第293話 ですわ
「ですわ!」
「キュルル!」
「何があったんだ?」
ヴェガのロマン進化をある程度確認してから城に戻ってきたら、ローレライがですわですわって言いながら城を走り回っていた。
パトリックはいつもの様にローレライの後ろからついて行ってるだけだが、この急に出て来たですわ口調に戸惑ってしまう。
ローレライのお世話をする事に生き甲斐を感じている天使のメイドの一人に話を聞いてみると、今日読んでた本のお姫様の真似をしてるらしい。
ノックス魔帝国は人数も増えてきて、ようやく文化ってのが少しずつ育ってきた。本を書くのを仕事にしてる奴もちょこちょこ出てきて、人間大陸の方にはない本ってのも結構ある。
面白そうなのは主にテレサが仕入れたりしてるんだけど、その中の一つにローレライに刺さる作品があったんだろう。
今も俺が見た事ないようなお姫様ドレスを着て、ですわですわつってお姫様ごっこをしている。
「あのドレスは? あんな服見た事ないんだけど」
「私達メイド隊が丹精込めて仕立てました!」
「あ、そう」
鼻息荒くあのドレスについて説明してくれる天使メイド。素材も贅沢で云々、ウェインにも協力を仰いだ云々と、それはもう凄い熱意で説明してくれた。
「レト様ですわ!」
俺が引き気味に対応しながら、どうやって逃げ出したものかなと考えてると、ローレライに見つかってしまった。
てけてけーとこっちに走って来て、何か期待するような目で俺を見てくる。
「良く似合ってるぞ。お姫様みたいだな」
「ですわー!!」
ぴょんぴょんと跳ねて滅茶苦茶喜んでる。俺の対応は間違ってなかったらしい。
そこから読んだ物語のお姫様がなんたらと、熱く語ってくるのを聞きながら、最終的には姫騎士になるんだとか話に発展した。
まあ、やりたいようにやってくれたまえ。
子供のうちは色んな事に興味を持つもんだ。ローレライの年齢はもう結構おばさんだけど、それは言わない約束だよ? 良いね?
因みにローレライのお姫様ブームはすぐに終わった。いつの間にかですわ口調でも無くなってたし、違うのに興味が出たんだろう。
単純に飽きただけかもしれないが。
ですわですわ言いながらはしゃいでるローレライも可愛かったんだけどな。
「サマーがついてくるのは珍しいな」
「異能を使いこなすなら実戦あるのみじゃからの。ようやく能力の一端は理解出来てきたところなのじゃ」
ローレライのお姫様ブームが去った頃。
今日も今日とて蟲領域で狩りを頑張ろうと思ってたら、珍しくサマーがついてきた。
あんまり積極的に戦うタイプじゃないし、いつもはミシェルと一緒に学校の先生をやってるんだけど。
いつの間にか二人が校長みたいな感じになってるんだよね。まあ、丸投げしてるし、二人がそれで楽しいなら良いんだけど。
それはさておき。
サマーの能力はちょっと特殊というか、能力を使いこなすのに時間がかかるタイプなのだ。
学校で指導しながら自分の研鑽と忙しいんじゃないのと思ったけど、サマー自身は急ぐ事なくゆっくりやっていた。で、今日はその能力の一端を見せてくれるらしい。
「じゃ、お願いします」
「任せるのじゃ!」
蟲領域に到着して、早速実演。
サマーが紫色の魔力を放出すると、バタバタと蟷螂が倒れていく。見た感じ寝てるだけではと思った瞬間、蟷螂の生命反応がどんどん消えていく。
「これが妾の【虚飾】の能力の一部じゃ!」
「どういう事? なんか寝たと思ったら死んだんだけど?」
「簡単に説明するとじゃな、夢の中で起きたことを現実に反映させる感じじゃ! 妾もまだ完璧に理解してる訳じゃないのじゃが…」
サマーの【虚飾】は寝てる相手の夢を操作出来るらしい。で、夢の中で起きた事を現実にも反映させると。
まず寝かさないといけないプロセスはあるけど、普通に強いんじゃなかろうか?
「今回は夢の中で死んだから蟷螂も死んだという事じゃの」
「何それ、強すぎ」
夢に入り込めさえすれば、サマーは無敵らしい。
「レト様には入り込めなかったがの」
「何? 殺そうとしたの?」
「そんな事する訳なかろう。夢ならレト様にいつも負けてる夜の聖戦で勝てるかと思ったのじゃ」
夜の聖戦って。
あれはそんな神聖なものじゃないんだけど。夜の大戦争ですよ。俺は毎回決死の覚悟で挑んでるからね。最初は楽しいんだけど、最後の方はへとへとだし。
「なんかサキュバスってより、夢魔って感じだな」
何が違うのかあんまり分からんけど。どっちもエロい感じでしょ、知らんけど。
一緒なのかな? その辺あんまり詳しくないので分かりませんよ。
「使いこなせば寝かせる必要もないと思ってるのじゃがな。最初から幻術で巻き込む感じでなんとかならんかと思ってるところじゃ」
「そうなったらサマーは更に強くなるな」
「魔力消費が激しいのじゃ。そう連発する事は出来ないかの」
まあ、その辺は魔力を増やせば解決するでしょうよ。魔石を食べなさい、魔石を。
微々たる量しか増えないけど、チリツモですよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます