第2章

1節.零とみずな

第52話.零の同期

 ミックスライブ生として活動を開始して、少し時が流れた。


「祐希。今思ったんだけど、僕と同時期にデビューした個人Vっていないの?」


 夏休みまで、あと2週間を切った日の金曜日。今は祐希と途中まで一緒に帰っていて、その途中で僕はふと気になったことを祐希に聞いてみる。


 祐希はちょっと眉をひそめながら答える。


「急にどうした」

「いや、なんか急に思っただけ」

「……1人いるにはいるけど」

「あ、そうなんだ! 帰ったら見てみようかなぁ」

「……最終的に見るかを決めるのは凪だが、俺は見ないことをおすすめしておく」


 祐希らしくない険しい表情を顔に浮かべながら、真剣な様子で僕に伝えてくる。いつも騒がしい祐希にしてはめちゃくちゃ珍しい。


「……祐希がそんなになるのは珍しいね。どんな人なの?」

「だってあいつは……いや、直接見てもらったほうが早いかもな。今日凪の家大丈夫か?」


 いつもなら僕に聞かずに入ってくるのに。でも、そのくらい真剣になるってことなのかな……。


「ん、今日は大丈夫」

「おけ。んじゃ、着替えとか終わらせてから行くわ」


 そうして、僕は少し不安な気持ちが残りながらも家に帰った。






     ☆






 家についてから、緊急の用事がないことを確認していると、チャイムがなった。もちろん来たのは祐希。


「悪いな、急で」

「いやいや、それは全然いいんだけど」


 祐希は急に来たことで謝るなんて初めてじゃない?


 まぁ、今はそんなこと言える雰囲気じゃないけど。


「それで、僕の同期ってどんな人なの?」


 そう聞くと、祐希はスマホでその人の動画の準備をしながら教えてくれる。


「凪はマジで噂すら聞いたこと無いのか?」

「ない……と思うけど……」

「んじゃ、まず始めにそいつの名前はみずな。女性VTuberだ。詳しい年齢はわからんが、どうやら中学生らしい」

「中学生? りーは音楽関係があったり、優菜は世界記録もってる。深空はイラストレーターだからそんなに表立ってないからまだわかるとして、完全に新人の人が中学生なの?」

「みたいだぞ。……まぁ、本人の希望じゃないかもしれないんだけどな」

「え?」


 それってどういう……。


「っと、準備できたぞ」


 祐希が意味深なことを言ってたけど、とりあえず一旦置いておく。


「いいか? 今からみせるけど、凪は絶対驚くし、なんなら批判もするかもしれない。気持ち悪くなるかもしれない。それでもいいのか?」


 普段は多少口が悪くとも、なんだかんだで優しい祐希がそこまで……。


 まぁでも。


「どんな人でも、僕の同期だからね」

「……はぁ。ちょっとは諦めてくれねぇかなとも思ったけど、人思いな凪が見捨てるわけないか……。んじゃ、今から流すのがこいつ、みずなの初配信だ」


 そう言って、祐希は僕にも画面が見えるようにしてきた。











《あとがき》


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