第12話.コラボ配信 1

 コラボ内容を決めた、次の日の朝。僕はアニカーを買うために、ちょっとだけ遠くにある大型ショッピングモールのAONに来ていた。


 チャットで得意とは言ったものの、それは一昔前のものであって、1番最新のはまだ買ってすら無いんだよね。なんなら、それをするためのゲーム機も。


 だって、VTuber始めるのにいくらかかるかわからなかったんだもん! できるだけ残してたんだから!


 そんな脳内1人芝居はいいとして、ゲーム機とカセットを獲得。


 よ〜しっ! 配信までに練習しておくぞ〜! と思ったけど、配信内で初プレイのほうが面白いか!


 そうして僕は、チャットでみーちゃんに買ったことと配信で初プレイすることを伝えながら家に帰った。






     ☆






 時間は午後の7時45分。8時からコラボ配信を始める。


 今はみーちゃんと最終打ち合わせを通話でしている。


「では、配信の前半にみか様と2人でオンラインに潜って、後半はリスナーたちと一緒にする、という形でいいんですね?」

『そう! 完璧!』


 まぁ、こんな会話をしただけなので割愛。






     ☆






 午後8時。


 僕は一度深呼吸を挟んで、口を開いた。


「皆さん、こんれい! 皆さんに笑いと感動を届ける、神宮寺零ですよ! 本日は、私の配信に来てくれてありがとうございます! そして、こちらが本日コラボしてしまう──」

「みんな〜! こんみか〜! ミックスライブ所属の和泉みかの時間だよ! って、してしまうはひどくない!?」


 ふぅ……。陰キャとしては、この挨拶だけでもまだ少し緊張するなぁ。




:こんれい!

:こんれい!

:こんみか〜!

:こんみか〜!

:こんみか〜!こんれい!

:こんみか〜!

:知ってたけどこんみかが多いな

:みーちゃんが圧倒的大物だからね

:草

Mix Live ミックスライブ -VTuber Group-:大丈夫です、こちら側も同じ意見ですから

:いや2回目で超人気VTuberとコラボしてるんだからその反応も無理はない

:俺もVTuberになれば……

:↑ニキは前回と同じこと言わないでもらって




 うわぁ……みーちゃんのおかげかコメントがめっちゃ早い……。


 って、あれ? あれって──。


「ん? あっ! 事務所さんども〜!」


 やっぱりそうだよね〜! って、そうじゃなくて!


「な、なんでいるの!?」

「あれ? 言ってなかったっけ?」

「言ってないよ!!」




Mix Live ミックスライブ -VTuber Group-:そりゃあ、新人さんとのコラボですから、監視くらいしますよ〜

:ほんとにいて草

:理由はわかったけど監視までするか……

:ちょっと同意

Mix Live ミックスライブ -VTuber Group-:正確には監視2割、興味8割ですけどね。みかさんがわたしたちを説得するのが今までにないくらいすごかったので

:納得

:つまりいつもの配信のテンションのまま、と

:興味って勧誘じゃね?

:ま? それなら最高

:2回目の配信でそうそうに才能が見つかったのか

:っていうか、零くん、敬語抜けてますよ

:零くんのタメ口助かる




「ま、そーゆーこと!」

「……いろいろ問いただしたいですが、ご主人様たちも待ってると思うのでとりあえず進みます」

「ということで、一緒にするゲームは〜?」

「「アニカーです!」」




:わたしたちのことを考えてくれているなんて……!

:配信者の鏡かよ

:お〜アニカーか

:妥当だね、みーちゃん下手だし

:それは妥当なのか……?

:いつもこんな感じだから大丈夫大丈夫!

:そ〜そ〜

:いつもこのノリのリスナーを相手にするみーちゃんも大変だな

:零くんはうまいの?




「私ですか? まぁ1位をとる確率が9.9割とだけ」

「え?」




:え?

:え?

:え?

:誇張じゃなくて……?




「誇張じゃなくて、です」




:高すぎだろ

:それみーちゃんとやって大丈夫?

:そもそもみーちゃんの実力知ってる?




「それはもちろん知ってますよ〜。よく配信見てましたし。だからこそ一度本人に聞いたんですけど、みか様がいいとおっしゃったので」

「いやいや、そんなに勝てるとは聞いてないよ!」

「言ってませんでしたっけ?」

「言ってない!!」

「まぁあと、1番最新のは初見にしているので大丈夫でしょう!」




:アウトだな

:アウトだね

:みーちゃん、強く生きて……

:まぁ、DXの方は昔のからいろいろ追加されてるし万が一、いや億が一勝てる?

:結局信じてなくて草




 そうして、僕とみーちゃんとのコラボ配信は幕を開けた。










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