不思議9 解明とご褒美
「それで分かった?」
「『半分階段』ですか?」
「そ」
正直昨日はモヤモヤと熱のせいで何も考えられませんでした。
「ヒント無しがいい?」
「では休み時間になったら一つヒントをください」
本当はヒント無しで解明したいですけど、今の私の実力を知りたいですし、何より早く解明して守住さんより先にお願いを叶えたいです。助手さんの。
「じゃあ今の答えは?」
「そうですね」
階段が半分になるということですから数え間違いの線は薄いです。
だから考え方を変える必要があるのかもしれません。
「半分になるのが段数ではないのでは?」
「と言うと?」
「階段だから段数が半分なのかと思いがちですけど、本当は階段の幅が半分とかです」
構造上の都合で幅の違う階段があるのかもしれません。
それなら『半分階段』という名前にも納得がいきます。
「どうですか?」
「違うかな」
「違う理由を聞いてもいいですか?」
「『半分階段』ってどこの階段でも起こることじゃなかった?」
「そうでした」
『半分階段』は特定の階段で起こる訳ではなく、どこの階段でも起こる可能性があると聞きました。
それなら幅が半分の場所があるだと話が合いません。
「残念です」
「シャーリーなら二つヒントを聞けば解けるよ」
「次で解明しますもん!」
助手さんがいじわるを言うので少し不貞腐れます。
「いちいち可愛んだよ」
助手さんがボソッと何か言いましたけど聞き取れませんでした。
そして次の休み時間がきました。
「ヒントはあげるから授業は聞こうね」
「き、聞いてましたよ」
ほんとは階段のことばかり考えていて全然授業を聞いていませんでした。
「テストの補習理由が七不思議とかやめてよ」
「だ、大丈夫です……多分」
中学生の時は赤点ギリギリでなんとかなってましたけど、この学校は私には少しレベルが高いので不安ではあります。
「シャーリーが大丈夫って言うなら信じるよ。それよりヒントね」
「はい!」
「そういえば次移動教室だね」
「そうですね」
「ヒント終わり」
「え?」
確かに次は移動教室ですけど、それのなにがヒントなのか分かりません。
「シャーリって移動教室の時余裕を持って行く派、それともギリギリで行く派?」
「私はギリギリですね。助手さんとお話してると移動教室なのを忘れますし」
助手さんとお話してると時間があっという間に過ぎていつも教室に着くのが最後になってしまいます。
「って助手さんと一緒なんですから知ってるじゃないですか」
「それもそうだね」
「移動教室がヒントなんですよね」
正直全然分からない。
助手さんのヒントは遠回しなのでそのままの意味ではないはずです。
(移動……)
「階段が勝手に移動している?」
「それはほんとに怪談だから」
「ですよね」
「答えたから移動するよ」
「……はい」
もう少し考えたかったですけど、そろそろ移動しないと遅刻になってしまうので考えながら移動します。
移動中に階段を上りましたけど特段おかしいところはなかったです。
そして授業が終わり教室に戻ってきました。
「多分これで分かると思う」
「解明します」
「シャーリーって急いでる時どうする?」
「走ります」
「これ以上のヒントは無し」
(大変です。分かりません)
助手さんの期待を裏切りたくないのに全然分かりません。
「人によっては絶対に分からないことなんだよね」
ヒントは最後と言ってもヒントをくれるのが助手さんの優しいところです。
「移動教室と急ぐと人によるですか……」
(それがもし私の知らないことなら解明出来ないということでしょうか?)
「分からない?」
「そこまできてるはずです」
実際は何も分かりません。
だけど助手さんの期待に応えなければいけません。
「また俺は余計な事を言ったか? 俺はシャーリーが間違えてもいくらだって付き合うからな」
「助手さんが二つと言ったらそれに応えたいです」
そうでなければ私の存在価値が……。
「シャーリーって飛ばない人?」
「え?」
(飛ぶ?)
