第37話.事務所からのDM

 5月下旬という少しずつ時期になったけど、だんだんあたりが暗くなってきた。気づいたら、もうすぐ7時になろうという時間だった。


「今日はありがとね。特に凪くんは、急に家におじゃましちゃって……」

「こちらこそ、アニカー楽しかったよ! またできたらしようね!」


 ……あの天使と呼ばれてるみのと陰キャの僕が、タメ口で話しているなんて誰が想像しただろうか。


「みの。わかってるとは思うけど、学校では口調に気をつけてな?」

「大丈夫です。今までみたいにこんな感じで話せばいいですよね?」

「……そもそも、話すだけすっごい目立っちゃうんだけどね」

「そこは気にしちゃ負けです!」


 そういって微笑むみのを見ていると、僕達は苦笑いを浮かべた。


 ……学校で天使って呼ばれる理由がよくわかったよ。


 そしてなにより、身バレしなくてよかったぁ!






     ☆






 2人が帰ってすぐ、机においていたスマホが震えた。なんだろ?


 画面を開いてみると。


〔そういえば、さっきみんなでアニカーしてたときに、なんか事務所からチャット来てたぞ。レース中だったから、みのが気づく前に俺が通知切っておいたけど。ほら、凪が一回だけ俺に勝ったときのレース中に〕


 さっき別れたばかりの祐希からだった。


 ……え、マジで? なんで事務所から?


〔それはほんとに助かりました……。っていうか、あの勝利って祐希が止めてくれたから勝っただけ……?〕

〔もちろん。俺がただの勝負で凪に負けるわけがないだろ?〕


 いや、そうだけどさ? あれ、すっごい嬉しかったのに……。


〔まぁいいや。教えてくれてありがと〜!〕


 ありがとっ! という言葉のついたスタンプも送って、僕は事務所からのチャットを開く。


 僕が祐希に勝ったときか……1時間くらい前かな?


 ミックスライブからのチャットにはすぐに返信できない呪いでもかかってるかもしれないなぁ。


 僕はみのが来る前に作っていた肉じゃがを温め直しながら、チャットの内容を見る。


〔学校お疲れ様でした! 前回こちらに来ていただいたときに伝えるのを忘れていましたが、うちの事務所ではマネージャーをこちらが選ぶか、ライバーの希望の人にするという方針を取っているんですよね。そういうことで、マネージャーの希望とかありますか? ……まぁ、たいていの人がありませんけどね。返信をお待ちしております!〕


 そっか、事務所入ったらマネージャーがつくのか。


 っていうか、ミックスライブすごいね。マネージャーを自分たちの希望の人にするってことは、事務所で働いていない人でもなれるってことでしょ? なかなかそんな人いないんじゃない?


 でもね、なんと僕には。


〔希望できるんですね! それでしたら、1人希望します!〕

〔あ、本当にいるんですね。誰でしょうか? 親とか友達とかはさすがに難しいですけど……〕

〔いえ、【ましろ】さんという方なんですけど……〕

〔あ、もしかして凪くんのママですか?〕

〔そうですけどよくわかりましたね〕

〔所属される方の情報はだいたい覚えるようにしているので。でもなぜ?〕

〔すごいです……。それで、そのましろさんにイラストを依頼したときに、「君が所属したりしたら、ママとしてましろが配信に出ることとマネージャーになること約束してくれるならしてやろう」と言われていたんですよね〕


 まぁ、そのかわりに少し安く書いてもらえたんだけどね。


〔ほんとに所属するとは思ってなかったので、何も気にせずに返事しちゃったので……〕

〔わかりました。では、そちらで話を合わされましたらまたご連絡ください!〕

〔了解です!〕










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