薬指にローズマリー
@ReRinne
プロローグ
少女は一人、ローズマリーの丘を歩いた。 勿忘草色に澄んだ空を見上げ、少女の過去であり現在であり未来を見る。
少女はあるプリズムに光る強い思いから生まれた。少女の手はほっそりとして洗いたてのレースのように光り、髪は黒雲母を溶かしたように崇高なものだった。 少女は柔らかなローズマリーの若葉の上に革表紙の本が落ちていることに気が付いた。少女は恋人を見かけたかのように瞳を潤ませてそれを手に取った。 一見、 それは聖書のようにもオッ クスフォード大学に置かれた歴史書に も見えた。金文字で刺繍された立派な表紙を開 くと、こう、書かれていた。
『誓いの言葉』
病める時も健やかなる時も。
喜びの時も悲しみの時も。
富める時も貧しき時も。
死が2人を別つまで
あなたが大好きなことを誓います。
少女はそれを見て少し微笑むと、 拾 ったときと同じくらい唐突にパタリと 本を置いた。
少女の世界には愛が満ちていた。 だからこそ、少女の心はいつでも、冬空 のごとく晴れ晴れとしていた。 愛しいあの子は今、何をしているの だろう――。
少女は一人、ローズマリーの丘を 歩いた。
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