私は飛んだりなんか出来ません。
そもそも人は飛ぶことなんて……。
「いや、飛べます」
分かりました。
これなら確かに『半分階段』になります。
「教えて」
「はい。分かれば簡単でした。二段飛ばしですよね」
私が最近出来るようになったことです。
それは階段を二段飛ばしで上ること。
そうすると必然的に上る時の階段の段数は半分になります。
そして下りる時は飛ばして下りる人は少ないからそのままの段数になります。
だから上りと下りで段数が半分になるから『半分階段』。
「ですよね?」
「そうだと思う」
「やりました!」
助手さんに沢山ヒントを貰いましたけど、今回も無事に七不思議を解明出来ました。
「ヒントの移動教室ってどういう意味ですか?」
「移動教室が上の階だとギリギリの時二段飛ばしで行くでしょ?」
「確かにそうですね」
「だから次のヒントの急いでる時ってのも同じ理由」
そう聞くとヒントを沢山貰っていることに今更気づきます。
『消える隣人』の時もそうですけど、助手さんは私に甘すぎます。
そこが助手さんのいいところでもありますけど。
「七不思議を解明したら何かご褒美あげる?」
「貰えないですよ。もし貰うとしても助手さんが提示した回数のヒント以内に解明出来たらです」
「そんなこと言われたら次から百回以内とか言うよ?」
「助手さんがそうやって甘やかすから甘えちゃうんですよ!」
私はまだご褒美を貰える程助手さんな期待に応えられていないです。
だからいつか期待に応えられた時はご褒美が欲しいです。
「じゃあ小ご褒美は?」
「なんでそこまでご褒美をあげたいんですか?」
「単純にシャーリーを甘やかしたい。そして可愛い顔を見たい」
「助手さんがそこまで言うならいいですけど、なにをするんですか?」
私も別にご褒美が欲しくない訳でもないので、どうしてもあげたいと言われるのなら喜んで貰います。
「シャーリーがもし俺にご褒美をあげるとしたら何する?」
「そうですね……」
どうせやるなら助手さんの喜ぶことをしたいです。
だけど助手さんの喜ぶことが分かりません。
私がお母さんにして貰って嬉しかったことと言えば、単純に褒めて貰ったり、頭を撫でて貰ったり、抱きしめて貰ったりすることですけど。
褒めるのならまだしも他のは助手さんにすると考えたら少し恥ずかしいです。
「助手さんは褒めるのと、頭を撫でるのと、だ、抱きしめるのどれがいいですか?」
「シャーリーからなら全部嬉しいけど、小だから褒めるかな」
「ち、ちなみにですけど、他の二つをされて嫌ではないですか?」
「シャーリーがしたくてしてくれることに嫌なことはない」
助手さんがキッパリと答えます。
なんだか嬉しい気持ちになります。
「逆に俺がしたらどうなの?」
「助手さんにですか?」
助手さんに褒められるのは当然嬉しいです。
頭を撫でられるのもきっと嬉しいはずです。
抱きしめられるのは……。
「それはもう少し待って貰って」
「どれ?」
「だ、抱きしめるのです」
「じゃあ他二つはいいの?」
私は首を縦に振って答えます。
「じゃあ今回は小だから褒めるだけか。頑張ったねシャーリー、次も一緒に頑張ろうね」
「はぅ」
助手さんはいつも優しいですけど、今のはいつも聞く時より優しい声でした。
なんだか心臓が早鐘を打つようにドキドキしています。
「大丈夫?」
「ひゃい」
(噛んでしまいました)
「かわい」
「うぅ」
今そういうことを言われると恥ずかし過ぎて助手さんの顔を見れません。
「助手さんのバカ」
「可愛すぎか」
助手さんのせいで顔を上げられません。
だから次の授業の板書が出来なかったのも、そのまま眠ってしまったのも助手さんのせいです。
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