第306話 タコパ
「うんうん」
俺は目の前の光景を見てとりあえず頷く。
「大災害ですな、こりゃ」
進化した体を使いこなそうと四苦八苦してたけど、不意に新鮮な海の魔物の血が飲みたくなって、一人で海にやって来た。
で、どうせなら【音支配】の練習でもやっちゃうかと、気軽に海に向けて結構な出力でぶっ放したのね。
魔力消費なんてないもんだから、まだ体の調整も済んでない事もあって、予想以上な威力になったみたいで。もう大津波よ。えらいこっちゃやで。
なんか地面が揺れてる気もするし、こりゃやり過ぎましたな。
「音ってまあ、振動だもんなぁ。グラグ◯の実を食べた気分ですよ」
あのお爺ちゃんってやばかったんだねぇ。こんなのを気軽に出来るんならそりゃ四皇って呼ばれますよ。
「お。津波と一緒に獲物がいっぱい付いて来てるな」
もし前世でこんなシーンに遭遇したら、死は免れないんだろうけど、全然焦らないな。心が凪である。俺も強くなったもんだ。
俺は体に振動を纏って、津波に突入。
紛れ込んでる獲物をどんどん仕留める。
「うひゃー! これは良いアトラクションだ! 中々の臨場感!」
陸地にどんどん津波が雪崩れ込んでいってるけど、知ったこっちゃないね。この辺はまだ開発してないし、なんとかなるっしょ。主にテレサが気兼ねなく魔法をぶっ放す場所としてしか使われてない。
そのテレサも最近はダンジョンにこもって実験ばっかりだし。
「うぉぉぉおお! でけぇタコ!! 今日はタコパだ!!」
粗方取り尽くしたなと思ったら最後にメインディッシュ。30mぐらいはありそうなタコの魔物が怒り心頭って感じで、綺麗に波乗りしてやって来た。
どうやらこいつだけは、津波に流されて来たんじゃなくて、自分から喧嘩を売りに来たらしい。
「タコパ! タコパ! タコパ!」
「キュルルルル!!」
思ったより強いな。再生力半端ない。何回足を切っても再生しやがる。こっちは食える部位が増えて助かるけど。
さっさと血を抜いたら終わりなんだけど、それで不味くならないかが心配である。結構な量の足を確保したけど、どうせなら余す事なく頂きたい。普通にタコのぶつ切りにしたのを醤油で食べても美味しいし。
「ちょっとずつ血を抜いていくか」
って事で、ちまちまと戦う事30分。ようやく活動を停止してくれた。こいつの血が美味しくて美味しくて。途中で何回も蕩けそうになりました。また出て来てくれないかなぁ。
「それで具体的にはいつ頃攻めるんですか?」
「100年経ったって思ったら。多分後10年〜20年ぐらいだろ? 魔大陸に来た当初は日にち感覚がバグってたから、定かじゃないけど」
眷属達でたこ焼きを突っつきながら話をする。ヴェガがたくさんの腕を器用に使って、ぽんぽこ焼いてくれるんだ。あいつはたこ焼き屋界のエースになれるぞ。凄い勢いで焼き上がっていくからな。
「竜王へ許可は取ったんですか?」
「いや。言ったら止められそうだから言わない」
流石に7カ国だもん。止めるでしょ。行動に移したらすぐにバレるだろうけど、怒られる前にさっさと退散する所存です。
もし鉢合わせたら仕方ない。その時は潔く喧嘩を売ってやる。まあ、負けるだろうが。【傲慢】さえ通じればワンチャンって感じかな。
逃げるのもありだけど、竜王とどれくらい実力差が離れてるのかも知っておきたい。多分殺されはしないでしょ。
「向こうを攻める前に一通り孤児を攫っておきませんか? どうせ死ぬのなら、こちらで有効活用しておきたいです」
「なるほど」
それはありだな。まだうちの国民は10万人に届いてないからなぁ。産めや増やせやと頑張ってるんだけどね。歴史の浅い国なもんで。ほぼ0からのスタートだったし、仕方ないですな。
「なら、ちょこちょこ隙を見て攫うか」
「ええ。お願いします」
攻めるまでの暇つぶしが出来たな。
体を慣らしつつ、しっかりと誘拐していこう。もう誘拐に慣れすぎてベテランの域に達してるけどね。
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はーい。今章は終了です。お疲れ様でした。
レト君が進化して王になりましたよって。ここまで長かったですねぇ。
で、次章はスパッと時間を飛ばして、魔王蹂躙編です。嵐のように人間大陸を荒らし回っていきますよー。あと、残りの魔王も登場予定です。フェンリルとフェニックス。いよいよですなぁ。
ではではまた次章で〜。
他の作品も良かったらお願いしまーす。
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