第十二話 奉仕活動 4

 私が集めた孤児たちはお風呂に入り、綺麗な服を着せてもらって、学校とまでは言わないがそれに近い形で机と椅子を用意した。


 今までロクな食事も与えられず、薄汚れた場所で育った彼女たちのために、使われていなかった離れを解放して寝起きができるようにしてもらった。


 生活を子供たちと、世話をしてくれるメイドを三人つけた。

 彼女たちにはそれぞれ、お風呂、食事、寝起き、の管理を任せた。

 

 私は、彼女たちの負担にならないように初日に生活の仕方を教えることから始めた。


 お風呂を炊くためには水がいる。

 水は蛇口から出るが、水を温める必要があり、薪を割り火を焚べて風呂をたく。入る際には体を洗ってから湯船に浸かる。


 孤児たちは水浴びはしていたが、お風呂に入ったことはないので、石鹸の使い方や隅々まで洗うことから始めた。


 食事は、作り方から教えることになる。

 これは私もわからないので、メイドに実践してもらい、常に監視をしてもらうことになった。


 ただ、最初の頃は食材は提供して、メイドやシェフに講義をしてもらって料理を作っていく。ある程度まで作れるようになれば、彼女たちに任せていくつもりだ。


 そして、食べる前には食材に感謝するために「いただきます」と言い。

 そして、食べ終われば、作ってくれた人に感謝して「ごちそうさまでした」という礼儀を教えた。


 寝起きは起きてすぐに自分が寝ていたシーツを剥がして庭へと干しにいく。

 最初はオネショをする子もいたから、洗濯してから干すことも教えた。

 起きた時に歯を磨き、寝る前にも歯を磨く。

 寝る前でも、身だしなみを整え、ベッドのシーツを綺麗にして、「おやすみなさい」と言い合って眠りにつく。


 生活に必要な当たり前のことを、当たり前にできるようになるまで一週間がかかった。


「あっ、あの、マクシム様」


 私に話しかけてきた最初の少女はミーニャという。

 連れて来た子たちの中で一番年上の十二歳。

 猫獣人の娘で、モフモフな毛並みがとっても可愛らしい。

 

「どうしたんだい。ミーニャ」

「マクシム様は男ですか?」


 ミーニャの質問に聞き耳を立てていた他の子達も私を見る。

 年齢は五歳〜十二歳と幅広く。全員が獣人と呼ばれる種族だ。

 実際に見るのは私も初めてだ。

 勉強の中でしか知らなかったことだが、人と何かが混じった存在を亜人と呼ぶ。精霊やドラゴンといった特殊な種も存在するが、王都に住まう亜人は獣人と言われる獣の血を引く娘たちだ。


 モフモフで可愛らしい娘たちは見ているだけで癒しててくれる。


「そうだよ。私は男だ。君たちは子供なので、子供の間に男性に慣れて欲しくて、私の姿を見ていてほしい」

「男性に慣れる???」

「そうだよ。この国には男性が少ないんだ。だから、男性に慣れていない女性が多くいるんだ。だから、君たちぐらいの歳からなら男に触れて居れば慣れることができるだろうと思ってね」


 私は質問をしてきたミーニャの頭を撫でてあげる。

 ミーニャは猫獣人という種族で、獣の耳と尻尾が生えた可愛い女の子だ。


「フニャ〜」


 撫でてあげると凄く嬉しそうな顔をする。

 他の子達も列を作っていくので、全員の頭を撫でてあげるのは結構大変だけど、子供に好かれるのは嬉しい。


 全員で十六名の獣人族は、猫族はミーニャともう一人、他は犬族五、熊族三、兎族六、の計十六名になる。


 それぞれの獣人には特徴があって、猫族は好奇心旺盛で質問をしてきたり、甘えてきたりしてくれる。

 犬族は構ってあげると喜ぶけど、それ以外は規律やルールを守って仲間意識が高い。熊族は体を頑丈で力も強い。食いしん坊ですぐにお腹が空いてしまう。兎族は寂しがりやの怖がりで、六人で固まってすみっこにいることが多い。だけど、私には甘えてくれるので、可愛い。

 

 女性と言っても子供の間は無邪気で可愛い。


「マクシム様! 撫でて」

「私はお膝」

「私は背中!」


 無邪気に甘えてくる子供たちと遊んであげるのは楽しい。

 生活の仕方を教え、勉強を教え、魔法を教える。


 彼女たちは私の言うことを素直に効いてくれて無邪気な存在として私の心を癒してくれる。


「兄様! 私のことも構って欲しいのです!」

「マクシム様、寂しい」


 サファイアやヴィもまだまだ幼いので、獣人の子達と同じように教育を受けてもらっている。最近は獣人の子達に構いすぎていたかもしれない。

 なので、彼女たちには貴族として、その従者として教育があるので、それ以外の時間は獣人の子達と一緒に私の授業を聞いてもらって、夜は少しだけ話をする時間をとった。


 すると、彼女たちから寂しいと言われてしまったので、本日は三人で眠ることにした。


「兄様! 最近、獣人たちを可愛がりすぎではありませんんか?」

「そうかな? う〜ん、彼女たちが大きくなった時に男性に慣れてくれればいいんだけど」

「獣人は見た目が良い子が多い。マクシム様の好み?」

「えっ? 子供だからそんな風にみたことはなかったよ」


 私を挟んで二人と一緒にベッドに入ったのだが、先ほどから質問ばかりで眠らせてくれない。


「兄様、油断しては絶対にダメです。獣人は、普通の女性よりも強い性があると言われています。ですから、油断しないでください!」

「あっ、ああ。わかったよ」

「絶対。約束!」

「ヴィまで。わかったよ。二人に約束だ。私は獣人の少女たちに油断をしない。これで良いかい?」

「良いけど。大丈夫かな?」

「何かあったら私が守る」

「私だって」


 可愛い妹たちに挟まれてやかましい中で眠れたのは深夜になってからだった。

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