第三十五話 友との交流

 今日はアロマが一日ついてくると言うことで、アロマを伴ってプリン君へと会いに行くことにした。

 白衣を来て研究者独特な雰囲気を持つプリン君は、ポッチャリ体型に白衣を着た従者さんを連れている。


「プリン君。ちょっといいかい?」

「やぁやぁやぁ、我が同士のマクシムではないか! どうしたのだ?」

「こんにちは、マクシム様。おぼっちゃまは会えて感激しておられます」


 僕が彼が所属するAクラスに入って、声をかけると教室に残っていた生徒たちの視線を浴びる。

 そんな視線を感じても相変わらずの主従関係に私は笑ってしまう。


「学園に入学して、お互い何かと大変そうだから様子を見にきたんだ。それに、この魔ブックの使い方も教えてもらうと思ってね」

「ふふふ、我に教えを乞うとは称賛に値するな! 最も優れた使い手に学べるのだ感謝するがいい。ア〜ハッハッハッハ!!!」


 自信満々で高笑いをするプリン君。

 教室では、他の生徒の邪魔になるかもしれないと思い、広いカフェに移動してグループシート座った。

 私とプリン君を囲うように、アロマ、アルファが私の隣。プリンの隣に白衣さんとリシが座る。


 プリン君はアロマに観察されて、居心地が悪そうな顔を見せる。


「友よ。彼女は貴殿のなんだ? 先ほどから我をじっと見て無礼ではないか?」

「あ〜、すまないプリン君。アロマ、あまりプリン君を凝視しないで」

「マクシムの友人。見定める」

「プリン君はいい奴だから大丈夫だよ」

「友よ! ぐっ!」


 私の発言にプリン君が目頭を抑え、白衣さん親指を立てている。


「それとプリン君、彼女はこの中で一番位が高いんだ。公爵令嬢のアロマで、私に求婚をしてくれている」

「なにっ!!! 公爵令嬢様に告白されただと!!! マクシム、貴様はリア充爆死しろだったのか?」

「えっと、意味がわからないけど」

「我もわからん。だが、恋人がいるとは」

「プリン君だっているでしょ?」


 私が白衣の女性を見れば、モジモジと腰をくねらせる。

 どうやらプリン君の恋人になることは嫌ではないようだ。


「あっはっはっは! 我に女などいるはずがない! 自分で言うのもなんだが、我は見た目が悪く、変人の部類に入る。好いてくれる女性などいないと思うぞ」


 プリン君の発言に、同じくカフェに来ていた女性たちが一斉にプリン君を見て、和んだ雰囲気で優しい微笑みを浮かべる。

 これはモテているのではないだろか? 私では判断できないが、プリン君の発言を聞こうとしている女性は目についてしまう。


「そんなことはないと思うけど。まぁ、今はそれでいいんじゃないかな? とりあえず、魔ブックの講義を頼むよ」

「あい、わかった! それでは全員魔ブックを出されよ」


 全員と言いながらも、プリン君の視線は私に一点集中されていた。

 女性を見ると緊張して話せないのだろう。

 彼女たちも操作方法を聞いているが、明らかに私に教えたことを、私がもう一度彼女たちに教えている。


 二度手間に見えるが、プリン君の精神を安定させるためにはこれぐらいが仕方ない。


「うむ。それでは説明していく。そのためには魔ブックでは何ができるのか説明していこう」


 そもそも魔ブックとは、昔の魔導書を改良したものであり。

 魔法使いは魔導書に魔法陣を描いて使っていた。


 だが、魔導具が発展するにつれて、魔導書の簡略化と自分能力の視覚化を目的にした魔ブックが開発されたそうだ。

 ただ、学園の開発であったため秘匿性が高く。


 また、魔法はむやみやたらと使うのは危険なため、学園に入学した生徒以外の子供には持たせないように法律で決まっている。


「学園の生徒である以上は成績表が一番気になるかもしれないが。魔ブックは魔導書、図書、記録、通信、計算などができるようになっているんだ」


 ・成績表は、己の能力やプロフィールがわかる。

 ・魔導書は、学園から支給されたものから、個人で購入したものまで保存ができる。

 ・図書は、学園から支給された教科書など(学園にいる間は教科書だけだが、卒業して使う分には資料や本なども保存ができる)

 ・記録は、自身で記入したり、メモを取ることができる。

 ・通信は、魔ブックの成績表に描かれた魔法陣を読み取り合うことで登録した相手と遠距離でも会話ができるようになる。


「但し、昔は記録の中に撮影と音声録音というものがあったんだが、犯罪に利用されたため現在はその機能が使えなくされている」

「犯罪に?」

「うむ。撮影とは、魔ブックで人物や風景を撮ることができたのだが、男性を撮ろうとする女子生徒が多くて男性被害が多くてな。同じく音声も男性の声を録音しようとする女子生徒が多くが、それを気持ち悪いと思った男子が取り外しを要求したそうだ。女性の反発も大きかったが、人権侵害の観点から取り外された」


 男性が少ない王国では、女性たちの欲望も高まっているのだろうな。


「さて、使い方は以上だ」

「ありがとう。この後は男性寮に戻るつもりだから、一緒に帰らないかい?」

「なんと! 友と下校とは良い響きだ。うむ、申し出に応じよう」


 プリン君との会話は私にとっても楽しく、有意義な時間と言える。

 

 プリン君と、私は上位貴族の部類に入るので、男子寮の部屋は三階で両隣は従者の部屋になっている。

 下位貴族や平民であっても、男性には庇護女性が最低一人は従者をつけるように義務付けられているの、従者がいない男性はいない。


 男性の護衛と世話役を兼ねているので、国としても放置して事件が起きるよりは、法律で義務付けた方が安全と判断しての配慮になる。


「アロマ、部屋についた。今日は一日ありがとう」

「うん。明日からも迎えにくる」

「それは悪くないか? それにアロマは本来王女様の護衛だろ?」

「大丈夫、もう一人優秀な子が護衛についているから。それに私やナンシーも上位貴族だから」

「まぁそうだな。わかった。学園になれるまではよろしく頼む」

「任された。それじゃおやすみマクシム」


 そう言って私に抱きついてくるアロマ。

 サファイアと違って、鍛えているのに出るところは出ているアロマは柔らかくて良い匂いがした。


「おやすみ。アロマ」


 アロマを見送り私の寮生活が始まった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る