第37話:佐々木さんと一緒にお弁当を食べていくと様子がおかしい

 翌日のお昼。


「は、はいこれ。え、えっと、今日の分……」

「うん、今日もありがとう、佐々木さん!」


 今日のお昼も俺は佐々木さんと一緒に屋上にやって来ていた。そしていつも通り佐々木さんからお弁当を貰っている所だった。


 でも気が付けば佐々木さんにお弁当を作って貰う日々が始まってからもうだいぶ結構な日にちが経過しているよな。


(はは、佐々木さんからお弁当を貰える日がこんなにも長く続いているなんてすっごく嬉しい事だよなー!)


 という事で俺は心の中でそんな事を思いつつも、しっかりと佐々木さんに感謝を伝えながらお弁当箱を開けていった。


―― ぱかっ……!


「うわぁ! 今日も凄い美味しそうだね!」


 今日のお弁当もいつも通り彩りの良いオカズが綺麗に並んでいてとても美味しそうだった。


 俺はそんな佐々木さんの作ってくれた美味しそうなお弁当を見てとてもワクワクとしていった。


「そ、そうかな? べ、別に誰でも作れる普通のお弁当だと思うけどね」

「いやいや、そんな事無いって! 佐々木さんだからこそ作れる凄いお弁当だよ! 本当にいつもありがとう佐々木さん! それじゃあいただきます!」

「ん……い、いただきます」


 という事で俺はしっかりと手を合わせてから佐々木さんのお弁当を食べ進めていった。


「もぐもぐ……うん! 今日のお弁当も凄く美味しいね! この唐揚げはジューシーで美味しいし、こっちの煮物は味が染み込んでてお米がすっごく進むよ! うん、美味いよ! あ、こっちも美味いなー!」

「そ、そんなにガツガツと食べなくてもいいわよ。も、もっとゆっくりと食べていきなさいって……ふふ」


 佐々木さんにそんな事を言われたけど、でも俺は我慢する事が出来ずにバクバクとお弁当を食べ続けていった。


 そしてそんな俺のご飯を食べている様子を見ながら佐々木さんは優しく微笑んでいってくれていた。


 でもそれからしばらくすると佐々木さんはちょっと神妙な面持ちになりながら俺にこんな事を尋ねてきた。


「……え、えっとさ、すっごく今更なんだけど……別にいいの?」

「もぐもぐ……うん? 何のこと?」


 佐々木さんは神妙な面持ちで俺にそんな事を尋ねてきた。でも何のことかわからなかったので俺はすぐにそう聞き返していった。


「ほ、ほら、その……最近毎日アンタと一緒に行動してる事が多いからさ……だから私たちってその……噂されてるらしいのよ」

「え? って、あ、あぁ……それって、もしかして……?」

「え、えぇ、そうよ……そういう事よ」


 佐々木さんにそう言われて俺はすぐに察した。


 そういえば夏江にも俺と佐々木さんは凄く仲良いよなって言われたな。という事はクラスの皆にそう思われていても全然不思議ではない。


 そしてクラスの男女が凄く仲良しに見えるって事は……まぁ俺達が付き合っているんじゃないかという噂も出てきてしまっても全然おかしくはないって事か……。


「な、なるほどね。俺達にそんな噂が出てるなんて全然知らなかったよ。でもそんな噂のせいで佐々木さんに迷惑をかけちゃったら凄く申し訳ないよ……」

「い、いや、そんなの……! わ、私は別に彼氏なんていないし、す、す、すす好きな人もいないから別に大丈夫よっ! だ、だから全然気にしないで良いわよ!」

「あ、そ、そうなんだ? そ、そっかそっか。うん、それなら良かった……」

「え? よ、良かったって……ど、どういう事よ?」

「え? あ、あぁ、いや! 何でもないよ!」


 どうやら佐々木さんは今は彼氏もいないし好きな人とかもいないらしい。俺はそれを聞いてホッと安堵した。


(……って、あれ? 何で俺はその話を聞いてホッと安堵してるんだろ?)


 その時、俺は佐々木さんの恋愛事情を聞いてホッと安堵していった理由がわからなくてちょっとだけ首を傾げていった。


「……あっ! で、でもさ! わ、私は別にいいんだけどさ! で、でも、山田が私とこうやって一緒に行動していると、きっと私達が付き合ってるって勘違いしちゃう子がどんどんと増えてきちゃうかもしれないからさ。だ、だから、その……も、もし山田に本当は彼女がいるとか、好きな女の子がいるとかなら……私も申し訳ないなって思ったりしてさ……」

「え? あぁ、そんなの俺も全然大丈夫だよ。俺も別に彼女はいないし……ってか、そもそも彼女なんて生まれて一度も出来た事ないしね。あはは」


 佐々木さんにそう言われたので、俺は笑いながらそんな事を言っていった。すると佐々木さんは……。


「え? あ、そ、そうなの? ふ、ふぅん、そうなんだ。で、でもさ、小学生とか中学生の頃とかに良い感じになった女子とかはいなかったの?」

「いや、そんなの全然だよ。普通に小学生とか中学生の頃は男友達と遊ぶことの方が圧倒的に多かったしね」

「ふ、ふぅん、そ、そっか。山田って今まで彼女とか出来た事ないんだ。ふ、ふぅん、そっかそっか、それなら良かった……」

「うん? 良かったって何が?」

「え……って、えっ!? い、いやごめん、今のはただの独り言だから! だからアンタは気にしなくて良いから!!」

「え? う、うん、わかったよ?」


 そう言って佐々木さんは顔を真っ赤にしながら黙ってご飯を食べ進めていった。なので俺も佐々木さんと一緒に黙々とご飯を食べていく事にした。

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