第10話.無事に帰宅

 天使……じゃなくて、藍沢さん……じゃなくて、みのの呼び方が決まった。僕にとってはこの学校では2人目の友達だ。


 友達、かぁ……。


 ……今考えたら学校で天使って言われている人と友達なったのすごくない?


 まぁけど、僕が友達になったのはいつもの学校の姿じゃなくて──。


「祐希くんは5等分の許嫁の中だったら誰推しですか? ちなみに私は昔からずっと3女推しです」

「ん〜、俺は5女かなぁ。昔は3女だったけど最終巻あたり読んでると5女推しになったんだよな〜」

「あ〜、わかります。最後のちょっとゆるくなった話し方よかったですよね」

「おっ、わかるか? まぁ3女の雰囲気も好きなんだけどな」


 こっちのオタクの姿なんだけどね! 今日初めてオタクで良かったと思ったよ!


 あ、ちなみに僕は次女推しね。途中で少しずつツンからツンデレになってきたときは最高だったなぁ。


 そんなことを考えていたら午後6時を知らせるチャイムがこの町一帯に鳴り響いた。どうでもいいけど、このチャイムってどこまで聞こえてるんだろう。


「おっと、もうこんな時間だったのか。やっぱオタク談は時間を忘れるわ。あ、そうだ! 明日の夜は零くんとみーちゃんのコラボ配信があるらしいから、みのも凪も見ような! いや〜、それにしても零くんはもうコラボかぁ」


 そう言いながら祐希はドアに向かった。


 って、そうじゃん! コラボの準備しなきゃいけないじゃん! やっば、すっかり忘れてたよ……。


「そ、そうですね! では、帰るとしましょうか」


 あれ? みのもちょっと慌てていたような気がしたけど、気のせいかな?


 って、そんなこと気にしてる場合じゃないんだった! コラボの内容を決めること自体は夜だけど、それまでにご飯とかを済ませておかないといけないしね!


「じゃ、また明日だね」

「凪、明日は土曜日だ。学生の休みという特権があるのに、そんなに学校に来たいのか?」

「あれ? そうだっけ? 曜日のこと忘れてたなぁ」


 初配信までの準備が忙しかったから、曜日とか気にしてる余裕がなかったや。


 ただ明日が休みならみーちゃんとのコラボに集中できるってことか!


 そんなことを祐希と話しながら歩いていると、気づいたら下駄箱についていた。


 この時間もあってか、すれちがう人がいなくてみのといることが怪しまれずにすんだ。


「んじゃ、また来週な〜」

「私はこういうところに来ないと2人と話せませんから、ちょっと悲しいですけどね……」

「また来週も一緒に話そうね!」

「じゃあな〜」

「はい、それではまた来週」


 そう言って、みのは僕たちとは反対側に家があるので、そちらに歩き出す。


 それを見届けた後、僕は祐希と一緒に家に帰った。


 ──祐希に怪しまれない程度に早歩きで。










  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る