クラスの女子にお弁当を分けてもらい「旨い!旨すぎる!!」とべた褒めしていたらいつの間にか彼女が出来た話

tama

第1話

 4月中旬のある昼休み。高校二年に進学したばかりの俺こと山田和樹は大ピンチを向かえていた。


―― ぐぎゅるるぅうう……


 俺のお腹が盛大に鳴っていた。大ピンチとはただの空腹だった。


「はぁ……腹減ったなぁ」


 いつもコンビニでおにぎりとか菓子パンを買っているのだけど、今日は財布を忘れてしまい、昼食を買う事が出来なかった。


 友人にお金を借りて購買に行くことも考えたけど、仲の良い友人は部活のミーティングやら委員会の集まりだとかで、皆教室から出て行ってしまっている。


 仕方が無いので俺は空腹を我慢して教室で眠る事にしたのだけど、周りから美味しそうなお弁当の匂いがしていて色々ともう辛すぎる……


(……いや教室で眠るのは無理だわ)


 周りの匂いを嗅ぐ度に余計に腹が減る。そしてこのままだとまたお腹がなりそうで恥ずかしい……


 という事で俺は教室で眠る事を諦めて一旦教室から離れる事にした。うーん、どこか時間つぶしが出来る場所は無いかな……?


(あ、そうだ)


 俺は良い場所を思い出した。この学校の屋上だったら人は滅多に来ないはずだ。


 あそこならきっと静かだろうし、それに昼寝をするのにもポカポカしてちょうど良い気がする。という事で俺は早速屋上に向かった。


◇◇◇◇


―― ガチャン


 屋上の扉を開けて、俺はそのまま屋上に入った。 すると、そこには既に先客として1人の女子生徒が座っていた。


「「あ……」」


 こんな時間に屋上に誰かいるなんて思ってなかったので俺はビックリした。もちろん向こうの女子生徒もビックリしていた。


 その女子生徒は1人で黙々とお弁当を食べていた。俺は周りをキョロキョロと見渡してみたけど……どうやら屋上にはこの女子生徒1人だけしかいないようだ。


「……え? 佐々木さん1人だけ?」

「……わるい?」

「い、いや悪くはないけど」


 その女子生徒は、俺と同じクラスの佐々木佐紀だった。バレー部に所属していて身長は165センチくらいのスポーツ万能な女子で、スタイルは豊満なおっぱ……じゃなかった! い、いやまぁなんというか戦闘力(意味深)は高めの女子ということで。


 髪型は黒髪のポニーテールで、ピアスやネイルなどの校則違反は一切しておらず、真面目な女子生徒なんだろうなという印象がある。


 そんな佐々木さんの性格はサバサバとした性格で、女子からの信頼が厚い子だ。また、男子側からしてもとても話しかけやすい異性ということで、男子からの人気もそれなりに高かったりする。


 という事で俺にとっても、佐々木さんは気軽に話せる数少ない女子友達の1人だった。


◇◇◇◇


「……それでさぁ、最近春香に彼氏が出来ちゃってさ、これからは彼氏と2人でご飯食べたいって今日言われちゃってさ」


 佐々木さんは普段、友達の桜井春香さんと2人でご飯を食べていたらしい。


 でもその桜井さんに彼氏が出来てしまい、邪魔するのは良くないということで、今日は1人で屋上に来てお昼ご飯を食べていた、とのことだ。


「あぁ、そういえばさっき桜井さん、夏江と一緒にご飯食べてたなぁ……って、えぇ!? あの2人って付き合ってるの!?」

「そうそう。 って、え? 山田知らなかったの?」

「し、知らなかったよ! えぇ……なんかショックだなぁ……」

「まぁ春香は可愛いしねぇ。 ってなに? 山田も春香狙ってたの?」

「いや、そうじゃないけどさ。 でもなんか皆青春してるんだなぁって思うと、羨ましくなるじゃん」

「ふぅん? それなら山田も彼女作って青春すればいいじゃん?」

「いやそんな簡単に彼女が出来たら苦労しないでしょ」

「はは、そりゃあそうだわ」


 そんな感じで佐々木さんと他愛無い話をしながら時間を潰していたのだけど、ふと、佐々木さんの食べているお弁当をつい見てしまった。 その結果……


―― ぐぎゅるるぅうう……


「えっ!? な、なに今の音!?」

「……えへ」


 あまりにも恥ずかしかったので、俺は笑ってごまかした。でもそんな俺の態度を見て佐々木さんはジト目で俺の事を見ながらこんな事を尋ねてきた。


「……あ、あのさ、すっごい今更だけど……山田、昼ごはん食べてないの?」

「あ、あはは……いや実はさ……」


 という事で佐々木さんに今日の経緯を説明する事にした。


…………

……


「……はぁ、何やってんのよアンタ」

「あ、あはは」


 俺は素直に全部伝えると、佐々木さんは呆れたような顔をしながらこっちを見てきた。


「……あぁ、でもそういえば確かに山田っていつもコンビニのおにぎりとか菓子パンばかり食べてたね。両親共働きとかなの?」

「え? あぁそうそう。だから昼飯代を貰っていつもパンとか食べてるんだ」

「ふぅん、そうなんだ」

「佐々木さんのは? そのお弁当は親が作ってくれてるの?」

「いや、アタシの家も両親共働きだから。これはアタシが作ってるの」

「へぇ、そうなんだ……って、えぇ!? ま、マジで!?」


 どうやら佐々木さんが今食べているお弁当は自分で作ってきた物らしい。


「す、すごいな……! いや俺には絶対に無理だ……」

「はは、まぁアタシは家から学校が近いから朝時間あるしね。それに料理も好きだからさ」

「へぇ、いや料理好きってのも凄いね! それじゃあそのお弁当は全部佐々木さんの手作りなんだ」

「まぁねぇ」


 佐々木さんは何ともなさげな顔をしてお弁当を食べ続けていた。俺はそんな佐々木さんのお弁当をじっと見つめた。それはとてもとても美味しそうなお弁当だった……ゴクリ……


「……はぁ、ったく、しょうがないなぁ」

「……え?」


 佐々木さんはため息をつきながら、佐々木さんは食べていたお弁当を俺に渡そうとしてきた。

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