさんは顔を真っ赤にして教室から飛び出していった。
「今のって?」
「うん。ガリアさんはマクシムが好きだけど、素直になれないから、私にどうしたら良いかって相談をしてきた」
「えっ! そうだったのですか? 私は余計なことをしてしまいました」
「サラサは悪くない。マクシムを放っておいたのは私が悪い。ごめん」
「いや、それは大丈夫だ」
「それと、ガリアさんはマクシムの前だと恥ずかしくて素直になれないらしい。だから、マクシムから可愛がってあげてほしい」
「良いのか?」
「良い。あれは可愛い」
それは分かる。
ちっちゃくて構いたくなるモフモフは正義だ。
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