第十九話 自分磨き

 フロスティーをプリン君からもらったことで、育て方について悩んでいる。

 プリン君からは説明書をもらったので、読んでいると疑問が湧いてきた。


「アルファ」

「はい? なんでしょうか、マクシム様」

「守護虫は生きているのかな?」

「何を言っているのですか? マクシム様。魔導具ですよ?」


 明らかに私の頭がおかしくなったような態度を取られてしまう。


 だけど、プリンくんが用意してくれた説明書を見ていると、生きているのではないかと錯覚してしまう。


 守護虫の正しい育て方を説明するぞ。


 1、魔力の理解を深めよう。

 守護虫に与える魔力は自分の魔力です。

 魔力は主人の成長と深く関連していて、主人が成長することで守護虫も育っていくよ。だから、必要なことなので魔力の勉強をしようね。


「まぁ、これは女性は早い時期にしますが、男性はそれほど魔法を使う機会がないので、検査まではしませんね。マクシム様は、回復と雷をご自身で使われて、幼少期から体を鍛えてもいたので、無属性もご存じです」


 アルファの説明で、属性や魔力の種類については知っている。

 だがそれ以上に主人の成長という部分がよくわからない。


 2、環境整備を整えてあげよう。

 守護虫は、それぞれの虫を模して作られているので、適切な環境を整えることが重要です。守護虫が快適に暮らせるようにしてあげれると好感度をあげることができるぞ。


 3、コミュニケーションをとってあげよう。

 主人とのコミュニケーションは欠かせないぞ!

 言葉だけでなく、感情や思いを共有することで守護虫との絆が深まり、魔力の成長率が上がりやすくなるぞ。


 4、共に成長をしよう。

 主人が成長する場に守護虫を参加させるてあげよう。

 魔物を倒したり、冒険やトレーニングなどの経験を共有することで、守護虫に刺激を与えてあげよう。そうすると守護虫の知識がついて賢くなるぞ。


 5、信頼と尊重を強くしよう。

 守護虫を信頼して、尊重することで、主人の成長と守護虫の成長は相互に影響し合うことになります。


 6、愛情とケアが大切。

 守護虫に愛情を注ぎ、適切なケアを提供することが大切です。

 健康に気を配り、成長をサポートすることで、最高の変態を遂げてくれるでしょう。


 以上のポイントを含め、守護虫の育て方を丁寧に説明した説明書を書くと、効果的な育成が可能となる。


 生きていると動物を飼うように書かれた説明書には、常に一緒にいて愛情を注ぐように書かれている。


「つまりはどこにいく時も連れて歩いていくほうがいいのということだな」

「そのようですね。それにマクシム様の成長にも関与しているのかも知れません。マクシム様が成長される際に、守護虫との関係性次第で成長しやすくなるのかも知れません」

「勉強や訓練はわかるのだが、成長とは身長が伸びたり、歳をとることを言うのだろうか? 魔力の成長もよくわからないな」

「それは私も専門外ですね」

「そうか、ならヴィに聞いてみよう」


 私は日を改めてヴィに質問してみることにした。



 図書館はいつも穏やかな時が流れ、ヴィがその中で独特な時間を過ごしている。


「というわけなんだ」

「なるほど。魔導具。いいなぁ〜」

「プリン君がまた作ってもらえるかも知れないな」

「お揃いの芋虫が欲しい」

「聞いてみるよ」

「ありがとう。それで魔力の成長?」

「ああ」

「わかった。用意する」


 そう言って水瓶にいっぱいの水を入れて持ってきた。


「まずは、この水瓶の水に魔力を注いで」

「これは初めてだな」


 説明を求めるように問いかけると、ヴィが可愛く首を傾げる。


「一般的な属性魔力測定。この水は魔水と呼ばれる水で、魔力に反応して色を変える」

「そんな水があるのか?!」

「あるんじゃない。作るの」


 私は本当に知らないことが多い。

 かつての私が知らないことがたくさん出てきて驚きの連続だ。


 花婿修行では魔法は学問であり、花婿となるものには必要ないとまで言われていた。実際は、ナルシスのように魔法を理解している方が女王陛下が話したい話に合うので、理解が得られたと言うのに。


 私は無知で、頭が硬い人間だったとますます思わされる。


「なるほど。では、魔力を流すぞ!」

「うん。どうぞ」


 私はヴィに言われるがままに魔力を注ぎ込む。

 隣でフロスティーも見つめて応援してくれているような気になる。


「うん。いいよ。マクシム様は、回復と雷、それに風の魔法に適性がある。だけど、水と氷、闇は全くダメ」

「人によって、それぞれに適性が違うのか?」

「当たり前。魔法は精霊や魔素と言う自然の力を借りるの。適性がないと使えない」


 さすがは魔女っ子として色々と勉強しているだけのことはある。


「なるほど、私が知らない知識を得ることで成長したと言えるのかも知れないな」


 自分の成長とは、私は自らの知らないことを知ることで、己を高めることをいうのかも知れないな。

 あまりにも無知な自分が恥ずかしい。


「そう。適性は人によって異なるけれど13属性に特殊属性が合わさる。これから教えていくから一緒に覚えて」

「わかった。勉強の時間を奪ってしまうが大丈夫か?」

「大丈夫。誰かに教えることで、私もまた勉強になる」

「なら、よろしくお願いします」

「はい! がんばろ」

「ああ」


 私は己を知り、世界を知ることで成長していこうと思う。

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